「申し訳ないんですけど、先輩に高いご飯奢って貰うのは また今度と言うことで」
「俺は後輩君の誕生日だから奢るって言っただけでお前の為じゃないし、当然のように高いご飯奢ることになってるし…」
「そんな細かいことは いいじゃないですか。それより耳貸してください」
___今日は僕の15歳の誕生日。
去年はのぞみさんと過ごしたけど、今年は受験生なので孝太君と一緒に先輩に勉強を見て貰った。
勉強会の後はご飯を食べに行く約束をしていたので そこで先輩が奢ってくれるのかなと思ってたけど、直前になって孝太君が待ったをかけた。
孝太君は先輩に何やら耳打ちし、ご飯を食べる前に駅前のデパートに寄ろうと言うことになり今に至る。
山崎 孝太
溝口 圭佑
鳴沢 柚月
ドーナツは持って帰るのでお母さんとお父さんの分も選ぶことにした。 後ろで孝太君と先輩もドーナツを眺めている。
山崎 孝太
溝口 圭佑
山崎 孝太
溝口 圭佑
山崎 孝太
溝口 圭佑
山崎 孝太
電車で2駅行き10分ほど歩くとオシャレな内装のレストランがあった。
出迎えた店員さんに孝太君は何やら依頼していた。 その間先輩が蒼陽高校の話をしてくれたので退屈はしなかった。
孝太君との話が纏まった店員さんは温かい笑顔で席に案内してくれた。
__席に着くと孝太君はメニューを開かず、リュックから紙袋を取り出して僕に渡した。
鳴沢 柚月
山崎 孝太
入っていたのはビスケット2つと、黒地に金色の文字(フランス語っぽい)が印字されたリングノートと、同じブランドと思われるボールペン。
ビスケットの袋も黒が基調で、全体的に黒で統一されていた。
山崎 孝太
鳴沢 柚月
鳴沢 柚月
溝口 圭佑
山崎 孝太
鳴沢 柚月
なぜか含みのある笑みを向けられた。よく分からず困惑していると__
「いらっしゃいませ。何名様ですか?」 「4人。待ち合わせです」
聞き覚えのありすぎる声がした。その声の主は真っ直ぐに呆然としてる僕の元に歩いて来る。 そして輝くような笑みを浮かべた。
山川 のぞみ
相原 澪
柴本 岳人
柴本 桃花
7人に増えたので両隣のテーブルを移動して改めて着席した。 僕の隣に座ったのぞみさんが ぱんっと両手を打った。
山川 のぞみ
山崎 孝太
溝口 圭佑
先輩が微笑を浮かべて納得したように頷いた。 僕はまだ呆けていた。
__皆でメニューを囲みながら注文してドリンクバーで飲み物を調達して皆と乾杯すると やっと僕も実感した。 今日の主役は僕なんだ。
乾杯が終わると皆からプレゼントを貰った。
山川 のぞみ
山川 のぞみ
柴本 桃花
山川 のぞみ
柴本 岳人
柴本 岳人
柴本 岳人
山崎 孝太
溝口 圭佑
柴本 桃花
相原 澪
相原 澪
山川 のぞみ
何度もお礼を言った。ちょっと声が震えていたかもしれない。
幸せだな 心の底からそう思った。
鳴沢 柚月
山川 のぞみ
山川 のぞみ
山川 のぞみ
山川 のぞみ
山川 のぞみ
鳴沢 柚月
誕生日会の後。言われた通りのぞみさんの家に上がって リビングに正座して向き合っていた。
のぞみさんは照れたように微笑むと、傍らに置いてあった紙袋をテーブルに置いた。
山川 のぞみ
鳴沢 柚月
山川 のぞみ
中には包装紙でラッピングされたハガキサイズの箱が入っていた。 包装紙を丁寧に剥がしていく。
周りに数匹の猫を配したアンティークな置時計が入っていた。
山川 のぞみ
山川 のぞみ
山川 のぞみ
言われてみれば確かに小さな何かが入っている。 手のひらに収まるそれは
鳴沢 柚月
