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「やっほーハッピーバレンタイーン♪」

「あ、お疲れ様です」

「お疲れー………ふんふん。結構な数のチョコだね

容姿端麗、成績優秀。そして全国4連覇!テレビの取材も来るくらいだからそりゃモテますわな、溝口君」

「親父ほどじゃないですけどね」

「またまた謙遜しちゃってー♪。そんな溝口君に、料理部部長である私からのチョコも授けよー」

「ありがとうございます」

「委員会ではお世話になってるからねー……ほら桃ちゃんも♪」

「う……い、いっぱい貰ってるし私のなんていらないかもしれないけど…

でもその……良かったら…」

「ありがとうございます」

「うん……」

「一緒に作ったんだけどねー、桃ちゃん気合い入ってたよー。溝口君のだけハート型使ってたし」

「い、言わないでよ!」

「ちょっと西谷先生!ボーっとしてないで真面目に仕事………

……をしてる!?!?」

「ハハハ何驚いてるんですか俺はいつも真面目ですよ!ハハハ

いやもう全然?バレンタインとか意識してないです今の今まで忘れてました本当ですよハハハ

あんなのチョコメーカーのチョコ買ってねキャンペーンじゃないですかハハハ俺は敢えて身を引いてるんです戦略的撤退ですハハハ

いやもうだから全然全っ然普通です。吉田くんがやたら大量のチョコ貰ってたのを見ても心を乱されたりしてません

バレンタインがなんぼのもんじゃああああああああああハハハハハハハハハハハハっ!………ハァ

……なんで吉田くんは貰えて俺は……」

「吉田君のは全部男子からですよ」

「なんだそうかああああぁああぁぁぁぁよかったああああ!男子からのチョコはノーカンだからーーっ…お?

なんですかこれ」

「だ、だからチョコです見たら分かるじゃないですか!」

「お…俺に……?」

「ちょ、ちょっと買いすぎて余っただけです!それ以外の意図とかありませんから!仕事してください!」

「ああああありがとうございますっっ」

「ちょっ何急に手を……っし、仕事してください!!」

「そうや、せっかくやしラスボスさんに教えて貰ったら?そしたらのぞみでも それなりの物(もん)が出来るし」

「ゑ?」

「花嫁修業や!!」

「やだ!ボスのはただの嫁いびりだもん!」

「わがまま言わない!そうでもしなピータンかスライムが大量発生するやろ」

「うぅ…」

__ボスたちとスーパーでエンカウントした日、私は話の流れと言うか澪に押し切られて再びボスの指導を受けることになった。

孝太君のお母様が側にいた時の澪は強かった…。

柚月君にはサプライズで用意したいので、今回は柚月君に内緒でお家にお邪魔し修行した日から3日。

今日はいよいよバレンタイン当日。

私は例の如く、塾の前で柚月君を待ち伏せしていた。

(血と)汗と涙の花嫁修業をしみじみと回想していると、塾生がわらわらと玄関から出て来た。

その中に柚月君の姿を見つけると小さく手を振る。

私に気づいた柚月君は遠目でも分かるくらいに相好を崩すと、ぱたぱたと こちらに駆けて来た。

鳴沢 柚月

のぞみさん!

山川 のぞみ

久しぶり柚月君。……今日何の日か分かる?

柚月君は悪戯っぽく首を傾げて見せた。 …どうやったらあのボスからこんな天使が生まれるんだろー。

山川 のぞみ

今日はバレンタインだよ☆
と言うわけで…はい

山川 のぞみ

今回は手作りだよ

鳴沢 柚月

ありがとう

テイク26の末ようやく出来たハート型のチョコを両手で受け取ると、柚月君は満面の笑みを浮かべた。

山川 のぞみ

そいでこれは市販のやつだけど、ボスに渡しといて。これ作るのに一応お世話になったからね

鳴沢 柚月

ボス?

