死神
お前の命を貰いに来た
栄子
早いね
死神
早い?ハッ!一日なんて早いものだろう?
栄子
あー確かに
死神
それじゃあーー
死神
よう、俺は死神だ
栄子
……はぁ?なに、痛いヤツ?
死神
いや、痛いヤツじゃなくて本物だ。ほ・ん・も・の!!
栄子
いやいやいや、今時期死神なんて、いるわけないでしょ
死神
この大鎌が見えねぇのかよ!
栄子
偽物でしょ?
死神
本物だ!
栄子
じゃ、警察呼んで銃刀法違反でさしだすか
死神
呼んだって無意味だが。ってかもうめんどくせぇ……
突然栄子の携帯がヴヴヴと震え、着信音が短く鳴り響く。
栄子
通話
23:59:59
栄子
え、こんなに長い電話したことないけど
死神
俺がやった。んで、その通話時間がお前の寿命だ。
栄子
はぁ?意味不明なんだけど
死神
なら一日待ってみろ。お前は死ぬ
栄子
断じて死なないし。死ぬ気もない
死神
そんなに言うなら半日にすんぞコラ
栄子
はいはい、で?私の寿命とやらはどうやって確認するの?通話の時間なんて固定でしょ?
死神
普通に残りの寿命を教えてください死神様って言ってくれれば教えるぞ。
栄子
あー、はいはい、じゃあ残りの寿命教えて痛神
死神
おいコラ
再び携帯が震え鳴り響く。それは残りの寿命を知らせる音だったようだ。
栄子
通話
23:59:17
栄子
ワォほんとに減ってる。でも数秒って……草生えるわぁ
死神
やっぱお前の寿命半分にしてやろうか……あぁ!?
栄子
ねぇ痛神。短気って言われたことない?
死神
言われたことあるがって関係ねぇだろ!?
栄子
はいはい、ところで寿命の伸ばし方とか、死因とか教えてくれない?
死神
あ?お前みたいな生意気な女に教えるこったぁねぇよ
栄子
そ、新人の痛神だものね
死神
だぁぁぁぁ!お前うぜぇ!
死神
はぁ……いいか?一度しか言わないぞ。
死神
寿命の伸ばし方だが。そんなのあるわけねぇ。現実見やがれ
栄子
へぇ〜
死神
死因は心筋梗塞だ
栄子
へぇ〜
死神
いや、少しは驚けよ!怖がれよ!
栄子
だからなに?
死神
だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!ちょっとは自分の身体を気遣えよぉぉぉぉ!
栄子
いや死神がそんなこと言う?
栄子
あ、そうだ!皆に痛いヤツいるって広げよっと
死神
おい待て止めろ
と死神が言った時には栄子はカメラで、目の前を写真に収める
死神
ぎゃぁぁぁぁ!撮られたァァァァ!
栄子
撮られて何か減るものでも……って写ってない……え、どういうこと……?
死神
……だから言ったろ死神だって。これで信じたかクソ野郎。さぁて今までやられた分寿命減らしてやろうかなぁ!?
栄子
ごめんなさい。二度としません
死神
わかればいい!
栄子
なんて言うとでも思った?
死神
……はぁ!?
栄子
まぁ、正直なところ痛神は本物の死神なのはどうでもいいし
死神
おい待て
栄子
ただ、自分の命はあと一日ってのはねぇ……あ、今の寿命どれくらい?
と言った途端、携帯が鳴り響くと同時に彼女の心臓はドクンっと強く、胸が苦しくなるくらいに脈を打つ。
だが、彼女は気に止めることは無かった。
栄子
通話
23:57:47
栄子
これだけ残ってるなら好きなことやっていいよね
死神
まぁ、それは構わんが
栄子
んじゃとりあえず痛神はどっか消えて
死神
てめ……俺の扱いひでぇなおい。そんなんだと友達とかできてねぇだろ
栄子
うっわぁ〜痛神が一丁前に私の事を詮索してる〜……キモッ
死神
キモって……
栄子
あと言っておくけど、偏見やめて。私だって友達いるし。だから痛神は新人だって言われるんだよ
死神
言われてねぇよ!?てか俺は思ったことを言ったまでだ!
栄子
死神のくせに他人のこと心配するとか草しかないわー
死神
あーコイツ今すぐにでも殺してぇ……
栄子
やれるものなら
死神
……とりあえずだ、明日のこの時間帯にお前の命を貰う。それまで残された人生を楽しむこったな!
栄子
はいはい、ちなみに寿命どんくらい?
死神
お前……案外気にしてんじゃねぇか!
栄子
悪い?
死神
別に悪くは無いけどよ……そんなにしょっちゅう聞いてもさほど変わらねぇぞ?
栄子
そう?痛神が予告してから大体二分はたったと思うけど
死神
細けぇな!
栄子
うるさいな。用済んだなら早くどっかいってよ
死神
へいへい
栄子
……はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……あと1日かぁぁぁ……
優花里
やっほぅ!
栄子
あ優花里〜元気〜?
優花里
栄子こそ元気〜って元気なさそうだね?なんかあった?
短い溜息を付いていると栄子の前に一人の女性が現れた
栄子
それがね〜私あと1日なんだって
優花里
え、本当?
