墓は何時振りだろうか
というか来た事なんて 有っただろうか
そう思考を回し 目的地へと歩く 。
「 岸崎 芭那 」
其の名前は僕の視界を 歪ませそうだった 。
特に綺麗な花束を 用意している訳でも無く 、
近くに咲いていた朱い華を採る 。
ふと 、其の華の 逸話を思い出す
昔人が亡くなり 、 血を流した場所は彼岸花だと 。
だから彼岸花は朱いのだと 。
確かに君は此処で消えた
だから此の朱さは君の血なのだ 。
採りたての朱い華は きっと君をまだ生かしている
僕が記憶している限り 、 君の死はまだ来ない
此の華が朽ちない限り 、 君はまだ死なない
死ねない
願って消えた筈の君は
存在を消せなく 、 誰かの記憶の中で生きている 。
誰よりも悲しむ君の両親
生き甲斐だった親友
瞳に映した教師
美しく残り続けるカメラ
静かに想いを馳せた僕
其れ以外にも多くが君を遺す 。
でも僕だって 君に消えて欲しいのだ
君の所為で苦しさを 知ってしまったから 。
ずっとずっと消えてほしかった
だから君の言われた通り消した 。
殺した
君だって消えたいと
願っていたのでしょう?
此れが僕が君に渡す 、 ハジメテの贈り物
そして此の華は君に渡す サイゴの贈り物
けれど其の贈り物達は どうしても
憎らしい
消えて欲しい人に渡す 贈り物なんて要らないのに
嬉しくなる自分がいる 。
其れが嫌だ
消えた筈の君が また其処にいるようで
また殺したくなる