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一颯がクラブに入るようになってから

1週間後の練習試合の時だった……

真宮 咲久

(今日、調子良い…!)

咲久は綺麗な弧を描き、トスをあげる。

チームメイトはそれをスパイクして、点を取った。

真宮 咲久

(よし!)

真宮 咲久

(コーチ……見てくれてるかな)

その時、

コーチがコート内に向かって声を出した。

コーチ

咲久!!

真宮 咲久

真宮 咲久

は、はい!

真宮 咲久

(なんだ……?)

コーチの隣には準備運動をしている一颯が立っていた。

真宮 咲久

真宮 咲久

(なんでアイツ、ベンチから立って__)

コーチ

一颯と交代!

真宮 咲久

……

真宮 咲久

え?

交代……

こう、たい……?

真宮 咲久

なんで__

一颯はツンとした表情のまま、コート内へと入ってきた。

尾瀬 一颯

……交代だって

真宮 咲久

…………

真宮 咲久

聞こえてたし

咲久はそう言い放ち、ベンチへと戻って行った。

試合は再開し、咲久はベンチから試合の様子を観戦していた。

我慢できなくなった咲久は隣に座るコーチに声をかけた。

真宮 咲久

あの……

真宮 咲久

なんで俺が……

真宮 咲久

クラブに入ってきたばかりのアイツと交代なんですか……

コーチ

……

コーチ

経験を積ませるためだよ

真宮 咲久

……

コーチ

咲久。そんな顔するな

コーチ

このクラブの正セッターはお前だからな

真宮 咲久

真宮 咲久

は、はい!

真宮 咲久

(大丈夫……何も心配することなんてないんだ)

咲久はそう自分に言い聞かせながら拳を握りしめた。

しかし、

次の練習試合

そのまた次の練習試合でも、

俺がコートに立つことはなかった

俺が長年かけて築いてきたスキルや仲間からの信頼を

アイツはたった数ヶ月で物にした。

真宮 咲久

はぁっ、はぁ……っ、はぁ…

咲久のサーブはネットに引っかかって落ちてしまった。

真宮 咲久

……クソ、ぉ……

外は日が落ちて真っ暗になっていた。

コートの周りには何十個ものボールが転がっていた。

真宮 咲久

(ダメだ……こんなサーブじゃ__)

一颯の打つサーブは

もっと早くて

もっと強くて___

真宮 咲久

(俺だって練習すれば……)

一颯みたいに__

グラッ……と視界が歪む。

真宮 咲久

…!?

咲久はなんとかバランスを保った。

ズキンッズキンッズキンッ__

真宮 咲久

(頭、痛い……)

こんなもので疲れてたらダメだ

もっと練習しないといけないのに

体がついて来ない……

真宮 咲久

(もうベンチで試合を見てるのは嫌なのに……)

真宮 咲久

(俺は……このクラブの正セッターなのに……!)

悔しさが込み上げてきて、

咲久の目に涙が溜まった。

ガララララ……

真宮 咲久

咲久は扉が開く音の方に顔を向けた。

尾瀬 一颯

……

真宮 咲久

(…よりによって一颯かよ……)

咲久は一颯から目を逸らし、腕で溜まった涙をゴシゴシと拭いた。

真宮 咲久

……なんだよ

尾瀬 一颯

…なにって

尾瀬 一颯

忘れ物したから取りに来た

一颯は体育館の隅に置いてある水筒を指さした。

真宮 咲久

ああ……

真宮 咲久

一颯のだったんだ…

尾瀬 一颯

うん

尾瀬 一颯

にしても、まだ練習してたの?

尾瀬 一颯

自主練は程々にってコーチ言ってたよ

真宮 咲久

…………

ズキンッ

ズキンッ

ズキンッ……!

真宮 咲久

……うるさい

尾瀬 一颯

…………

真宮 咲久

俺はお前の100倍努力しなきゃいけないんだ…!

