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夜も街は驚く程に静かだった。
大学の課題に追われ、気がつけば深夜二時を過ぎていた。
冷蔵庫の中はほとんど空っぽ。
私は仕方がなく、パーカーのまま近くのコンビニへと歩いていた。
深夜のコンビニには、
いつものように酔っ払い客が数人いるかと思ったけれど
その日は珍しく店内がほぼ無人だった。
蛍光灯の冷たい光と
レジ前に流れる機械的なBGMだけが空間を支配している。
ーーその時、視界の端っこに映った人影に、
私は思わず足を止めた。
黒いマスクに深く被ったフード。
フードを被っているから、顔はほとんどみえない。
けれどシルエットに、私は心臓が跳ね上がった
画面の向こうで何度も見てきた姿。
動画で、ライブで、歌声に心を揺さぶられてきた、あの人。
ーーまさか。
いや、そんなはずはない。
人気歌い手で数万人を前に歌う人が、
こんな住宅街のコンビニにいるはずがない。
頭の中で否定しながらも、
私の胸はざわめいていた。
彼はドリンクの棚の前で立ち尽くし
ペットボトルを手に取ろうとしては引っ込めて
また違うものを眺めている
その仕草が妙に人間臭くて、
余計に現実感を与えていた。
霊華
気づけば声をかけていた。
自分でも信じられない。
話しかけるなんて 、
変に干渉するつもりはなかったのに。
目の前の彼はふりむき、 マスクの奥から少し驚いた声を上げた
まふまふ
霊華
我ながらに変な質問だった。
けれど彼は一瞬きょとんとした後、 小さく笑ったように目元を緩めた。
まふまふ
まふまふ
霊華
霊華
いいながら、私は直ぐに後悔した
こんなにも自然に話していい相手じゃない。
けれど彼は以外にも真剣に聞いて、 棚から私が言ったものを取り出した。
まふまふ
その一瞬ほんの一瞬だけど、 彼がたしかに“まふまふ”だと分かってしまった。
声、話し方、独特の間。
それは私が画面越しにずっと聞いて来た歌声と 同じ響きを持っていた。
胸の中で叫びそうになる気持ちを必死に抑える。
リスナーだと知られたら、 きっと彼は距離をとるだろう。
だから私は、 「偶然出会った人」
そうでいなきゃならない。
まふまふ
霊華
まふまふ
他愛のない会話。 だけど心臓がうるさいくらいに鳴っている。
レジを済ませて外に出ると、 彼は私の歩く方向とおなじ道を進んだ。
まふまふ
霊華
まふまふ
偶然の一致にまた胸が騒ぐ。
夢みたいだ。
道すがら、彼はぽつりと話をしてくれた。
最近夜型生活が直らないこと、 締切に追われていること、眠れない夜が多いこと。
それは、表向きでは絶対に語られないであろう “素顔の彼”のだった。
別れ際、彼は少し緊張するようにして言った。
まふまふ
その言葉に、 私はただ頷くことしか出来なかった。
それから数日後。
再び深夜のコンビニで、彼と偶然出会った。
彼は、私に気付くと少しほっとしたように笑った。
そこからは早かった。 短い言葉を重ねる度に、
不思議と距離が縮まっていった。
私は絶対にリスナーであることを言わなかった。
彼にとって私はただの 「近所の女の子」 でなければならない。
ある夜、ベンチで缶コーヒーを飲みながら、 彼がぽつりとこぼした。
まふまふ
まふまふ
霊華
霊華
気づけば見つめあっていて、 胸が熱くなる。
沈黙が長く続いた後、 彼が不意に視線を逸らし、低く呟いた。
まふまふ
私は息を飲んだ。
返事をする間もなく彼が、 「ごめん、変なこと言っちゃったね」 と笑う。
その夜、別れ際に差し出された彼の手を。
まふまふ
霊華
私は自然に握っていた。
その返事で、世界が変わった気がした。
彼の正体を知りながら、知らないフリをして。
ただ「彼自身」を愛するために、
私はその秘密を、胸にしまい込んだ。
お久しぶりでございます。。。
最近は別に小説を書いている訳でも読んでる訳でもなく ただただ、Twitterに蔓延っております⋯、、
久しぶりに書いてるのでだいぶ文才とか落ちてると思うんですけど、 あとみっつくらい?物語続く予定なので、良ければ見届けて頂けると⋯!!