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主演女優賞 Ⅱ

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主演女優賞 Ⅱ

6 - アオイハル〈Blue〉

♥

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2023年07月27日

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けたたましいアラームの音が耳に届き、まぶたを開ける。

重い腕を動かして目覚まし時計を止めた。

わたし

はぁ……

今日も学校だ。眠い目をこじ開け、用意を始めた。

チャイムの音とともに、生徒たちが席につきはじめる。

先生

起立、礼

さっきの授業は起きていられたけど、急に眠気が襲ってくる。

前を見ているふりをして、斜め左のほうに座っている彼に目をやる。

わたし

(片肘ついてるのもかっこいい…)

彼―樹くん―はわたしの好きな人。

でもクラス一、いや高校一ほどのモテ男子。

そう。こんなわたしの恋なんて絶対に実らない、高嶺の花的存在。

彼が髪をかき上げて、耳の金色のピアスが揺れた。

わたし

(ピアス開けてる人なんてタイプじゃないはずなのに…)

物思いにふけっていたからか、先生に呼ばれていることに気が付かなかった。

隣の席の女子に肩をたたかれ、我に返る。

わたし

あっ、はい!

先生

この問題の答えは何だと聞いているんだ

わたし

えっと……

先生

もう結構
誰かわかる人は?

恥ずかしさで、頬も耳も赤くなるのを感じる。

うつむいて座ると、誰かが「はい」と声を上げた。

その声は、わたしの好きな声。

先生

はい、田中

ルート3エックスプラス6ワイです

先生

正解

クラスに拍手がわき上がる。

一方のわたしは縮こまるばかり。

授業終了を告げるチャイムまでが、すごく長く思えた。

休み時間が始まり、みんなは席を立って何人かで集まる。

わたしはいつものように本を開こうとしたが、手を止めた。

樹くんに、せめてものお礼を伝えようと思った。

立ち上がり、彼の席へ。

わたし

あの、た――

おーい、みんな!

同じタイミングで彼も立ち上がり、友達に声を掛けた。 そのまま男子の円の中へ行ってしまった。

わたし

あぁ…

わたし

(ダメだった…)

やっぱり、あの人には触れられない。

そう思っていたのに――。

結局樹くんには何も言えないまま、一日が終わる。

わたし

あーあ…

わたし

でも樹くんだって、わたしのことなんて気にしてないよね

こんなわたしのことなんて。

わたし

……あれ

自分の靴箱に、見慣れないものが入っている。

白い紙で、四つ折りになっている。

わたし

何これ…

正体もわからないのに、胸が高鳴る。

これは、マンガかドラマの中で見るやつのはずなのに。

それをそっと開くと、お世辞にも綺麗とは言えない字体で何か書いてある。

「好きです 今日の放課後、屋上に来てくれませんか 1-6 田中樹」

わたし

えっ…

二度見しようが凝視しようが、そこに記されている名前はわたしの意中の人。

間違って「好き」だなんて書いてしまったのだろうか。

敬語だから先輩宛てかもしれない。 でも……。

わたし

…行かなきゃ

伝えられない。

屋上なんて、まだ一度も行ったことがなかった。

みんなは友達や恋人同士で行っているそうだけど、わたしには縁のない場所。

恐る恐るドアを開けると、そこは賑わっていると思ったが全然いない。

がらんとはしているが、たった一人いる。

フェンスにもたれている男子の制服の生徒。

遠目でもわかるスタイルの良さ。 改めてわたしが好きな人の立場の高さを実感する。

もし呼び出したのがわたしじゃなかったら恥ずかしいと思ったけど、勇気を出して声を上げた。

わたし

あの…!

彼が振り向いた。

あっ良かった、来てくれた!

あろうことか、わたしに向かって笑顔を見せている。

ちゃんと手紙読んでくれたんだ
あんなの書くの初めてでさ、緊張した

わたし

(こっちだってそんなの読むの初めてだよ…)

彼が手招きをしてくる。 がちがちの足で歩み出す。

わたし

……ほんとに、わたしなの?

彼は驚いたような表情になる。

ふふっ、もちろんだよ

彼の笑みをこんなに近くで見たことはない。 カッコよくて、爽やかで、ああ、キリがない。

名前、手紙に書いといたほうがわかりやすかったね

わたし

でっ、でも…樹くんにはもっといい人がいるはずだよ
わたしなんかより…

俺はその君じゃなきゃ嫌
だから――

わたし

樹くんっ

思わず声が出ていた。

わたし

…こ、こんなわたしでも、樹くんのこと――

好きになっていいよ

だって俺も好きだから

彼はふっと口角を上げる。

そういう優しいところとか、大人しいところが好き
もちろんかわいいとこも

ありえない展開と、ありえないほどに暴れる鼓動に困惑しまくっていると、温かい感触で身体が包まれた。

わたし

え、あっ…

誰もいないからいいだろ

5秒たって、彼に抱かれているんだと気づいた。

じゃあ、両想いだね

少し高い樹くんの肩越しに見る空は、爽やかすぎるほどに青くて、青春の色だった。

終わり

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