山川 のぞみ

ユア マザー

鳴沢 柚月

ずいぶんお母さんと仲良くなったんだね

柚月君は嬉しそうに微笑んだけど、手元のチョコに視線を落として口を尖らせた。

鳴沢 柚月

……でも次は僕も交ぜてほしい

山川 のぞみ

本っ当に疑問に思うんだけどどうやったらあのボスからこんな天使が…

「孝太ーー。お客様だよー」

「……えー今?ちょっと立て込んでるんだけど」

「澪姉様だよー」

ドタドタバタッガン! ドタドタ

「__ちょっと俺が出るからお姉ちゃんはあっち行って」

バレンタイン当日。

上手いことラスボスさんにのぞみを引き渡すことに成功した私は、流れで孝太君のお母様と朋美さんとチョコを作ることになり

その時に「チョコは是非家(うち)に来て渡してあげて!」と言われた。

曰く、14日は孝太君が受験した呉董都学園の合否が分かる日でもあるので、精神状態がアレになると言う。

私に何か出来るとは思えへんけど…とドキドキしながら今日を迎えたのだが、インターホンでのやり取りを聞いた限り大丈夫そうだ。

孝太君はいつもよりラフな格好(おそらく部屋着)で私を出迎え、自室に上げてくれた。

孝太君の部屋にお邪魔することは初めてなので ついついキョロキョロしていると、ローテーブルに置かれた茶封筒が目についた。

封筒には「呉董都学園」の文字。 封はまだ切られていない。

山崎 孝太

合否通知です。……まだ結果見れてないんです

飲み物を用意してくれた孝太君が恥ずかしそうに口を開いた。

相原 澪

ごめんそんな時に……チョコ渡したらすぐ帰るから

山崎 孝太

あ、いえ。……恥ずかしい話なんですけど…1時間くらい前に届いたんですけど怖くて開けられなくて…

山崎 孝太

……でももう開けることにします

相原 澪

えっ……と、それは私も立ち会って大丈夫…?

山崎 孝太

むしろ立ち会って欲しいです

相原 澪

あ……そ、そう…

孝太君は頷くと自分の分の飲み物を一気に飲み干した。

山崎 孝太

よし

息を吐いたついでに立ち上がるとハサミを手に取り、また座る。

そしてゆっくりと封を切り、1枚の紙を取り出す。

山崎 孝太

ダメだったらたぶん泣くかもしれないです

相原 澪

……うん。受け止めてあげる

私も緊張して来た。 秒針の音がやけに大きく聞こえる。 覚悟を決めたらしく

孝太君が紙を裏返した。

通知を目にした孝太君は

数秒動かなかった。

「どうやった?」と訊きたい衝動を必死で抑える。 私から訊くことじゃない。

__やがて。 しばらく紙面を凝視していた孝太君が顔を上げた。

私と目があった孝太君は

にっこりと 破顔した。

山崎 孝太

受かりました

そして顔の横で紙を掲げた。 「合格」の2文字が踊っていた。

相原 澪

…………よかった

山崎 孝太

うん

相原 澪

おめでとお。ほんまに

山崎 孝太

うん

相原 澪

よかった

山崎 孝太

うん

しばらく頭からチョコが抜け落ちた。

鳴沢 柚月

孝太君おはよう

山崎 孝太

おはよう

鳴沢 柚月

合格おめでとう

山崎 孝太

ありがとう。柚月も頑張って

鳴沢 柚月

うん

翌日。 小さく鼻歌を歌いながら校門をくぐると柚月に出会った。

昨日はまさかの合格を掴み、びっくりしたし嬉しいしで全然眠れなかった。ちょっと泣いた。

朝起きたら瞼が少し大変なことになってたけど、それすらも笑って許せる。

俺は本当に行きたい高校に挑み合格することが出来た。

未だ冷めぬ熱を伴って、昇降口に足を踏み入れた 瞬間。

違和感。

一瞬だったけど確実に、一部の下駄箱から喧騒が消えた。

一部の下駄箱___3年の下駄箱にいる生徒が一斉に目を逸らした。

そして近くにいる人に耳打ちする。また一瞬視線を向けられる。 これは。この空気は___。

昨日から燻っていた熱が一瞬で立ち消えた。

___3年の下駄箱。大きな直方体のその側面、玄関扉に平行な面に

1枚の紙が貼り付けられていた。 蛍光ペンで書かれた、見覚えのある筆跡。

卒業パーティーに向けて 柚月の親と吉田の親が料理バトル!!

紙は上部に1箇所、セロテープでとめられているだけだ。 開け放してある玄関扉から来る風が時折その紙を揺らし

シャーペンで書かれた裏面が露になる。

紙を乱暴に剥がした。

山崎 孝太

こんなの気にしなくていいから

鳴沢 柚月

……うん。でも

鳴沢 柚月

こんなこと言われて……お母さんに悪いな…

山崎 孝太

……………

なんで柚月が謝るんだろう。被害者は柚月だ。

__そう口にするのは、間違っているだろうか。

3年の教室が並ぶフロアは、酷い有り様だった。

壁や窓、ありとあらゆる面に下駄箱で見た紙が貼られていた。 俺と柚月が在籍するクラスにはドアにも貼られている。

フロアに俺と柚月が現れると再び下駄箱で感じた嫌な空気になった。今度はそこに忍び笑いも加わる。

__柚月が目に涙を溜めて俯いた。 俺は無言で近くの貼り紙に歩み寄る。

引き剥がそうと手を伸ばすと、その手を誰かに掴まれた。 貼り紙の作成者達だ。

取り巻き

おぉーーっとォ、何剥がそうとしてくれちゃってんの?えーぎょーぼーがい で訴えるぞ

取り巻き

だいたい今ごろ無駄だっつーの

取り巻き達の言葉通り 廊下にその声はよく響いた。

吉田

やっばなにこれ

登校して来た吉田は、辺りの悪趣味な貼り紙(相変わらず裏にいろいろ書かれてる)を面白そうに眺めた。

俺は取り巻きの手を振り払うと吉田に歩み寄った。 俺が近づいても吉田の顔は貼り紙に向いている。

山崎 孝太

こんなことして何が楽しいわけ?

