史記
ベッド、ひとつしかないんだけど……
楓弥
ふたりで寝ればよくないですか?
史記
えっ、マジで言ってる?
楓弥
……今日のふみくん、わかりやすい
史記
…なにが
楓弥
全部顔に出てます
史記
……俺の負けだわ
ベッドの中、毛布の下で触れてる肩と肩。
何も言わないまま時間が流れて――
ふと、楓弥がぽつりとつぶやいた。
楓弥
……今日、雨降ってくれてよかったです
史記
……なんで?
楓弥
…ふみくんのこと、もっと好きになれたんで
心臓、止まるかと思った。
史記
……ずるいな、そういうの
楓弥
ふふ。おやすみなさい、ふみくん
史記
……おやすみ、楓弥
この夜は、ずっと忘れられない気がする。
降り出した雨がくれた、一番大事な時間。