テラーノベル
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朝、目が覚めたとき。
最初に思ったのは、
雨季
だった。
ベッドの上で天井を見つめる。
昨日と同じ部屋。
でも今日は違う。
今日は学校がある。
母
母
母の声。
雨季
私はゆっくりと体を起こした。
制服は昨日、母がハンガーにかけてくれていた。
新しい学校の制服。
半袖シャツにネクタイ、紺色のスカート。
冬になればブレザーを羽織る。
まだ体に馴染まない。
鏡を見る。
高い身長、少し跳ねた茶髪、雑なポニーテール。
雨季
雨季
私は小さく舌打ちをした。
出来れば空気になりたい。
でも、転校生はそうもいかない。
朝ごはんを食べて、カバンを持つ。
雨季
家を出ると、風が強かった。
潮の匂い。
波の音。
制服のスカートが少し揺れる。
雨季
私はスマホで地図を確認しながら歩き始めた。
学校までは徒歩15分。
住宅街を抜けて、坂を登る。
坂の上に校舎が見えた。
白い建物。
校庭。
体育館。
普通の高校。
でも
私にとっては“知らない世界”。
門の前で、足が止まった。
雨季
深呼吸する。
雨季
雨季
雨季
雨季
そう自分に言い聞かせて、門をくぐった。
教室のドアの前。
担任の先生が言った。
担任
担任
雨季
雨季
ドアを開ける。
視線が、一斉に集まった。
雨季
教室の空気が少しざわつく。
クラスメイト
クラスメイト
クラスメイト
ひそひそ声が聞こえる。
私は教壇の横に立った。
先生が言う。
担任
担任
雨季
私は少しだけ前に出た。
教室の30人くらいの視線。
雨季
喉が少し乾く。
雨季
声は思ったより普通だった。
雨季
一瞬、クラスが「おお」とざわめく。
雨季
そう思いながら続ける。
雨季
それだけ言って頭を下げた。
沈黙。
先生が笑った。
担任
クラスが少し笑う。
私は席に案内された。
窓側の後ろ。
そこに座ると、すぐに人が集まってきた。
クラスメイト
クラスメイト
クラスメイト
クラスメイト
質問ラッシュ。
私は一つ一つ答えようとした。
でも
雨季
雨季
上手く言葉が出ない。
会話のタイミングが分からない。
相手の顔を見ると、余計に焦る。
結果。
沈黙が増える。
クラスメイト
雨季
気まずい空気。
クラスメイト
みんな少しずつ離れていった。
私は机に額をつけた。
雨季
人付き合い、苦手すぎる。
放課後、私は教室を出た。
今日は特別何もしていないのに、物凄く疲れている。
人の声、視線、会話。
全部が一気に押し寄せてくる感じ。
雨季
校門を出て、歩き始める。
夕方の光が、街をオレンジ色に染めている。
坂を下る。
風が強くなる。
雨季
私はふと、そっちを見た。
海岸が見える。
白い砂浜。
波。
そして
人影。
雨季
目を細める。
誰かがいた。
海辺で。
雨季
風に揺れる、長い黒髪。
スカートがくるりと回る。
歌声が、波の音に混ざって聞こえてきた。
透き通る声。
知らない歌。
でも、不思議と耳に残る。
私は足を止めた。
その子はクルクルと回りながら、 海に向かって歌っていた。
楽しそうに。
自由に。
まるで、世界に一人しかいないみたいに。
夕日が髪に当たって、黒が赤く光る。
制服は見たことの無い色だった。
水色と白のセーラー服。
雨季
でも。
そんな事どうでも良かった。
私はただ、その光景に見入っていた。
歌声。
波。
風。
そして
海辺で踊る、あの子。
胸の奥が、少しだけ揺れた。
理由は分からない。
でも。
目が離せなかった。
その時
その子がふとこちらを向いた。
雨季
黒い瞳。
一瞬、視線が合う。
心臓が大きく鳴った。
けれど
その子は、首をかしげて言った。
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