以前僕にくれたのと同じ ビーズで作られた女の子の人形。きっとこれは
山川 のぞみ
鳴沢 柚月
山川 のぞみ
鳴沢 柚月
のぞみさんは少し頬を赤くしながら胸を張った。
山川 のぞみ
山川 のぞみ
山川 のぞみ
山川 のぞみ
堪えてたけど駄目みたいだ。 拭っても拭っても涙は止まらない。
鳴沢 柚月
鳴沢 柚月
体が温かくなった。 のぞみさんが僕を抱きしめていた。
山川 のぞみ
山川 のぞみ
のぞみさんの背中に手を回して、しばらく涙を流し続けた。
のぞみさんが作ってくれたハンバーグはハートの形をしていた。
誕生日会でお腹いっぱいだったけど、僕は全部食べた。
「自分の誕生日なんだから自分の好きなやつだけ選びなさいよ」
「でもお母さんは夜食作ってくれるし、お父さんは勉強見てくれるから…」
「…まぁとにかく選んでくれたことにはお礼を言うわ………どうもありがとう」
「…………それとこれ」
「?」
「時間を確認する術がスマホしか無いのはどうかと思うわ。入試ではスマホ使えないのよ。時計も設置されてないし」
「……腕時計買っといたから自分で設定しなさい」
「あ、ありがとう…」
「ボクは過去10年分の過去問買って来てあげたよ!」
家に帰って買って貰ったドーナツを渡すと腕時計と過去問が返ってきた。
自分の部屋で貰ったプレゼントを広げてみる。
先輩のMrs.ドーナツ、 孝太君のリングノートとボールペンとビスケット、 なごみさんの石鹸、 柴本さんのマグカップ、 桃花さんのハンカチ、 澪さんのクマノミのストラップと鉛筆立て、 のぞみさんの置時計とストラップとハンバーグ、 お母さんの腕時計とお父さんの過去問
今年はたくさんのプレゼントを貰った。
家にも学校にも居場所がなかった僕にもたくさんの友だちが出来た。
広げたプレゼントを眺めているとまた涙が零れた。
今日は僕の15歳の誕生日。
~bitter 8~
「全国大会、お疲れ様…です………えっと」
「気を遣わなくて大丈夫です。敗因は俺のサーブミスだってテニスやってる人なら誰でも分かるから」
「……なんか…すごいね…」
「そうやって冷静に受けとめられるの。……私なら敗因が自分にあってもしばらく周りのせいにしそう」
「_____自分を客観視出来たのは俺もわりと最近です」
「どんな試合でも勝てたら嬉しいし負けたら悔しいです。 俺はテニスが好きだから
来年は絶対リベンジします」
誕生日会の席でそう断言した溝口君の目に迷いはなかった。
私はそれを間近で見た。 ___だからこそ
知ってる?溝口圭佑5連覇出来なかったんだって。 なんか中途半端だよなぁ
一匹狼みたいなキャラなのに優勝出来なかったんだ。ヤバ
ね~~私 校内新聞に「優勝確定」って書いちゃったんだけど。どうしてくれんの~
好き勝手に囁きあう声が不快だ。
夏休み開けの学校は「溝口圭佑」の単語で溢れていた。
溝口君はテレビに出るほどの有名人なので学校内では溝口君の存在を知らない人の方が少数派だ。
だから全国大会の結果(だけ)は大多数が把握してる。 学年が違う私の周りにも その単語が溢れかえってる。
そんな彼ら彼女らの勝手な噂話に私は朝からずっとイライラしてる。 今もクラスの男子が好き勝手言っていた。
__男子生徒が私に目を向けた。 嫌な予感がする、と思った時には私の「しっかりしてそう」が発動していた。
イライラする。
どうしようもなく、無性に、イライラする。 イライラする。
柴本 桃花
気づいたら口が勝手に動いてた。
男子生徒が不思議そうな顔をする。私が頷くと確信しきっているその顔が、イライラを加速させた。
