目を覚ました。
点滴パックは真空になってつぶれていた。
飲まず食わずでだいぶたつ。
ワコ
ワコ
ワコ
ワコ
ワコ
ワコ
ワコはふらふらとベットから降りる。
点滴ラックを支えにゆるゆる進む。
トイレの前までくると戸をスライドさせた。
ワコ
ワコ
眠らされている前にトイレットペーパーの切れ端を床に落としておいた。
ワコ
ワコ
ワコ
ワコ
ワコ
ワコの監禁に共犯者がいることを窺わせた。
そういや使用人がどうとかこうかって言ってたよな……
この建物にK以外の人間が出入りしているってことだ。
ワコ
ワコ
ワコ
ワコ
ワコ
拉致られるまで
ワコが働いていた茶屋にも
占い師と名乗る怪しげな女が出入りしていた。
実際のところ占いとは名ばかりで、政治家や要人たちと、
通称ヤり部屋と言われる奥座敷にしけこんでいた。
それもとっかえひっかえだ。
ワコ
いけないいけない思考が脱線してしまった。
便器の裏側──
1777の紙が挟まっていた壁
他にも手がかりがないか探してみることにした。
ワコ
ワコ
ワコ
1777
電話番号
暗証番号
トランクの鍵
やっぱ情報が無さすぎる。
考えてもきりがない。
ワコはトイレを出ると
ほかにも手がかりがないか調べ始めた。
しかし
部屋はベットと椅子があるくらいで、窓すらついていない。
ベットの裏側
マット
枕
どこを探しても塵すら見つからなかった。
ワコ
ダメもとで出入り口の戸をスライドさせようとする。
びくともしない。
そりゃ開かないよねー。
ワコ
ワコ
ワコ
ワコ
それにしては、だいぶひっそりしていた。
ワコ
Kは医者だ
この考えは理にかなっている。
逃げ出すにしても、部屋の外にいる人数を把握しなきゃならない。
そして4桁の数字の謎も……
考えたが行き詰まった。
ワコはとうとう何もすることがなくなった。
しかたなしにベットに横になる。
いつものように天井の染みを見つめた。
考えることがなくなって
死について考えてみた。
自ら死をえらぶなら
点滴チューブを首にまいたらどうだろう?
苦しいし、見苦しいよな。
できるなら苦しまずに
綺麗に死にたい。
ワコ
雪山で遭難すると
眠くなり
寝てしまったら最後そのまま死ぬと聞いた。
でも春になって雪が溶け始めたら
腐る。
なら永久凍土のシベリアは?
いやいや
熊の餌になるのが落ちだ。
綺麗に死ぬって案外難しい……。
このまま
おとぎ話のように
100年の眠りにつく。
そして
王子さまの口づけで目を覚ますのだ。
ここから出してもらえるなら、王子じゃなくたって、誰でもいいか。
ワコはふたたび
眠くなる。
目を閉じ
思考を止めた。
もう目が覚めなくてもいいか。
柔らかな感触──
二の腕を掴まれ
唇に柔らかな感触。
うん?
酒臭い
無理矢理目を開けた。
焦点が定まる
Kがのしかかり
ワコを見つめていた。
ワコ
ワコは驚き押し返す。
K
嫌か?
嫌ですとも
ワコ
ワコ
ワコ
K
K
K
K
Kは少しふらついている。
ワコ
K
K
K
K
無邪気に笑い
ワコをぎゅっと抱き締め
口づけをする。
そして、あろうことか唇を奪うだけ奪って寝てしまった。
ワコ
重っ……
ワコ
ゆする。
ワコ
Kの顔をなんとかどける。
ワコ
耳元で叫んでみた。
が、起きる気配なし。
ワコ
あまりに無防備すぎる。
Kの体をずらし、様子をみる。
起きない。
ベットから降りようと足を動かした。
!!
つづく