金山 薫
……
猿山 らだ男
っ…ゥ…
おかしい。
あの、陽気で、優しい、強くて、すごい先生が、俺の前で崩れた。
いつも仮面のように張り付いた笑顔が
一瞬で剥がれ落ちて蒼白な顔を見せた
何か焦っているようで冷や汗も書いているみたいだ。
まるで、いつもの先生じゃないみたい。
猿山 らだ男
っ…フ-ッ…フ-ッ…
──あれ、いつもの先生って誰や…?
金山 薫
──先生、先生!
猿山 らだ男
ヒュ-ッ…ヒュ-…
なに?何?ナニ?
頭の中をグルグル回る思考に気持ち悪くなっていく。
壊れた自分についていけず、ただ荒い息を繰り返した。
過呼吸になりかけ、我を忘れかけた頃──
金山 薫
──sい!先生!
金山 薫
チッ……猿!
猿山 らだ男
ウワァァァア!?
金山 薫
うるさ…
金山 薫
どないしたんや急に…先生らしくないやんか。
金山 薫
そんな苦しいならここじゃなくて保健室行けや。
金山 薫
倒れられたら俺なんも出来んやろが
猿山 らだ男
あ、嗚呼…うん。ごめんね、ありがとう
きょーさんに似た、でも違うきょー君が俺の事を呼び止めた。
感謝は述べたけど猿って言ったの聴き逃してないからな?
金山 薫
……珍しいな
猿山 らだ男
ん?なにが?
金山 薫
先生が、表情崩すん。
金山 薫
いつも怖いくらい笑ってんのに。
猿山 らだ男
…えぇ…俺ってそんな怖いやつなの?
金山 薫
なんや、自分のことなんに分からんのか。
金山 薫
いっつも仮面付けてるみたいなんや。
金山 薫
喜怒哀楽はしっかりしてんねんで?
金山 薫
でもな、どこか本心がないねん。
金山 薫
いーっつも虚ろで、死んだ目しとん。
金山 薫
でも、なんか今は違う。
金山 薫
先生であって先生じゃないみたいやな
猿山 らだ男
…俺は俺だぞ?
金山 薫
わかっとんねん。中身は同じなん。
金山 薫
でも、…な…。
金山 薫
いつものお前やない見たいや
すっと下を向き目を背けられてしまう。
金色の瞳が、何か言いたげに揺らいだのを俺は見逃してはいなかった