柴本 桃花
柴本 桃花
そう言って踵(きびす)をかえした。 イライラする。
どうしてこんなにイライラするのか。 答えは分かってるからイライラするのだ。
放課後になってもイライラはおさまらなかった。
部活に向かう為、練習服に着替えて昇降口を出る。
校則ギリギリのラインまで髪を染めて化粧も派手な女の人が私を待ち構えていた。 女の人は腕を組んで私を見下ろすように睨んだ。
……つまりデートがパアになったことに いちゃもんをつけに来たのだ。 なんて馬鹿馬鹿しいんだろう。本当にイライラする。
柴本 桃花
時間の無駄だ。 女の人の横をすり抜けようとしたけど、女の人は私の動きに追随して行く手を阻んだ。
女の人は私の頭から爪先まで ざっと眺めると馬鹿にしたような笑みを浮かべた。
そんなこと言われなくても分かってる。
言われなくても分かってるから、それ以上言わないで。
やめて。
そんなこと分かってる。やめて。
やめて
柴本 桃花
女の人を両手で思いっ切り突飛ばした。 下校途中の女子生徒2人が ぎょっとした顔で足を止めた。
尻餅をついた女の人は顔を真っ赤にして立ち上がると私に掴みかかってきた。
柴本 桃花
髪を引っ張り、頬を引っ掻いて、叫んだ。 限界だった。
私の人生初の取っ組み合いの喧嘩は、騒ぎを聞きつけて止めに入った教師に羽交い締めにされるまで続いた。
「とにかく今日は帰って頭を冷やせ」と教師に言われたので黙って家路についた。
教師も傍観していた生徒達も「あの柴本さんが」みたいな目で見ていた。それにもイライラした。
校門で朋ちゃんが心配そうに待ってたけど、「1人にして欲しい」と言って校門をくぐった。
鉛のような自己嫌悪で押し潰されそうだ。 ___駅のホームに続く階段についた。
溝口 圭佑
足を止めてしまった。
溝口 圭佑
__私の足が動かないのは、会話を広げようとしてるのは……… 心の底から求めてるからだ。
柴本 桃花
溝口 圭佑
溝口 圭佑
現実は甘くないのに、恋愛小説みたいなことなんて起きないのに、 私は求めてる。
柴本 桃花
柴本 桃花
溝口 圭佑
溝口 圭佑
友達
友達。友達。 ともだち
同じ委員会の先輩と後輩から「友達」になった。大した昇格じゃないか。 でもきっと…「それ以上」はない。
私は もしかしたら って求めてた。 どうしても蓋をすることが出来なかった。
柴本 桃花
涙が零れた。 どうしても
柴本 桃花
溝口 圭佑
どうしても蓋をすることが出来ない。 抑えることが出来ない。
顔を涙で濡らしながら 後ろに立つ高校1年生の少年に 言った。
柴本 桃花
コメント
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うわぁぁぁ…前半は尊いの嵐だし、後半はもう…もう切ないです…… 続きが気になりま…ほぅ、炭酸を大量に買っておきましょうか
今回もすごく素敵なお話でした✨ 特に!今回の話、題名がともだちで、ふたつの話、両方に関係してるところが非リア弟さんはすごいなと!!!!! 読み終わったあとにその題名を見たら伏線が回収された気分でした✨ 次回も楽しみにしてます✨✨
今回初めて挿し絵を入れてみました😳。新しい演出方法として、次回以降も使っていきたいと思います😳😳。 柚月君誕生日会は「シーズン2やるぜ」と言った時から絶対書こう!と決めておりました😌 「友達」と「涙」の描写にこだわった今回、長くなりましたが読んでくださりありがとうございました❗ 次回第3章「夏休み」編完結です!!