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自分を監禁していた男が、実は夫だった──

にわかに信じがたい話だ。

夫と称する男の肩書きは、極めて困難とされる症例もこなす天才脳外科医。

その天才の内には、女性を監禁し、死に至らしめる狂気を秘めている。

これまで自分の欲望のために、9人もの女たちを殺めてきた。

それも

すべて別々の手口で殺しを行う 極めて猟奇的な殺人犯だ。

その男にワコは監禁されていた……はずだった。

なのにたった今は

同じ顔が愛情たっぷりな眼差しでワコを見つめている。

とても同一人物とは思えなかった。

この男はサイコパスなうえに二重人格なのだろうか?

有能な医者ケイジ。

殺しに快楽を求めるK──。

これで説明がつくだろうか?

ケイジはワコの手を握り言った。

ケイジ(Κ)

きみの病気は幼いころに受けた心の傷が元となっている

ケイジ(Κ)

きっかけは……僕が悪い

ケイジ(Κ)

医者の妻は付き合いが大変だ

ケイジ(Κ)

僕が慣れないきみを守りきれなかった──

いじめにあったっていうこと?

ワコ

……話がうますぎる

ワコ

この世から消えて、誰にも気づかないような

ワコ

身寄りのない女を狙ったのでしょう?

ワコ

あなたみたいな華々しい経歴の持ち主なら

ワコ

芸者が出入りするような店で下働きしていた

ワコ

私みたいな下層民を好きになるわけがない

ワコ

だって、まるで釣り合いが取れないもの

ワコ

父親が押し掛けてきて、あなたに助けられ

ワコ

下心があるかもって思っていた

ワコ

でも、あなたなら遊ばれてもいいかなって

ワコ

偽りでも好きだと言ってくれて嬉しかった

ワコ

でも、まさか

ワコ

殺されるためだったなんて……

ケイジ(Κ)

ワコ……

ワコは一気にいい放つ。

目の前にいる男は涙を浮かべていた。

酔った勢いでキスされた時と同じ悲しげな涙。

ワコ

昨日の夜

ワコ

ベットで無理矢理キスしてきた

ワコ

そしてあの涙は何?

ケイジ(Κ)

きみがよくならないくて

ケイジ(Κ)

僕は少し疲れていて

ケイジ(Κ)

それで

ケイジ(Κ)

酔った勢いで

ケイジ(Κ)

……

ケイジ(Κ)

妻を抱いちゃいけないか?

ワコ

でもあの部屋はなに?

ワコ

病室みたいなあの監禁部屋はいったい何?

ケイジ(Κ)

少し前に精神病棟にいたんだよ

ケイジ(Κ)

その時の記憶と混じってるんだ

ケイジ(Κ)

僕は脳の医者だ

ケイジ(Κ)

なのに

ケイジ(Κ)

きみを治せないだなんて

ケイジは悔しさのあまり握りこぶしで自分の膝を叩いた。

ワコ

精神病棟……?

ワコ

それなら病院を退院したってこと?

ワコ

それいつよ!

ワコ

昨日は確かに監禁部屋にいた!!

ケイジ(Κ)

ワコはまだ時系列が混乱してる

ケイジ(Κ)

退院は先週だ

ケイジ(Κ)

理事長の娘さんは、ここへ見舞に来てくれた

ケイジ(Κ)

きみが見たというヨシオは

ケイジ(Κ)

たぶん病院の男性看護師だと思う

ケイジ(Κ)

ボクは隣の病棟で働いていたんだから

ケイジ(Κ)

しょちゅう顔を出していた

ケイジ(Κ)

それをワコは監禁されたと思っていたんだよ

ケイジ(Κ)

ワコは自分の世界に入ったままで

ケイジ(Κ)

だから思いきって退院させたんだ

ケイジ(Κ)

その甲斐あって、またこうして、話ができるようにまでに回復したんだ

ワコは混乱した。

はたしてケイジの話を100%信じてよいのか

今までの全てが妄想だったなんて……

ワコ

なら

ワコ

監禁部屋は存在しないと?

