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――武器店。
武器店の店長
陽紅ノ太刀
勇者によって 売り飛ばされた刀が、
悲しむ暇もなく 即座に放り込まれたのは
売り場の隅の ボロい「箱」。
陽紅ノ太刀
武器店の店長
陽紅ノ太刀
陽紅ノ太刀
陽紅ノ太刀
武器店の店長
――ゴツン
陽紅ノ太刀
いきなり小突く大男。 悲鳴を上げる刀。
武器店の店長
陽紅ノ太刀
武器店の店長
武器店の店長
そう吐き捨てた大男は
カウンターの奥へと 入っていった。
陽紅ノ太刀
陽紅ノ太刀
陽紅ノ太刀
陽紅ノ太刀
陽紅ノ太刀
陽紅ノ太刀
陽紅ノ太刀
状況は、想定以上に最悪。
打開しようにも、策が無い。
刀は、途方に 暮れてしまった。
陽紅ノ太刀
気さくな口調で 話しかけてきたのは、
刀と同じボロ箱に入れられた 「武器たち」だった。
陽紅ノ太刀
初対面な彼らの優しさに、
刀は、ポツリポツリと 語り始める――
昔々のこと。
遥か遠き島国に、 “偉大な刀匠” が居た。
陽紅ノ太刀
かの偉大な “刀匠” が 人生の集大成として生み出した 渾身の「一振り」――
――それこそが “陽紅ノ太刀”。
このとき刀匠が 受けた「神託」により、
刀は、異国の「霊峰」へ 奉納されることとなる。
それからというもの刀は、 「勇者と旅立つ日」を夢見つつ、
気が遠くなるほど長い長い時を 孤独に過ごし続けていた。
――100年が 経った今日。
ようやく “運命の勇者”である 「アッシェ・フリーエン」に出会い、
刀は、心をおどらせた。
だが幻想は 一瞬で砕かれる。
あろうことか 勇者は、刀を売却し、
迷うことなく 去ってしまったのだ。
事情を聞いた武器たちは 口々に刀を労った。
ドッと笑う 武器たち。
楽し気な声が響く中、 刀は気づいた。
陽紅ノ太刀
陽紅ノ太刀
陽紅ノ太刀
陽紅ノ太刀
刀は大きくうなずいた。
普通の武具は、 自ら動きしゃべることなど まず不可能なのだから。
陽紅ノ太刀
パープル/鎖鎌
雷龍/三節棍
蒼翠旋/トンファー
雷龍/三節棍
パープル/鎖鎌
蒼翠旋/トンファー
和気あいあいと 盛り上がる武器たち。
陽紅ノ太刀
――初めて目にした 自分以外の “神話級”。
この出会いは刀にとって 非常に感慨深いものだった。
と同時に「疑問」も湧き出る。
刀は、遠慮なく 聞いてみることにした。
陽紅ノ太刀
陽紅ノ太刀
刀が指したのは、 ボロ箱の上に貼られた
『超激安!! 在庫処分価格』
と書かれた古い値札。
しかも3名とも 刀と同じく「鎖」で 繋がれている。
パープル/鎖鎌
パープル/鎖鎌
パープル/鎖鎌
雷龍/三節棍
蒼翠旋/トンファー
クスクス笑い出す 武器たち。
刀は首をかしげつつ、 周囲をキョロキョロ見渡した。
広い店内には、
ところ狭しと 武器が並ぶ。
大半が大切に飾られており、 雑な扱いは少数派だ。
陽紅ノ太刀
陽紅ノ太刀
武器の量だけは豊富だが、 その種類は偏っている。
蒼翠旋/トンファー
パープル/鎖鎌
雷龍/三節棍
陽紅ノ太刀
刀は、ガックリ 膝をついた。
パープル/鎖鎌
雷龍/三節棍
蒼翠旋/トンファー
陽紅ノ太刀
陽紅ノ太刀
陽紅ノ太刀
パープル/鎖鎌
パープル/鎖鎌
パープル/鎖鎌
陽紅ノ太刀
雷龍/三節棍
蒼翠旋/トンファー
陽紅ノ太刀
陽紅ノ太刀
陽紅ノ太刀
陽紅ノ太刀
陽紅ノ太刀
彼らの主張は グサリと刺さった。
だが刀は、 曲がることなく 意志を貫いた。
雷龍/三節棍
パープル/鎖鎌
顔を見合わせ、 うなずき合う3名。
陽紅ノ太刀
蒼翠旋/トンファー
雷龍/三節棍
陽紅ノ太刀
意外な「申し出」に、
刀は目を見張った。
――数時間後。
明かりが消え、暗くなる店内。
――しばしの沈黙。
雷龍/三節棍
箱から 顔を出したのは、 三節棍。
三つ折りの体を 真っすぐ伸ばし、
長いリーチで周囲を伺う。
雷龍/三節棍
パープル/鎖鎌
陽紅ノ太刀
陽紅ノ太刀
腑に落ちない顔の刀。
雷龍/三節棍
蒼翠旋/トンファー
パープル/鎖鎌
パープル/鎖鎌
パープル/鎖鎌
パープル/鎖鎌
パープル/鎖鎌
陽紅ノ太刀
渋々ながら 首を縦に振る刀。
満を持して 他の武器らも動き出す。
蒼翠旋/トンファー
トンファーが 軽くジャンプし、
箱の上へと 「握り」の部分を 引っ掛けた。
蒼翠旋/トンファー
飛び降りる勢いのまま、 「鎖の留め具」へ――
全体重を叩き付けるッ! (フライングボディプレス)
蒼翠旋/トンファー
――ガチャンッ
捨て身のごとき衝撃で、 刀を縛る「鎖」を粉砕!
パープル/鎖鎌
自慢の分銅を ブルンブルンと 振り回す鎖鎌。
ビュルンと飛ばし カウンターに侵入すると、
裏をゴソゴソ探り始めた。
パープル/鎖鎌
鎖鎌が高々と掲げたのは 入口のスペアキー。
店主が内緒で隠した瞬間を 彼女は見逃さなかったのだ。
パープル/鎖鎌
パープル/鎖鎌
分銅で巻き取り回収した鍵を、 鎖鎌が、刀へ差しだす。
陽紅ノ太刀
パープル/鎖鎌
パープル/鎖鎌
陽紅ノ太刀
陽紅ノ太刀
真意が掴めず、 きょとんとする刀。
鎖鎌は涼しい顔で 言葉を続ける。
パープル/鎖鎌
蒼翠旋/トンファー
雷龍/三節棍
陽紅ノ太刀
入口へ向かった刀は、 扉の鍵を開ける。
ふと振り返ると、 3名が笑顔で見送る姿 が見えた。
陽紅ノ太刀
刀は深々一礼し、
夜の街へと 駆けていった。
――逃げること 数十分。
陽紅ノ太刀
陽紅ノ太刀
安心したら、どどっと疲れた。
100年ぶりに動き回った 影響もあるだろう。
路地裏に積まれた木箱の陰で、 拾った布袋にくるまり
刀は夜を明かしたのだった。