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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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目を閉じると、より敏感に風を感じる事ができる

頰をかすめる暑すぎず、冷たすぎない絶妙な温度

葉の揺れるカサカサとした音

本当に

良い天気の春の日だ

ケイティ

アルバート!何をこんなところで寝ているの?

オリバー

ったく…いないと思って探してたのに……

ケイティ

こういう時は、なんて言うのだっけ?

オリバー

うーん…灯台下暗し?

ケイティ

そう!それだわ!

アルバート

ったくお前らうるせえ!

ケイティ

わーい!起きてくれたのね

アルバート

丸聞こえだ

オリバー

じゃあ早く起きてよ、俺とケイティで探してたんんだからね

アルバート

そりゃ悪かったな

アルバート

で、お前らどうしたんだよ

オリバー

はあ!?どうしたんだよじゃないでしょ

オリバー

お前ケイティと一緒に図書館で勉強する約束してたんでしょ

アルバート

ああー、それって今日だったか

ケイティ

もしかして忘れてたの!?

アルバート

明日だと思ってた

ケイティ

えー、サイテー!

オリバー

ケイティ、こいつ殴っていいよ

ケイティ

ええ、好きじゃなかったらとっくに殴ってるわ

ケイティ

でも間抜けなところもアルバートらしいっていうか……

オリバー

あー、分かる分かる

ケイティ

ま、私もそのくらいで怒る程の女じゃないし

ケイティ

ほら、起きて!行くわよ

アルバート

ん、分かった

アルバート

ところでオリバー、お前はどこ行くんだよ

オリバー

カフェでナンパ

ケイティ

夢中になり過ぎないようにね

オリバー

分かってるよ、それじゃあ二人でお楽しみに

ケイティ

またねー!

アルバート

じゃあな

オリバー

着いたよ、アルバート

アルバート

あっ…

オリバー

ほんとよく寝てたね、良い夢見れた?

アルバート

ああ…凄く良い夢だった

オリバー

ケイティの夢?

アルバート

…………

このまま頷けば、多分まだ過去に囚われているやつだって思われそうだ

アルバート

どう…だろうな

オリバー

正直に言ってくれて良いんだよ?

オリバーが、俺の顔を覗き込む

光の灯った紫と、すべての光を吸収するかのような黒がこちらの心情を読み取っていく様に感じる

アルバート

分かってんだろ…お前は

オリバー

まぁ、何となくは……ね

オリバー

けど君は凄いよ

アルバート

何がだよ

オリバー

何年もケイティの事想ってて

オリバー

きっと俺なら、すぐに忘れちゃうから

オリバーはそう言いながら隣のベンチに座り、籠から水筒を取り出す

そして上に被せてあるコップを取り、水筒の蓋を開けて日の光を受けて赤く透き通った色をした紅茶を淹れていく

アルバート

……この匂いは

オリバー

ローズヒップティーだよ

コップの中には、赤い紅茶がなみなみと入っている

オリバー

これ美味しいとおもうから、ぜひ飲んで

アルバート

ありがとな

オリバーからコップを受け取り、中に入った紅茶をすする

アルバート

んー……美味い

オリバー

そうでしょ?俺の一番淹れるの得意な紅茶だし、自信あったんだ

アルバート

ふーん

ローズヒップティーの特徴は、酸味が強い事

朝とかは結構目が覚めるし、香りも楽しめて良いのだが

ケイティとの思い出から現実に呼び戻された今飲んでも

大事な人を失った酸っぱい思いが込み上げてくるばかりだ

オリバーの作ったローズヒップティーは、一番好きな筈なのに

どうしてだろう

あまり美味しくない

アルバート

……!

オリバー

お、おい……不味かったならそう言ってくれよ

オリバー

泣かなくても……良いじゃないか…

アルバート

泣か…なくても?

オリバー

いやお前、涙出てるよ

アルバート

は?

そんな筈はないと思った

でも、たしかに頰に紅茶より少し冷たいくらいの温度の液体が流れていく

どうしてだろう

オリバーの前では、絶対にケイティの事では泣かないと決めたのに

絶対に彼を傷つける事なんかしないって決めていたのに

止まらない、どんどん溢れていく

紅茶に波紋が見えた

ごめん、ごめん

過去に縋りついて泣くしか出来ない俺を

許してくれ

オリバー

…………紅茶、全部こぼれてる

アルバート

ああ、悪い

いつの間にかコップを傾けてしまっていたみたいだ

オリバー

別に

オリバー

俺の方こそ、からかいすぎた

オリバー

お前は、ケイティが死んでほんとに悲しんでるのに

アルバート

俺も…泣いて悪かったな

オリバー

紅茶…どうだった?

アルバート

あまり……美味くなかった

オリバー

そっか…次はもっと上手く淹れれる様にしとくよ

オリバー

正直に言ってくれてありがとう

アルバート

なあ…もう少し寝てもいいか?

オリバー

なにー?ほんとに寝不足じゃん

アルバート

いや、風が本当に気持ち良くて

オリバー

いいよ、お昼になったら起こすから

アルバート

ありがとな

俺はオリバーの肩にもたれかかり、そっと目を閉じた

オリバー

ったく…残酷なやつだな

俺は肩にもたれてすやすやと寝息を立てている青年に目をやり、そう呟いた

ボーッとしたをしてたから、眠気覚ましにローズヒップティーにしたのがまさか裏目に出るとは

甘酸っぱい恋の思い出にあいつが泣くなんて正直に言えば全く予測出来なかった

ケイティが死んで以来ずっと悲しみに暮れているのは知っていたが、泣いたのなんてケイティの家族から死の話を聞いた時だけだった

それからは、あいつなりに俺の前では平気そうにしていてくれた

オリバー

泣かせたくは…なかったのに

オリバー

なぁ、俺どうしたらいいと思う?