ケイジ(Κ)

もちろん

ケイジ(Κ)

この屋敷にそんなものない

ワコ

私、出歩いてもいいの?

ケイジ(Κ)

もちろんだとも

ケイジ(Κ)

好きに見るといい

ケイジ(Κ)

明日は仕事だから

ケイジ(Κ)

ワコが納得できるまで家の中を探索するといい

なんてことだ

私、ホントに気が変になってたのか?

コンコン

ドアが開き年輩の女性が顔を覗かせた。

ヨシエ

旦那様

ケイジ(Κ)

ワコ、食事がきたよ

ケイジ(Κ)

ボクの分もある?

ヨシエ

お持ちいたしました

年輩の女性はワゴンを押して、部屋には入ってきた。

ケイジ(Κ)

そこでいい

ケイジ(Κ)

ヨシエさん ありがとう

ケイジ(Κ)

今日は、もう下がっていいよ

ヨシエは会釈をすると部屋を出ていった。

ケイジ(Κ)

すこし早いけど

ケイジ(Κ)

夕ご飯にしよう

ワコ

また食べさせるの?

ケイジ(Κ)

そうしてほしい?

ワコは首を横にふった。

ワコ

自分で食べたい

ケイジはベットの上にトレーを置いた。

ケイジ(Κ)

ナイフとフォークはここに置くよ

銀の蓋をあけると

豪華な肉料理が乗っていた。

ケイジ(Κ)

病院食ばかりで嫌だって言っていたから

ケイジ(Κ)

豪華にってお願いしたんだ

ケイジ(Κ)

でもちょっとハードだったね

ケイジ(Κ)

ワコが食べられる分だけでいいよ

ワコ

でも

ワコ

残すとあの人に悪い……

ケイジ(Κ)

名前はヨシエさん

ケイジ(Κ)

残したら僕が食べてあげるから

ワコはケイジの視線を感じつつ食事に口をつけた。

ワコ

美味しい……

ケイジ(Κ)

そうだね

ケイジ(Κ)

ワコと一緒にいられるなら

ケイジ(Κ)

なんだって旨い

少ししてケイジは改めて言った。

ケイジ(Κ)

ワコ……きみを気の毒だと思ったことなんかない

ケイジ(Κ)

茶屋で働くワコの姿を見て

ケイジ(Κ)

その……気になったんだ

ケイジ(Κ)

あれは……ぜったい
一目惚れだな

ワコ

なんだか

ワコ

プロポーズみたい

ケイジ(Κ)

そうだ

ケイジ(Κ)

二度めのプロポーズだ

ケイジ(Κ)

なんなら

ケイジ(Κ)

二回目の式……

あっ

結婚式

写真!

結婚式の写真

写真があれば信じられる

ケイジ(Κ)

なんだか妙に照れる

ケイジ(Κ)

やっぱ愛を囁くのは

ケイジ(Κ)

このあとのお楽しみに
とっておこう

このあとの楽しみ……?

もしかして一緒に寝るの?

… …

風呂から上がったケイジはベットの上で本を読みふけっていた。

横にいるワコは体を起こし考えごとをしている。

これが真実なら

こんな幸せってあるだろうか?

もし違っていたら……

怖い

奈落の底に堕ちるのが

怖い

ワコ

私……

ワコ

お風呂……

ケイジ(Κ)

昼間に沐浴してるよ

ケイジ(Κ)

明日

ケイジ(Κ)

体調がよければ

ケイジ(Κ)

一緒に

ケイジは本を置いた。

ケイジの顔が迫る。

ワコはドキッと胸が苦しくなる。

ケイジの口が合わさり

押し倒され

明かりが消された──。

つづく

ワコが死の目前で見たものは

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