魅
これで王子を殺すのよ!!
魅
そうすればあなたは泡にならずにすむ!
魅
王子を殺して!
魅
お姉様達は自分たちの髪と引き換えにした剣を渡した
魅
そーっと王子のベッドに近づき
魅
すやすやと寝息を立てる王子の首元に剣を突き立てる
魅
…
魅
このまま刺せば私は泡にならずにすむ
魅
けれど…
魅
王子は死んでしまう
魅
…
魅
王子が死んだ世界で私は生きていけるの?
魅
何十年…ううん…
魅
何千年と…
魅
剣を床に投げた
魅
無理!!
魅
あなたがいない世界で生きていくなんてできない!!
魅
涙が出てきては落ちて
魅
それはきれいな真珠になっていく
魅
ポロポロ
魅
コロコロ
魅
と…
魅
王子の顔を涙目で見つめる
魅
生きて
魅
幸せになって
魅
そう口を動かして最後の口づけをした
魅
さようなら
魅
大好きです
魅
いつまでも…
魅
そう言い裸足のままお城の外に出る。
魅
はぁはぁ…
魅
慣れてきた足は海に向かって走る
魅
この足…やっと慣れてきたんだけどな
魅
ふふっと笑みがこぼれた
魅
かかとから徐々にぷくぷくと泡になりはじめる
魅
急がなきゃ!
魅
その瞬間…
魅
!?
魅
誰かが後ろから私を持ち上げた
魅
どこに行くんだい?
魅
その声は…
魅
王子様…
魅
寝室で寝ていた王子が今ここにいる
魅
な…んで…
魅
起きていたから
魅
会話も…聞こえていた
魅
!
魅
そんな…
魅
どうして殺さなかった…
魅
俺を殺せば泡にならなくてすむんだろう?
魅
…
魅
ふるふると首を振る
魅
できません…
魅
あなたがいない世界で生きてはいけない
魅
だから、これでいいの
魅
ぱくぱくと口が動く
魅
王子には聞こえない言葉
魅
声と引き換えの足は
魅
ぷくぷくとゆっくりだが徐々に進んでいる
魅
消滅までの時間を…
魅
私を地面におろして言った
魅
すまない
魅
何を言ってるかは分からない…けど
魅
これだけは分かった
魅
王子はポケットから真珠を取り出した
魅
君の涙だ
魅
今も泣いているね
魅
そっと涙を手でぬぐう
魅
涙は真珠になる
魅
君が助けてくれた命だ
魅
好きにしてよかったのに…
魅
君が死んだら
魅
俺はどう償えばいい?
魅
王子はぎゅっと抱きしめた
魅
っ…
魅
かかとは消えかけてつま先でなんとか立つ
魅
私はもう消える…泡になる運命
魅
このまま抱きしめられたままでもいいかな
魅
ここで消えてもいい…よね?
魅
最後の幸せを噛みしめるように王子の背中に手を回した
魅
大きく広い背中はとても安心した
魅
私、今とても幸せ
魅
もうこれで十分…
魅
そう思った瞬間
魅
一気に体中から泡が出てきては消えた
魅
!?
魅
なんだ!?
魅
それは月夜に照らされて綺麗でもあった
魅
頼む!消えないでくれ!
魅
王子は思いきり抱きしめた
魅
消えるなと気持ちを込めて
魅
王子様…嬉しい…私嬉しいです…
魅
最後に…
魅
何かを言い残して
魅
泡になり消えた
魅
身につけていたもの
魅
全てと一緒に
魅
どうして…
魅
もっと早く気づいていれば…!
魅
奥歯を噛み締めて
魅
周りに散らばった
魅
唯一消えなかった
魅
真珠を拾い思い出す
魅
ひとつ取って
魅
初めて会った時の顔
魅
ひとつ取って
魅
服にはしゃぐ顔
魅
またひとつ
魅
またひとつと思い出す
魅
ナイフとフォークの使い方に苦戦する顔
魅
歩く練習をする顔
魅
涙の、真珠の数だけ思い出す
魅
最後のひとつは
魅
泣きながら笑顔で消える顔だった
魅
…俺の前ではいつも笑顔だったな
魅
ふっとかなしげな笑みを浮かべる
魅
そのままたくさんの真珠を抱きしめて
魅
王子は海に飛び込んだ






