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nmmn注意⚠️ キャラ崩壊注意⚠️ 誤字脱字注意⚠️ 警察官パロ⚠️ 黄様若干翠様に嫌われ⚠️ 敬称に違いあり⚠️ 赫様の父親出てきます⚠️ パクリ禁止⚠️
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12,優しさは罪か、それとも抵抗か
第六刑務州の夜は、昼よりも静かで、音さえも凍るように沈んでいた。
通路を流れる冷気が、壁の鉄をなぞるたび、かすかな音を立てて消えていく。
その夜、夏希は見回りをしていた。
本来なら須智の担当だったが、体調不良という報告を受け、代わりに夏希が巡回に立っていた。
無機質な廊下を歩く。
監視灯が規則的に瞬き、白と影が交互に足元を照らす。
いつも通りの、何もない夜になるはずだった。
——はずだったのに。
背後から、小さな声がした。
夏希は思わず肩を跳ねさせたが、すぐに冷静を装って振り向いた。
独房の中、鉄格子越しに美琴が立っていた。
淡い光が頬を撫で、彼の瞳を細く照らす。
夜の闇の中でも、その表情はどこか柔らかかった。
夏希の声は、いつもより低く響いた。
美琴は少し躊躇いながら、唇を動かした。
言葉は細く、頼りなく、まるで壊れやすい硝子のようだった。
いつもの夏希なら、即座に返す言葉は決まっている。
——眠れなくても明日は来る。
——休めないなら、それは自分の問題だ。
そう言って終わらせていた。
だが、今夜は違った。
心のどこかで、何かが引っかかった。
予想外の言葉に、美琴は瞬きをした。
夏希は無言で鍵を取り出し、独房の扉を開いた。
金属の軋みが、夜気を裂いた。
夏希は淡く笑い、顎をしゃくる。
美琴は戸惑いながらも、ゆっくりと歩み出た。
鉄の冷たさを抜け出す瞬間、胸の奥がわずかに熱を持った。
談話室は古びていた。
壁の時計は止まり、テーブルには薄く埃が積もっている。
薄明かりだけが、沈黙を照らしていた。
夏希が指差す。
少し硬めのソファに美琴が腰を下ろし、夏希も向かいに座った。
しばらく、沈黙が落ちる。
時間の感覚が失われ、互いの呼吸だけが音になる。
美琴が口を開いたのは、数分経ってからだった。
夏希はふっと笑い、天井を見上げた。
その声は、まるで誰かへの遺言のように静かだった。
——俺の父親は、警察官だった。
名前は暇井夏都(いとまいなつと)。
小さい頃から、ずっと父さんの背中を見て育った。
警察としては厳しくて、部下からは鬼教官って言われてたけど、家じゃ誰よりも優しかった。
休みの日なんて、俺が「遊びに行こう」って言えば、どんなに疲れてても連れてってくれた。
公園、水族館、夜のドライブ。
どれも、俺の宝物みたいな記憶だ。
父さんはいつも言ってたんだ。
『正義ってのは、怒る時は怒って、人を守る時は守る優しい人のことだ』って。
——でもな。
俺が高校生の時、父さんは死んだ。
事件だった。
デパートの爆破テロ。
予告状が届いてて、父さんは朝から現場警備にあたってた。
爆発の瞬間、父さんは犯人を見たらしい。
防犯カメラの映像に、笑ってた男が映ってた。
外に出て、少し離れた場所から——起爆スイッチを押したんだ。
その笑顔が、今でも頭から離れねぇ。
被害者はおよそ二十万人以上。
数え切れない被害者の中に、父さんもいた。
電車の中でニュースを見た瞬間、気づいたら現場に走ってた。
焦げ臭い匂いと、煙と、泣き声。
その足元に、赤い宝石のネックレスが落ちてた。
父さんが、職場に内緒でいつもつけてたやつだ。
それが、唯一残った遺品だった。
あの日、誓った。
——絶対に捕まえて、苦しめてやるって。
でも、七年経った今でも捕まってねぇ。
証拠もある。
DNAも残ってる。
それでも、届かねぇ。
……俺が、無能だからだ。
父さんの言葉が、いつも頭の中で響く。
『優しい人になれ』って。
でも、俺はもう分からねぇんだ。
——優しさってのは、罪なのか?
それとも、抵抗なのか?
犯人を恨み続けて、怒りに生きることも“正義”なのか?
それとも、そんな自分を赦せないことこそが、俺の罪なのか?
……なぁ、“美琴”。
お前は、どう思う。
長い沈黙。
美琴は、俯いたまましばらく動かなかった。
やがて、ゆっくりと顔を上げた。
その声は震えていたが、確かな温度を持っていた。
夏希の眉がわずかに動く。
美琴は続けた。
言葉を終えたあと、二人の間に再び静寂が落ちた。
その沈黙は、痛みでも、悲しみでもなく——ただ穏やかだった。
夏希は息を吐き、僅かに笑った。
声がかすかに震えていた。
やがて、夏希は目を伏せて呟く。
美琴の微笑みに、夏希もふっと笑う。
夜気が少しだけ柔らかくなった。
夏希が立ち上がり、鍵を手に取る。
廊下の先、うっすらと青い光が差し込み始めていた。
二人の足音が響く。
それは秘密のような時間だった。
誰にも知られず、記録にも残らない——ただ、心だけに刻まれる夜。
扉を閉める前、美琴が小さく呟いた。
夏希は立ち止まり、少しだけ振り向く。
その言葉は、夜明け前の風に溶けて消えた。
静かな夜が終わりを告げる。
遠くの空に、一筋の光が走った。
12・了
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𝙉𝙚𝙭𝙩 ︎ ⇝♡120
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コメント
7件
初コメ失礼します! 書き方めっちゃ上手いですね!私も上手くなりたい…!
めっちゃ♡ついてる! それほど神だってことやね笑 まさか予言みたいになるとは思わなかった😅