酷い、頭痛

思わず術を止める

｢沙樹｣

頭の中で、繰り返される

終わりのない、僕達

……他に、誰が？

……何が、終わらない？

……酷い、違和感

何かが、おかしい

やるせない、後悔

何も出来なかった

｢桃香｣

その言葉が、すんなり落ちた

そうだ

あの日、あの時、あの瞬間

倒れる身体

ぼんやり聞こえる焦る声

本を1人で読んでる女の子

その顔からは感情が全て抜け落ちていた

隣の人間もそれに気がついたのか

ただ、見つめていた

目の前で、女の子が笑ってる

隣の友達を見ながら

その目線は特別で

友達の特別な目線に

誰よりも早く僕が気がついた

死んでも尚、世界は僕達を逃がしてくれなかった

でも、君は挫けなかった

君は、この世界の神に認められ

僕達と君が信用する人間だけが

"神の使い"と呼ばれた

｢呆気ない｣

その一言しか言い様がない

圧倒的な力を前に

僕達は２回目の｢死｣を経験した

火の神の使いはこの時から既に身体が丈夫だった

だから、みんなより死ぬのか遅かった

目を開くのが精一杯で

声を出すのは不可能だった

目の前に広がる、仲間の死体

何故か聞こえる、死んだはずの仲間の声

この世の絶望を宿したその目を

僕は一生忘れない

多分、この時に覚えたんだ

仲間が死んでしまう恐怖を

｢本当に、今までごめん｣