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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

見てはいけないものを見てしまった。

脱兎の如く逃げ帰ってきたけれど、

バレてはいないかと気が気じゃなかった。

あれは、

殺しの現場だった。

被害者は自分と同い年ぐらいの女性、

だったと思う。

首を絞めあげられる女性が、

自分を見たような気がする。

助けを求めるように

手を伸ばしたような気がする。

いや、

全部気のせいだ。

そういう風に見えただけ。

きっと、

殺された彼女は

自分の存在には気が付かなかったはずだ。

いや、

殺人現場を見たことすら

きっと悪い夢だったんだ。

そう思うことで

恐怖に押しつぶされそうな自分を

なんとか正常に保とうとした…。

ニュースキャスター

今朝早く、

ニュースキャスター

☓☓川に女性の遺体が浮かんでいるのが発見されました。

ニュースキャスター

亡くなったのは近くに住む女子大生の

ニュースキャスター

橋本百合子さん19歳。

ニュースキャスター

目立った外傷は無く、

ニュースキャスター

警察は事故と事件の両方の可能性があるとみて捜査を進めています。

そうだ。

あれは夢だったんだ。

警察も事故だって言ってる。

テレビに映し出された彼女は

あのとき見た女性と瓜二つだけれど。

きっと、そうだ。

あれは悪い夢だったんだ。

そう思っても

家から出るのが怖くて、

次に殺されるのは

自分のような気がして

一人、

頭から布団を被って震えていた。

ルーム№901

352さんが入室しました。

参加人数の上限に達しました。

352

人探しを頼みたい

EN

おいくらで?

352

百万でどうだ

EN

かしこまりました

EN

詳細をどうぞ

352

昨日、午前1時頃富平工場付近を通った人物を探して欲しい

EN

富平工場というと現在は廃墟になっている?

352

ああ

EN

わかりました

EN

少々お待ち下さい

─ニ時間後─

EN

お待たせしました

EN

ご依頼の人物の詳細がわかりました

352

早かったな

EN

北村優太21歳

EN

応和国際大学、国際政治学部所属

EN

☓☓川にほど近いルナティックマンション407号室で一人で暮らしています

EN

以上でいかがでしょうか?

352

富平工場付近の監視カメラの映像を見たのか?

EN

はい

352

奴は現場を見ていたのか?

EN

はい

352

そうか

EN

珍しい失態ですね

352

そうだな

352

新入りが焦ったせいもあるだろう

EN

なるほど

EN

では、ワタシはこれで

352

いや待て

EN

まだ何か?

352

その北村優太を始末して貰えるか?

EN

組の尻拭いを便利屋にさせると

352

三百万出す

EN

かしこまりました

EN

全額一括で振り込んで頂けましたら始末しましょう

352

わかった

352さんが退室しました。

ENさんが退室しました。

参加人数が0になったので、

ルームは完全に消去されます。

紫雲 かぎり

(金払いがいいのは嬉しいけど)

紫雲 かぎり

(あんまヤクザの尻拭いはしたくないよなぁ)

紫雲 かぎり

(とはいえ)

紫雲 かぎり

(断る理由も無いし)

紫雲 かぎり

……

紫雲 かぎり

(愛でる会の会員は一人も殺さず)

紫雲 かぎり

(殺人事件の目撃者である)

紫雲 かぎり

(罪もない大学生は殺す)

紫雲 かぎり

……

紫雲 かぎり

…はぁ

紫雲 かぎり

(いやいや考えるな)

紫雲 かぎり

(与えられた仕事だけやってりゃいいんだよ)

紫雲 かぎり

(……今までだってそうしてきたじゃないか…)

いつまでも引きこもっているわけにはいかない。

例えネットで日用品や

食料は買えたとしても

大学の単位までは買えないのだ。

意を決して外出すれば

世の中は何も変わらず

むしろ、

怯えて生活していたのが馬鹿らしく感じられるほどだった。

北村 優太

(なんだ)

北村 優太

(やっぱり、オレの勘違いだったんじゃないか)

そう思って帰宅した。

玄関を閉め、

部屋の明かりを付け、

持っていたコンビニ袋を床に置いた瞬間、

背後で物音がした。

驚いて振り返れば、

そこには

真っ黒なパーカーを着た人物が。

フードを深々と被っているので、

その顔ははっきりと見えなかった。

北村 優太

!!

驚いて声を出す前に

侵入者が持っていた包丁が喉に突き刺さる。

北村 優太

う、ぐっ

足元に置いたビニール袋に足を取られ、

盛大に尻もちをついた。

その反動で包丁は抜け、

噴き出した血が

綺麗な弧を描いた。

北村 優太

こ、ころさない…で…

両手で喉元の傷口を押さえるが、

血は止め処も無く溢れてくる。

北村 優太

お、お願い…します…

泣きながら懇願すれば、

自分を見下す人物の目が

少しだけ揺らいだような気がした。

「殺すか」

「殺さないか」

「その二択だ」

耳元で誰かが囁いた。

「彼女を殺せば」

「君の大切な人は生かして帰そう」

「彼女を殺さないのであれば」

「君の大切な人を殺そう」

「そう、難しい選択じゃないだろ?」

「お、お願い!」

「殺さないで!!」

「私には」

「妹が!!」

「妹は私がいないと」

「私が側に居てあげないと!!」

「悩む必要があるのかい?」

「彼女は君にとって赤の他人」

「生かす必要なんてないだろ?」

「大切な人のために」

「さぁ、彼女を殺すんだ」

「さぁ!」

「さぁ!」

「さぁ!!」

「いやぁぁぁぁぁあ!!」

 

……

 

何を、今さら……

足元に転がる死体を

冷ややかな目で見つめ、

彼は

踵を返して

部屋を後にした。

ニュースキャスター

応和国際大学に通う北村優太さん21歳が

ニュースキャスター

自宅で亡くなっているのが発見されました。

ニュースキャスター

北村さんの遺体には複数個所刺されたあとがあり、

ニュースキャスター

殺人事件とみて捜査を進めています

ニュースキャスター

また、警察では

ニュースキャスター

付近で立て続けに起こっている殺人事件との関係性も視野にいれて

ニュースキャスター

捜査を進めているとのことです。

【完結】便利屋・紫雲かぎり

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