〇〇
愛莉〜!
桃井 愛莉
どうしたのよ、〇〇
〇〇
わたし、屋上で靴を脱ぎかけた時に
桃井 愛莉
なに靴脱いでんのよ
〇〇
三つ編みの先客に、声をかけてしまった
〇〇
「ねぇ、やめなよ」
桃井 愛莉
え?その子自殺しようとしてたの?
桃井 愛莉
ていうか、どこの屋上よ!
〇〇
口をついて出ただけ
〇〇
本当はどうでもよかった
桃井 愛莉
それでも止めたのは偉いわね
〇〇
先を越されるのがなんとなく癪だった
桃井 愛莉
え?あんたも自殺しようとしたの!?
〇〇
三つ編みの子は、語る
桃井 愛莉
相談にのったのね
〇〇
どっかで聞いたようなこと
〇〇
「運命の人だった、どうしても愛されたかった」
桃井 愛莉
愛されたかったのね
〇〇
ふざけんな!
桃井 愛莉
えちょっと〇〇?
〇〇
そんなことぐらいでわたしの先を越そうなんて!
〇〇
欲しいものが手に入らないなんて
〇〇
奪われたことすらないくせに……
桃井 愛莉
〇〇…
〇〇
「話したら楽になった」って
〇〇
三つ編みの子は消えてった
桃井 愛莉
そういえば〇〇も三つ編みだったわよね?
〇〇
さぁ、今日こそはと靴を脱ぎかけたらそこに
〇〇
背の低い女の子、また声をかけてしまった
桃井 愛莉
〇〇も背が低いわよね?
〇〇
背の低い子は、語る。
〇〇
クラスでの孤独を
〇〇
「無視されて、奪われて、居場所がないんだ」って
桃井 愛莉
いじめられてたのね
〇〇
ふざけんな!
〇〇
そんなことぐらいでわたしの先を越そうだなんて!
〇〇
それでも!家では愛されて、温かいご飯もあるんでしょ?
桃井 愛莉
家族には隠してるのね、いじめられてるのは
〇〇
「おなかがすいた」と泣いて
〇〇
背の低い子は消えてった。
〇〇
そうやって何人かに、声をかけて追い返して
桃井 愛莉
何人も自殺しようとしてたの?
〇〇
わたし自身の痛みは誰にも、言えないまま
桃井 愛莉
〇〇も何かあったの?
桃井 愛莉
言ったじゃない!辛いことがあったら言ってって!
〇〇
はじめて見つけたんだ
〇〇
似たような悩みの子
〇〇
何人めかに会ったんだ
〇〇
黄色にカーディガンの子
桃井 愛莉
カーディガンの子ね……
〇〇
家にかける度に、増え続ける痣を
〇〇
消し去ってしまうため、
〇〇
ここに来たのと言った
桃井 愛莉
虐待されてたのね、可哀想に……
〇〇
口をついて出ただけ
〇〇
本当はどうでもよかった
桃井 愛莉
でも、出たならどうでも良くなかったんじゃない?
〇〇
思ってもいないこと
〇〇
でも声をかけてしまった
〇〇
「ねぇ…やめてよ……」
〇〇
ああ、どうしよう
〇〇
この子は止められない…!
桃井 愛莉
えっちょっと!
〇〇
わたしには止める資格がない
桃井 愛莉
あなたは止められる!
桃井 愛莉
何人も止めてきたじゃない!
〇〇
それでも、ここからは消えてよ!
〇〇
君を見ていると苦しんだ……!
〇〇
「じゃあ今日は辞めておくよ」って
〇〇
目を伏せたまま消えてった
桃井 愛莉
やっぱり止められるじゃない!
〇〇
今日こそは、誰もいない
〇〇
わたしひとりだけ
桃井 愛莉
〇〇?
桃井 愛莉
どうしたのよ。
桃井 愛莉
まさか自殺しようとしてないでしょうね!?
桃井 愛莉
ちょっと〇〇!
〇〇
誰にも邪魔されない
〇〇
邪魔してはくれない
〇〇
カーディガンは脱いで
〇〇
三つ編みをほどいて
〇〇
背の低いわたしは
桃井 愛莉
〇〇!やめて!
〇〇
今から
〇〇
飛びます。
桃井 愛莉
〇〇っ!