#9
母を玄関まで見送りソファーに座る
出版社で編集長をしている母は
毎日のように働いている。
一見仲良さそうに見える私たちだが
母は私を憎んでいる。
、、、私が母の大切な人を奪った。
だから私は大切な人を作ってはいけない。
それが自分に科した罰。
でも、今日の空の色と向井さんに出会ってしまい
思い出したくない記憶に触れてしまう。
自分の頬を叩き無理やり意識を逸らす。
ちゃんと罪を償うために生きなきゃ
向井さんのことは忘れよう。
どうせ自由性の高すぎる写真部だし
学部も違うから頻繁に会うことは無いはず
その日は早々と眠りについた。
夢を見た。
暗闇で聞こえるはずのない声が聞こえる。
一生懸命探すが見つからない。
その世界には私しかいなかった。
ひとりぼっちの私
そこで目が覚めた。
あれは、あの声は亡くなった父の声だった。
頭の気分もまぶたも重たい。
はぁとため息を1つついて支度を始めた
学校に着き時計を見ると
まだ随分と時間があった。
写真部に行き椅子に腰をかける。
カバンから古びたカメラを取り出し、
座ったまま見える景色をカメラに収める。
夢中になり過ぎて気づかなかった。
私の隣に向井さんが居ることを、
彩度の調節をしたくて1度カメラから目を離す
ふと、視界に何かが入り横をむく。
まゆか
私の声に驚いたのか向井さんも体をビクッとさせる。
まゆか
向井康二
と、苦笑いした。
まゆか
そう返すと、"集中力すごいんだね"と言われた
適当に頷く。
違うよ、本当に聴こえないの
こんなこと口が裂けても言えない。
知られたくないから
私が聴覚障害者なんてことを
コメント
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え、我大丈夫?!!(シネ) あ、間違えてブクマしたに