テラーノベル
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ある日、愁斗は机に向かっていた。
久しぶりに開く教科書、 久しぶりのノート 鉛筆を持つ手が震える。 でも、愁斗は書く――
「未来」のために。
幸輝
愁斗
幸輝
笑い合う二人の時間は、ゆっくりと流れていった。
夜になると、電気を落とし、同じ布団に並んで寝た。
お互いの寝息が聞こえる距離で、安心して眠れること。
それがどれほどの奇跡かを、愁斗は今、痛いほど知っていた。
ある晩、布団の中で愁斗がぽつりと呟いた
愁斗
幸輝
愁斗
幸輝
愁斗
繋がれた手が、ほんの少しだけ震えていた。 でもその震えは、もう恐怖ではなく――前に進もうとする勇気だった。
数週間後、 医師から 「復学しても問題ない」 という言葉をもらった。
愁斗はしばらく何も言わず、窓の外を見つめていた。
空は晴れていた。 春の光が、まるで背中を押してくれるように差し込んでいた。
愁斗
幸輝
愁斗
幸輝
愁斗
その朝、空はどこまでも晴れていた。 雲一つない澄み切った青が、窓の外に広がっている。
まるで、長い闘いを乗り越えた愁斗を静かに祝福しているようだった。
幸輝
幸輝の声が優しく部屋に響いた。
愁斗は、ベッドの上でゆっくりと目を開け、小さくうなずいた。
愁斗
幸輝
そう言って笑う幸輝も、どこか緊張しているように見えた。
カーテンを開けると、春の光が部屋に差し込む。
制服に袖を通す愁斗の動作は、どこかぎこちなく、それでいて愛おしいほど真剣だった
鏡の前に立ち、自分の姿を見つめる
病気になる前より少し痩せた身体。髪もまだ短く、生えそろっていない。
けれど、そこに映っているのは、確かに“今を生きている自分”だった。
愁斗
幸輝
幸輝のその言葉に、愁斗は少しだけ顔をほころばせた。
玄関の扉を開けると、外の空気がふたりの頬を撫でる。
制服の襟を整えながら、愁斗はゆっくりと一歩を踏み出した。
通い慣れたはずの道―― だけど、そこを歩くのは何ヶ月ぶりだろう。
見慣れた電柱、あの角のコンビニ、道端の小さな花壇。
すべてが懐かしくて、そして少しだけ眩しく見えた。
愁斗
幸輝
愁斗
言葉に詰まる愁斗の横で、幸輝は静かに歩幅を合わせる。
ふたりの影が、朝の陽の中で並んで伸びていた。
校門の前に立ったとき、愁斗は一度立ち止まった。
たくさんの声が聞こえてくる。笑い声、部活の掛け声、走る足音。
――全部、自分が一度離れてしまった場所の音だ。
愁斗
幸輝
ふと、数人のクラスメイトが気づいて駆け寄ってきた。
クラスメイト
クラスメイト
クラスメイト
その声に、愁斗の目にうっすらと涙が滲んだ
愁斗
クラスメイト
たったそれだけの言葉が、彼の胸をいっぱいに満たした。
教室に入ると、少し緊張していた空気がふっとやわらぐ。
自分の席がそこにあって、みんな笑顔で帰りを祝福してくれた。
幸輝も、愁斗のすぐ隣の席で静かに見守っている。
どんな時も、この場所でふたりは肩を並べてきた。
今日からまた、それが戻ってくるのだ。
幸輝
愁斗
幸輝
愁斗
幸輝
そう言って赤くなる幸輝に、愁斗は心からの笑顔を浮かべた。
――本当の“日常”が、いま、ここに戻ってきた。
その日、ふたりは学校の帰り道を歩きながら話をした。
給食の味、クラスメイトの近況、先生の相変わらずな口癖。
そんな他愛もない話が、なによりも幸せだった。
愁斗
幸輝
愁斗
その言葉に、幸輝は何も言わず、ただ静かに愁斗の肩を抱いた。
ふたりの影が、夕焼けの中に長く伸びていった。
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