栄子
そう。なんか死神?がでてきてそう言われたー
優花里
えぇぇぇ!!そんな……急すぎるよぉぉぉ……
栄子
でもあと……23時間は確実にあるからまだ余裕だよ
優花里
えぇぇぇ……でも流石栄子……こんな時でも強気って凄い……
栄子
強気でないと自分が保てなさそうだからね。そうだ優花里、頼んでたやつ持ってきた?
優花里
え、あー、これであってる?
栄子
そうそう電気作るのにレモンと銅板あればってなんでそんなもの持ってんの?そもそも頼んだやつじゃない
優花里
あ、じゃあこれ?
栄子
そうそう、丁度お腹すいててって私は猿か!……まぁ貰うけど。それで頼んでたやつは?
優花里
それじゃないならこれ?
栄子
それそれ。探したんだけど売ってなくてね。優花里が持ってるって言った時は驚いたよ
優花里
まぁ私もミステリー小説好きだからね〜……あ!もうそろそろ行かないと……栄子、死なないでよ?
栄子
もちろん
その言葉を聞いて安心したのか、一度しまったレモンを渡しその場をあとにする
栄子
……本当は怖いんだよ……なんて弱音、友達の前では吐けないな……さてと早速読んでみよっと
栄子
明らかに……苦しいのがわかる……残りの寿命どれくらい……?
栄子
通話
10:37:42
栄子
後10時間……それまでこの辛さと……戦わないといけないの……?
死神
あぁ、その通りさ
栄子
げ、痛神
死神
お前可愛げねぇな!?
栄子
失礼ね
栄子
で何か用?
死神
ただ様子を見に来ただけだ。
栄子
へぇ、女の様子をどこからか見るのが趣味なんだ
死神
お前みたいな可愛げねぇやつの様子なんざ見たかねぇよ
栄子
ふ〜ん。まぁいいけど。それじゃおやすみ
死神
お、おうって寝るのかよ!?
栄子
本読み終わったしやることないから
半日を切った辺りで心臓に激しめの痛みが生じており、死が目の前に迫る。
だからこそ堪えきれず涙を流すのだが、決して人前では見せたくなく布団に潜ったのだ
死神
へいへい。んじゃまた後でな
再び死神が消えるのと同時に、彼女は静かに涙を流して眠りにつく。
栄子
残りの……寿命
栄子
通話
10:22
栄子
あと10分……嫌だ……死にたくない……
死神
漸く本音がでやがったな
栄子
あ、痛神。なんかよう?
死神
本当に可愛げねぇな……さっきの苦しい表情が嘘みたいだぜ……
栄子
じゃあ嘘……とは言えないね……
死神
だろうな。もう時間になる
栄子
早いね
死神
早い?ハッ!一日なんて早いものだろう?
栄子
あー確かに
死神
それじゃあ、本当にお前の命を貰うぜ?
栄子
勝手にどうぞ。こんな“寝たきり”の人生クソ喰らえだったし
実は彼女は不治の病を患っており、死神に余命宣告される以前からずっと自宅療養していた。
故に彼女はベッドで寝ている。それもトイレ以外ではベッドから出たことなど一度たりともない。
死神
……お前、本当は悲しいんじゃねぇか
栄子
……はぁ?何言ってんの。悲しくなんてないし
死神
口ではそう言っててもよ
鎌を彼女に突き刺そうとした刹那。彼女の瞳から涙が溢れ出ていた。
死神
涙が流れてんだよ
栄子
は、はぁ?そんな事……ありえない……し
死神
ハッ!そんなぐちゃぐちゃな顔なのによく強気でいられるな!お前の感情はバレバレだ
栄子
……だって……だってしょうがないじゃん!私だって死にたくないし、こんな寝たきりの人生で終わるなんて本当は嫌なんだよ!
それにまだやりたいことだって……
死神
まだやりたいことって……あのなぁ一日の猶予与えただろ
栄子
一日なんて早い。そういったのは死神でしょ!
死神
あ、あーそういえば言ったか。だが、だからなんだ。今更になって寿命を伸ばして欲しいってか?とうとう馬鹿になったか?
栄子
そんな事言ってないし馬鹿じゃない!
死神
そうか、なら俺は心置き無く殺れるってことだ!
栄子
待って!
死神
待たねえ
栄子
お願い!
死神
嫌だ
栄子
最後に言いたいことがあるの!
死神
聞きたくねぇ
栄子
死神にしか頼めないことなの!
死神
だぁぁぁぁ!聞きたくねぇってんだろうがァァァ!
栄子
お願い……だから……もう時間ないのも知ってるし……これが最後だから……!
死神
はぁ……でなんだよ
栄子
私が死んで……次の人生になったら……普通の人として生きさせて……
死神
……そんな事かよ。聞いて損したぜ。あばよ
死神
ったく、死神にそんなこと頼んだって無意味だっての……はぁ仕事が増えるなぁクソ……
栄子
あ!優花里先生!
優花里
どうしたの?栄子
栄子
んとね、この教科でわからないことがーー
栄子は栄子であり、不治の病を患った栄子では無い自身へと生まれ変わっていた。
死神
……全く世話かけやがって……あばよ栄子