葬儀が終わった。
叔母
ほら、ここが今日から2人のお家になるところよ
知っている、落ち着く匂い。
奏
…ママの、においする
叔母
あら…ふふ、ママが見てくれてるのかもよ?
当時はそんなことを言われて、信じていた。
ママはいつも、あまり知られてないブランドの香水を付けていた。
叔母
ここだと寒いから、リビングで話しましょう
奏羽
わかった…
リビングには、いつもの匂いがしていた。
ママとパパの使っていた座布団、テーブルに置かれた私たちのコップ。
叔母
使ってたものはだいたい持ってきたけど…どう?
奏
落ち着く…
叔母
そう、それなら良かった
そんな話をしていたのは覚えてる。
それからは12歳くらいまで記憶が飛んでる。
七回忌の帰り。
今も網膜に焼き付いている。
奏
ねぇ、叔母さん
叔母
何?
奏
私らの両親って、どんな人だったの?
叔母
…そうね、
叔母
頼りがいがあって、優しくて…でも何処か抜けてるような、そんな人達だったのよ。
奏羽
ふーん…
奏羽
あ、なんか落ちてる
タタッ
叔母
こら、あんまり走っちゃ…
キキーーッ
ドンッ!!
暴走したトラックに轢かれ、奏羽は
植物状態になった。
医者
残念ですが、回復の見込みは…
叔母
…それでも、続けてください。
医者
ですが、治療を続けると奏羽さんの身体にも負担が…
叔母
彼女はまだ生きているんです。
叔母
それを勝手な判断でみすみす見殺しにすることだけは…避けたいんです
奏
…
"奏羽"はまだ生きている。
唯一の、肉親。
叔母の強い希望により、生命維持は今も続いている。
…私だ
奏
…次は、私の番か
父も、母も、妹も。
みーんな私の傍から消えていく。
…そんな中、とある報告が来た。
…"妊娠"。
長い不妊治療の末、叔母が妊娠した。
二人で名前を考え、産まれるときを楽しみにしてた。
…それと同時に、不安もあった。
私じゃなくてこの子が先に死んだら?
叔母が私のせいで居なくなったら?
…そんな考えがあった。
それでも、叔母の子供は元気に産まれてきた。
今でも、そんな考えが頭によぎる。
奏
…はぁ
朱菜
おねぇちゃん?
奏
あ、朱菜…
奏
なんでもないよ。
奏
それに、もう時間も遅いでしょ?
奏
ほら、早く寝ておいで
"朱菜"。
私の妹であり、従姉妹でもある。
無邪気に笑って、元気に遊んで。
この家の太陽みたいな存在。
そんな朱菜だけは、絶対に失いたくない






