花奏
今年のクリスマスはいつもよりついてない日
風邪も治ってないし、外になんて出れるわけないし、ケーキもご飯も家族とだし、置いてあったプレゼントはあたしに喧嘩打ってんのかって感じの参考書とかだし
そんなの見ただけでさらに熱が上がりそう
体温計で熱を測る
昨日は珍しく怖い夢は見なかった
熱が下がった証拠かな、なんて考えていると
ピピ、ピピッツ
体温計が鳴る
花奏
だいぶ下がってきたかな。 確かに今日は頭もそんな痛くない
もうひと眠りしようと思ってベッドに入ると、ピンポーンとチャイムが鳴った
さすが沙友里、ナイスタイミングだよ
一階がなんだか騒がしくなる
目をつむったまま沙友里が来るのを待つ
お母さんの声がだんだんと近づいてくる
お母さん
お客さん? 沙友里が来るときは沙友里ちゃんよっていうはずなのに
花奏
花奏
こんな時女の子らしい声を上げることのできないのがあたし
花奏
もうあたしとかかわることのないはずの澤本君が今あたしの部屋にいる
蓮
花奏
花奏
蓮
澤本君はあたしも質問にはお構いなしであたしのおでこに手をのせる
蓮
花奏
ち、近い!
花奏
澤本君から距離をとって改めて澤本君にたずねる
澤本君はあたしを真正面に捉えると、ひょうひょうとした顔で言った。
蓮
花奏
花奏
蓮
蓮
澤本君は本当に申し訳なさそうにあたしを見る
花奏
花奏
花奏
そこまで言うと熱のせいなのかなんなのかわからないけど、涙がポロポロとあふれ出した
花奏
そういった時にはすでにぐちゃぐちゃで涙を流していた
そんなあたしを澤本君は黙って頭をポンポンと手を置いた
蓮
花奏
蓮
澤本君はいつも無表情の人形みたいなのに今はすごく優しく微笑んでいる
その表情が今まで見たどの表情よりも優しくてそんな顔を見せてくれた澤本君に驚いてあたしは、さらに涙があふれた
花奏
花奏
蓮
なにかを考えるように言葉を切った澤本君がそんなことをいった。
花奏
蓮
花奏
蓮
花奏
さっきまですごく優しい笑顔だった澤本君はいつの間にかいつも通りの意地悪な彼に戻っていた
蓮
花奏
澤本君の言動であたしが自分の部屋でパジャマを着て人様になんて会えるような格好だということに気が付いた
花奏
花奏
花奏
蓮
そんなことを言っている澤本君をへやに残して慌てて洗面所に駆け込む
前髪の癖をとって、せめてもの思いで肌を整えてうなだれながら部屋に戻った。
花奏
蓮
花奏
蓮
花奏
何のことかわからず澤本君を見る
蓮
あたしの部屋でまるで自分の部屋のようにくつろぐ澤本君があたしを見据えた
花奏
蓮
花奏
蓮
花奏
澤本君はにっこり笑っている。 でも、この笑顔はさっきの笑顔とはまた別な悪魔なような笑顔
蓮
花奏
口では、すごくいいことを言っているけど
こ、これは…
蓮
はあああああ!?
そんな言葉とともに澤本君はあたしの腕をひいて引き寄せる
あたしだってばかじゃない。 これと同じことを経験したし、小説で読んだことあるもん
花奏
花奏
花奏
蓮
花奏
蓮
慌てているのはあたしだけで一人だけ涼し気な顔でこちらを見ている
蓮
花奏
蓮
そんな言葉を言い切る時には腕の中につかまっていたあたしの唇に柔らかいものがふれていた
こんな風にキスするのはもちろん初めてで、心の中では大混乱
これ何回!?いま何回目!?
頭の中がぼんやりしていて数なんて数えられなくなっていた
しかも下には家族がいるのに!!
蓮
花奏
蓮
蓮
そんな予想もしていなかったことにびっくりした。
そしてあたしが言ったあの言葉を澤本君は気にしていたってこと
花奏
蓮
花奏
蓮
蓮
花奏
花奏
もう勘弁して…!
病み上がりで恋人がいたことないあたしには刺激が強すぎる!
蓮
不思議なのは、それだけじゃない。
なぜか今もまだ。 澤本君の腕の中
無表情でひょうひょうとしている癖に妙に子犬みたい
蓮
花奏
一人で考えていると澤本君が差し出した。
男子から(しかも結構なイケメン男子から)初めてプレゼントをもらった
蓮
花奏
初めてのプレゼントにあたしは完ぺきに舞い上がった。
ただし、あたしにプレゼントをくれたのがあの澤本君だと思わず