真宮 咲久

邪魔すんな!

尾瀬 一颯

……俺は心配してあげてんだけど

真宮 咲久

お前に心配されるほど俺は弱くない!

尾瀬 一颯

…………

尾瀬 一颯

そう

一颯は顔をムッとさせて咲久から目を逸らした。

尾瀬 一颯

俺は忠告したからね

尾瀬 一颯

それで体を壊して、もっとレギュラーの座から離れて知らないよ

真宮 咲久

……は?

真宮 咲久

煽ってんの?

尾瀬 一颯

別に

尾瀬 一颯

煽ってないけど。

尾瀬 一颯

事実じゃん

ズキンッズキンッズキンッ

真宮 咲久

(頭、痛い……)

こいつの言葉全部が

俺の脳を攻撃するような感覚__

真宮 咲久

お前は良いよな

真宮 咲久

コーチにたまたま気に入られて

真宮 咲久

何年も前からこのクラブにいた俺からレギュラー奪えたお前なんかに

真宮 咲久

俺の気持ちが分かんのかよ…!

尾瀬 一颯

…………

尾瀬 一颯

わかんないけど。

真宮 咲久

尾瀬 一颯

てか分かりたくもないね

尾瀬 一颯

俺がレギュラーになったのは、コーチが俺の方が優れてるって判断したんだろ

尾瀬 一颯

自分の力不足を他人の責任にする人の気持ちなんか

尾瀬 一颯

わかりたく__

パチンッ……

咲久は一颯の右頬を叩いた。

尾瀬 一颯

……痛__

真宮 咲久

俺だって努力してんだよ!

真宮 咲久

俺の努力が全部無駄みたいなこと言うなっ!

尾瀬 一颯

…………

真宮 咲久

俺だって__

咲久は涙が流れそうになるのを堪えて、唇をかみ締めた。

一颯に__

君になりたい

でも……

真宮 咲久

(どれだけ努力しても、俺は__)

尾瀬 一颯

……

尾瀬 一颯

1発は

尾瀬 一颯

1発だよね?

真宮 咲久

……は?

一颯は右手で拳を作り、咲久の顔を殴った。

真宮 咲久

っ!?!?

咲久は勢いのまま、床に倒れ込んでしまった。

真宮 咲久

な、に……すんだよっ!

尾瀬 一颯

なにって……

尾瀬 一颯

叩かれたからやり返しただけだけど?

真宮 咲久

俺はパーだった!

尾瀬 一颯

1発は1発

一颯の言葉にカチン、ときて咲久はその場に立ち上がった。

真宮 咲久

そのセリフ、そのままお前に返すよ!!

咲久は拳を一颯に振り下げた。

一颯はそれを交わして、咲久の体にもう1発殴った。

真宮 咲久

うグ……ッ

尾瀬 一颯

…………

真宮 咲久

(腹立つ……!!!!)

咲久は悔しさで目に涙を溜めながら、

一颯にもう一度殴りかかった。

尾瀬 一颯

"弱虫"

一颯は拳をかわした。

真宮 咲久

尾瀬 一颯

"弱虫"だな、お前

真宮 咲久

は……?

尾瀬 一颯

殴られる覚悟がないくせに

尾瀬 一颯

感情に任せて拳を振るうところが

尾瀬 一颯

"弱虫"だっつってんの

弱虫……__

真宮 咲久

俺は__

真宮 咲久

弱くない!

それから

一颯とは取っ組み合いの喧嘩をして

たまたま戻ってきたコーチに見つかって無理やり引き剥がされた

俺の方から喧嘩を売ったのに

一颯は傷1つついてなくて

俺の方は顔がパンパンに腫れたっけ

その数日後、

一颯はクラブを辞めた

コーチにはめっちゃ怒られた

取っ組み合いの喧嘩をしてただからじゃない

"優秀"な人材を逃したからだ。

それから俺は

一颯になりたくて

一颯を倒したくて

バレーをしている__

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