吉田

オレにキレんなよ。オレも今初めて知ったんだからさ

取り巻き

吉田!

取り巻き達が俺を押し退けて吉田に群がる。

「オレを褒めろ」とばかりに取り巻き達は次々に口を開いた。

取り巻き

広報活動!オレが考えたんだぜ

取り巻き

待てよ書いたのオレだぞ

取り巻き

ちげーよ、オレが情報仕入れたからこそだろ。
吉田!卒業パーティーって吉田の親が考えたんだろ

吉田

まぁな

貼り紙を眺める吉田が、心無しか少し嬉しそうに答えた。

取り巻き

オレの親も吉田の親と同じ班でさ、いろいろ知ってんだ

取り巻き

柚月の親を懲らしめる為に卒業パーティー企画したんだろ?

___その瞬間。 吉田の顔から

笑みが消えた。

取り巻き

柚月の親が鬱陶しいって、邪魔だって吉田の親いつも言ってたらしいんだ

取り巻き

オレの親もそう思うって言ってた。他の親も。だから卒業パーティーを企画したんだって!

取り巻き

オレ達応援するからな!吉田の親が勝つように

身動(じろ)ぎ1つせず、声1つ発せず、吉田はただ貼り紙を眺めていた。

その横顔からは、一片の感情も窺えない。 取り巻き達も吉田の異変に気づいたのか、次第に口を閉ざし吉田に気遣わし気な視線を向けた。

時間の経過を曖昧にさせる針のような沈黙の中、 吉田が1歩、貼り紙に近づいた。そして

力任せに引き剥がした。

誰もが息を呑んだ。無論 俺もだ。

まだ僅かにこびりついている貼り紙の残骸を一瞥し、吉田は首を鳴らして天井を仰ぐ。

吉田

あーー……そう。そういうこと…そういうことかよ

吉田

____目ぇ覚ませよお前ら

吉田

卒業パーティーを企画した人に、そいつに

吉田

人生の門出を祝おうって気持ちは微塵もない。ただムカつく奴を懲らしめたいだけ。そんな事の為にオレ達の卒業が利用される

流れる声音は冷たく、顔は未だ無表情だ。

吉田

侮辱だよこれは

だからなのか。だからこそ。 吉田の言及に異を唱える者はいなかった。

取り巻き

そ、そうだよな!

取り巻き

おかしいおかしい!

一転して、そして大袈裟に吉田に賛同する取り巻き達。 その声を受けて、吉田が体の向きを変えた。

取り巻きの誰でもない、俺でもない、 その人物に吉田が正対する。

その顔はもう無表情ではない。 ありったけの憎悪を剥き出しにして、吉田は柚月と対峙する。

柚月の肩が震えた。

吉田


お前ら はいつもそうだ

俺は柚月を庇うように、その間に割り込んだ。 それでも、怒りに燃える目で、吉田は柚月を見下ろす。

吉田

………いつもいつも邪魔ばっかりしやがって

「何これどうしたの揉め事?」

元カレ先生の声が張り詰めた空気を切り裂いた。 吉田は引き剥がした貼り紙を廊下に叩きつけると踵を返した。

__吉田が顔を背ける直前、吉田の瞳が揺れているのが視認出来た。

吉田 母

説明してくださる?

校長室。 吉田の母親が怒りを隠そうともせずにテーブルを平手で叩いた。

吉田 母

卒業パーティーの中止要請ってどういうこと?ねぇどういうこと?説明しなさいよ!

校長

それは……そのような声が多く集まり…

吉田 母

いい加減なこと言わないで頂戴。皆賛成してたのよ楽しみにしてたのよ。どこの誰の声を集めたと言うの

校長

それは……

「親じゃねぇよ、オレ達だ」

校長室のドアが開き、1人の生徒が入室した。

入って来た生徒を見た母親の顔が大きく歪む。 テーブルを叩いた手を握り、生徒を下から睨み付ける。

吉田 母

どうしてあんたがここにいるの…

吉田

サプラーイズ

入って来た生徒__吉田は両手を広げておどけて見せた。 そして扉を閉めると悠然と室内を歩く。

吉田

オレはこの学校の生徒だ。そして今年の卒業生だ

吉田

卒業生の為のイベントなら卒業生の意見を反映させんのは当然だろ?

吉田は母親が座っているソファーの真横で立ち止まると、浮かべていた笑みを引っ込めて母親を見下ろした。

吉田

卒業生を代表して
そのふざけた企画の中止を要求する

女子大生と男子中学生が交際している話 シーズン2

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コメント

1

ユーザー

朋ちゃんは料理部の部長なので料理はめちゃくちゃ上手いです。バレンタインなどの一大イベントでは重宝されます。桃ちゃんもバレンタイン前日、朋ちゃんの手を借りて頑張りました。 その数日前に澪さんと一緒に作ったと言う感じです。 料理の腕は澪さんと同じくらいですが、孝太君的には澪さんが1位だそうです。読んでくださりありがとうございました❗

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