見てはいけないものを見てしまった。
脱兎の如く逃げ帰ってきたけれど、
バレてはいないかと気が気じゃなかった。
あれは、
殺しの現場だった。
被害者は自分と同い年ぐらいの女性、
だったと思う。
首を絞めあげられる女性が、
自分を見たような気がする。
助けを求めるように
手を伸ばしたような気がする。
いや、
全部気のせいだ。
そういう風に見えただけ。
きっと、
殺された彼女は
自分の存在には気が付かなかったはずだ。
いや、
殺人現場を見たことすら
きっと悪い夢だったんだ。
そう思うことで
恐怖に押しつぶされそうな自分を
なんとか正常に保とうとした…。
ニュースキャスター
ニュースキャスター
ニュースキャスター
ニュースキャスター
ニュースキャスター
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そうだ。
あれは夢だったんだ。
警察も事故だって言ってる。
テレビに映し出された彼女は
あのとき見た女性と瓜二つだけれど。
きっと、そうだ。
あれは悪い夢だったんだ。
そう思っても
家から出るのが怖くて、
次に殺されるのは
自分のような気がして
一人、
頭から布団を被って震えていた。
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ルーム№901
352さんが入室しました。
参加人数の上限に達しました。
352
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─ニ時間後─
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352さんが退室しました。
ENさんが退室しました。
参加人数が0になったので、
ルームは完全に消去されます。
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紫雲 かぎり
紫雲 かぎり
紫雲 かぎり
紫雲 かぎり
紫雲 かぎり
紫雲 かぎり
紫雲 かぎり
紫雲 かぎり
紫雲 かぎり
紫雲 かぎり
紫雲 かぎり
紫雲 かぎり
紫雲 かぎり
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いつまでも引きこもっているわけにはいかない。
例えネットで日用品や
食料は買えたとしても
大学の単位までは買えないのだ。
意を決して外出すれば
世の中は何も変わらず
むしろ、
怯えて生活していたのが馬鹿らしく感じられるほどだった。
北村 優太
北村 優太
そう思って帰宅した。
玄関を閉め、
部屋の明かりを付け、
持っていたコンビニ袋を床に置いた瞬間、
背後で物音がした。
驚いて振り返れば、
そこには
真っ黒なパーカーを着た人物が。
フードを深々と被っているので、
その顔ははっきりと見えなかった。
北村 優太
驚いて声を出す前に
侵入者が持っていた包丁が喉に突き刺さる。
北村 優太
足元に置いたビニール袋に足を取られ、
盛大に尻もちをついた。
その反動で包丁は抜け、
噴き出した血が
綺麗な弧を描いた。
北村 優太
両手で喉元の傷口を押さえるが、
血は止め処も無く溢れてくる。
北村 優太
泣きながら懇願すれば、
自分を見下す人物の目が
少しだけ揺らいだような気がした。
・
「殺すか」
「殺さないか」
「その二択だ」
耳元で誰かが囁いた。
「彼女を殺せば」
「君の大切な人は生かして帰そう」
「彼女を殺さないのであれば」
「君の大切な人を殺そう」
「そう、難しい選択じゃないだろ?」
「お、お願い!」
「殺さないで!!」
「私には」
「妹が!!」
「妹は私がいないと」
「私が側に居てあげないと!!」
「悩む必要があるのかい?」
「彼女は君にとって赤の他人」
「生かす必要なんてないだろ?」
「大切な人のために」
「さぁ、彼女を殺すんだ」
「さぁ!」
「さぁ!」
「さぁ!!」
「いやぁぁぁぁぁあ!!」
足元に転がる死体を
冷ややかな目で見つめ、
彼は
踵を返して
部屋を後にした。
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ニュースキャスター
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ニュースキャスター
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