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テラーノベルの小説コンテスト 第3回テノコン 2024年7月1日〜9月30日まで

メイ

美味しかったあ!

メイ

やっぱりあそこのアイスは美味しいねえ

クロ

…そうか

クロ

良かったな

メイ

本当は晴れの日に食べたかったけどね

クロ

まあ、梅雨だしな…

雨の雫がぱつぱつと傘に跳ねる。

俄雨だと思っていたそれは、思ったよりしっかり降っていた。

メイ

髪の毛がくねくねだ…

メイ

雨自体は綺麗なんだけどなあ…

クロ

誰も見てないから大丈夫

メイ

…それ、ちょっと聞き捨てならないかも

アイスで身体を冷やしたせいか、

余計にじめじめした空気を感じる。

やっぱり、梅雨は苦手。

行き交う人の足音が水を纏ってぴちゃぴちゃ音を立てている。

喋り声と相まって、まるで音楽みたいだ。

メイ

(いい音…)

クロ

…メイ

メイ

…どうしたの?

クロ

なんか聞こえないか?

クロ

鈍器の音…ごん、って

メイ

……あっ、本当だ

人々と雨が奏でる音楽に、雑音が入った。

重いもので何かを殴る、鈍い音。

不謹慎なその音に、少し不快感を覚える。

メイ

どこから?

メイ

…路地裏?

クロ

多分

クロ

あっちの裏だ

メイ

覗いてみようよ

クロ

…はあ?

クロ

いやいやいやいや、だめだって

メイ

助けて欲しいのかもよ!

クロ

どう考えたらその解釈になるんだよ…

クロ

とにかく行くな─

クロ

あ、!

─確かに、ここは少し治安が悪い道だ。

でも、僕はほっとかないぞ。

音の出処に向かって雨の中、

僕は走る。冷たいけど。

メイ

薄暗い…

クロ

…なんでこんな所に……

メイ

仕方がないよ

メイ

だってほっとけないもん

クロ

その向こう見ずな言動早く直してくれ…

箱やごみ箱に隠れながら、辺りを探してみる。

すると、クロが何かを視界に捉えたようだ。

驚愕した表情を浮かべて、手招きの動作をする。

メイ

誰かいたの?

クロ

……先輩

メイ

…え、!?

顔を出してみると、確かに見覚えがある黒髪。

伊織

…は、ッふう、

辛そうに顔を歪めている。

返り血が付いている先輩の足元には、血溜まりができていた。

足元には、…人?

クロ

…人が、死んでる……?

メイ

え、えぇ、っ

メイ

─ぎゃ、!?

今日星座占いで最下位だったのは、 こういうことだったかもしれない。

屋根から垂れた雨の水滴が、 運悪く僕の頭のてっぺんに落ちたのだ。

伊織

!?

クロ

(おいおいおい何をしてるんだよメイ!!)

メイ

(しょうがないじゃん!!星座占いに言え!!)

伊織

─…誰?

ひそひそと話をしていた僕らに、 血が付いたパイプが向けられる。

目がばっちり合ってしまった伊織先輩は目を丸くした。

伊織

…あっ、お前、!?

メイ

…ご無沙汰シテマス……

クロ

…ゴメンナサイ……

伊織

…あ"ー……だっる

伊織

なんでお前らまで─

…伊織先輩が、膝から崩れ落ちた。

息が荒くなっている。

メイ

…熱、あるのかな……?

クロ

え、大丈夫…なのかこれ!?

伊織

…最悪……

伊織

…頭痛い

メイ

…運ぼう、クロ

クロ

了解

クロ

だけどその前に、血を何とかしないか?

メイ

ハンカチあるよ

メイ

先輩立てる?

メイ

雨で濡れちゃう、身体冷えるよ

メイ

─よし、まあこんなとこかな

クロ

…よいしょ、っと

部屋の時と同じ、香水の甘い香りがした。

ぐったりとクロに寄りかかる先輩は、もう寝てしまっている。

クロ

軽っ

メイ

そんなに?

クロ

ちゃんと食べて─

メイ

ないね、絶対に

メイ

雨ひどくなってきた…

メイ

僕らも風邪ひいちゃう

メイ

行こう

クロ

行くか

伊織先輩の額に手を当ててみる。

雨と熱のせいで、

冷たいのか熱いのか、よく分からなかった。

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