オリバー

……ケイティ・マイラス

ケイティ

はぁ?オリバーと喧嘩した!?

アルバート

さっきからそう言ってるだろ

ケイティ

それで家が近くて会いたくないから急遽泊まりにきたってわけ?

アルバート

ああ、そうだ

ケイティ

何よそれー、泊まりに来てくれるーって浮足だった私はどうしたらいいわけ?恥ずかしいじゃない!

アルバート

別に大衆の前で大はしゃぎしたわけじゃないんだろ?

ケイティ

そうだけど…んもう!

ケイティ

今日はもう終電もないし、一日だけなら止めてあげる

アルバート

よっしゃー!

ケイティ

そのかわり

ケイティ

明日になったらちゃんと帰って

ケイティ

オリバーに謝りなさい

アルバート

分かったよ

ケイティ

ねぇちゃんと明日オリバーに謝れる?

アルバート

大丈夫だから、心配すんな

ケイティ

ええ、そうよね

ケイティ

あなたは良い人だもの

アルバート

ああ、そうだ

そう言って俺はベッドに横になろうとする彼女を無理やり押し倒す

ケイティ

きゃっ!ちょっと……びっくりするじゃない!

俺はそのまま彼女の言葉を無視し、彼女の唇に自分の唇を重ねる

ケイティ

…………!

ジタバタしていた彼女は大人しくなり、しばらく呆然としている様だった

その間に俺は彼女を思う存分に堪能した

肌は白く綺麗で、肩の辺りで切りそろえられた金髪は綺麗で、

彼女の唾液は、魔性の果実の如き、甘美だった

オリバー

そろそろお昼だよ

アルバート

うわあ!

アルバート

あ、いや…違うんだオリバー

アルバート

その…悪かったな

オリバー

え?何お前寝ぼけてんだよ、俺は何一つ怒ってないよ

オリバー

もう昼だから、サンドイッチ食べない?って聞こうとしただけなのにー

アルバート

悪いな、寝ぼけてた

オリバー

で、食べる?

アルバート

ああ

アルバート

それとまだ残ってたら

アルバート

ローズヒップティー、飲ませてくれ

オリバー

……………

オリバー

いいよ

オリバーは再びコップにローズヒップティーを入れて、渡す

アルバート

ありがとな

その味は、さっきのと比べると酸味が強くなかった

公園内

オリバー

やっぱ春は色んな花が咲いてるね

アルバート

ああ、そうだな

オリバー

でもハーブティーには利用できそうにないなー

アルバート

健康上の問題も考えて、ここの植物使うのはやめてくれ

オリバー

冗談だよ、さすがにこんなに綺麗な花は使えない

アルバート

まずこれ、食えるのか?

オリバー

ここ近年食べれる花とか開発してるらしいけど、さすがにこれは無理じゃない?

アルバート

ふーん

オリバー

なにー?食いたかったの?

アルバート

い、いや…そうじゃねーけど

アルバート

ただ、綺麗だなぁって

オリバー

あはは、それもそうだね!

オリバー

そうだ!少し摘んで、小さい花瓶に飾らない?

オリバー

きっと素敵だと思うんだけど

アルバート

そうだな、少し摘んでくか

もしもこの花を持っていけば、ケイティは喜ぶだろうか

だめだだめだ、もうケイティはいない

せっかくオリバーが気を遣ってくれているのに、いつまでもケイティの事ばっかり考えてしまう

アルバート

なあ、お前は…どんな花が好きか?

少しは、オリバーのためにも先の話や現在の話をしなければ

オリバー

え……俺?

オリバーは目を丸くして聞き返す

アルバート

好きな花、飾りたいだろ

オリバー

うーん、そうだねぇ

顎に手を当て、オリバーは嬉しそうに考える

オリバー

お前の選んだ花なら、俺はなんでも好きだよ

冗談っぽく笑い、オリバーはそう答えた

アルバート

なんだよそれ

アルバート

そんな事言うと、本当に俺の好みで選ぶぞ?

オリバー

それで全然いいよ、俺は嬉しい

アルバート

わかった

オリバー

ふーん、案外いいセンスしてるじゃん

アルバート

そうか?

オリバー

うん、凄く良い

オリバー

これで、リビングが少し華やかになるねー

アルバート

そうだな

アルバート

…また、公園に行かないか?

オリバー

ん?突然どうしたの?

 何でだろう、少し胸がときめく

今までケイティのことしか頭に無さそうだったアルバートが、いきなりまた公園に行きたいなんて明るい事を言い出したからか?

きっとそうだ

でも、勘違いしたらいけない

アルバートの頭の中は、ずっとケイティだ

だって選んできたあの花、全部ケイティが好きそうなんだもん

アルバートは無意識でも、ずっとケイティのことを想い続ける

そこに俺の介入出来る部分は一切ない

アルバート

いや、久しぶりに公園行ったら…楽しかったからな

オリバー

それはそうかも

オリバー

じゃあまた、公園行こうね

オリバー

俺は、夕飯の準備しようと思うから

アルバート

……早いな

オリバー

早めに仕上げて、一緒にラジオ聴きたいだけだよ

アルバート

何…聞きたい

オリバー

……お前が好きなやつなら、何でも

アルバート

…………

ラジオのチャンネルをいじっているアルバートを横目に、俺はキッチンへ歩を進めた

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