翌朝、教室の窓から差し込む朝日がまぶしい。
咲は席につきながら、ふと頬を押さえた。
咲
ステージに立つ哲汰の姿、会場を揺らす歓声、 まっすぐに届いた彼の歌声。
思い出すたびに胸が高鳴って、 つい笑みがこぼれてしまう。
哲汰
咲
すぐ隣の席に座った哲汰が、 にやりと笑ってからかう。 そっぽを向きながらも、咲の頬は熱かった。
昼休み、咲が廊下を歩いていると、 見覚えのある男子が近づいてきた。
男子生徒
咲
男子生徒
そう言われて、咲はなんとなく断りきれず、 ついていってしまった。
向かったのは、使われていない旧校舎の一室。 薄暗く、静かな教室。
中に入った瞬間、ドアが後ろで閉まる音がした。
咲
咲が距離を取ろうとすると、 男子はゆっくりと距離を詰めてくる。
男子生徒
咲
男子生徒
その目は、興奮とも歪んだ好意ともつかない 色をしていた。
咲
咲が下がろうとすると、男子はその手を掴む。 そして、強引に体を近づけ――
男子生徒
耳元で囁きながら、彼は咲のシャツのボタンに 手を伸ばし、唇を重ねてこようとする。
その瞬間、 咲の頭にフラッシュバックしたのは―― 前に、夜の公園で声をかけられた、 あの時の“恐怖”。
全身が凍りつく。 喉が締めつけられ、声が出ない。 涙が、勝手に滲む。
咲
震える指先。息も詰まりそうなほどの恐怖。
そのとき―― ドアが、勢いよく開いた。
哲汰
目を見開き、男子を一瞬で突き飛ばす。
哲汰
静かな怒鳴り声が、教室を貫いた。
咲はその場に崩れ落ち、 哲汰がすぐに駆け寄って抱きしめる。
哲汰
咲
彼の手のぬくもりに、初めて声が漏れた。
哲汰は咲を強く抱きしめ、震える彼女の肩を 優しく包み込みながら、静かに誓った。
哲汰
その声は震えていたけど、心からの言葉だった。
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