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紫
紫
「余命宣告」
ドラマの中の話だと思ってた
俺には関係ないって思い込んでた
それなのに、俺は先程余命半年と言われてしまった
正直、ショックを受けている訳ではない
2ヶ月前に突然胸が苦しくなって倒れてから
色んな検査をして"すい臓がん"とお医者さんに言われて
その頃にはもうステージ4
発見が遅れたのと様々な臓器に転移していたことで、体調はみるみるうちに悪くなっていたし
やっぱりか
っていうのが強かった
お母さんもお父さんも泣いてたし、学校へ行けないのは少し寂しいけど
不思議と絶望感みたいなものはなかった
ただ、
紫
たくさん薬を飲んで寝て診察受けて
またたくさん薬を飲んで寝て診察を受けて
たまにお母さんやお父さんと話して
変わり映えしない
紫
こんこんっ
紫
看護師さん
…と、車椅子に乗った男の子
赤髪の小さなその子は俺と目が合うと優しく微笑んだ
紫
赤
紫
屈託のない笑顔
赤
紫
初めて入院したときのことなんて覚えてない
すごく体が弱い俺は何度も入退院を繰り返してて
それこそ生まれてまもない時から高熱出したり喘息の発作起こしたりで人生のほとんどを病院で過ごしてきた
お母さんもお父さんもすごく心配してくれてた
2年前、癌にかかるまでは
癌ですって言われて
色んな痛くて苦しい治療受けて
何回も死にかけて
なんで俺だけって思ってた
余命があと3ヶ月って言われた時は
やっと死ねる
とか思っちゃったりして
その頃にはもうお見舞いにも来てくれなくなったお父さんとお母さん
どんどんやせ細る俺を見ていられなくなって逃げた
別にいいよ、いいけどさ、
赤
こんこんっ
赤
赤
赤
知ってるよ
余命僅かな人達が集められる病室
本来は一人部屋になるはずだけど俺はお見舞い来ないしね
赤
赤
最近は歩くのが辛くなってきたから車椅子に乗せてもらって上の階の病室へ移る
赤
もう看護師さんともほとんど家族
お母さんより信頼できるときもあるくらい
赤
赤
赤
紫色の髪の男の子
高校生くらいかな
痩せてるけど綺麗な顔立ち
パチッ
目が合う
赤
笑いかけると少し困ったように眉を下げる紫くん
紫
赤
紫
不安そう
困ってるかな
赤
紫
看護師さんが忙しそうに去っていく
赤
紫
紫
赤
紫
赤
紫
赤
赤
紫
赤
赤
紫
赤
紫
ふわりと笑うその顔から目が離せない
これが一目惚れってやつか
紫
赤
紫
反応困ってる
変なこと言っちゃった
びっくりして変な反応しちゃった
かっこいい、なんていきなり言うんだもん
赤
赤
紫
赤
紫
余命はあと半年、とは言わなかった
赤
明るいのにどこか寂しそうな表情をする
紫
赤
赤
俺も、なんて言えない
今までなんで俺ばっかりなんて思って
俺よりももっと辛い子なんてたくさんいることに気づけなかった
紫
赤
赤
紫
赤
赤
赤
赤
紫
赤
紫
赤
紫
赤
紫
紫
紫
赤
今にも泣きそうな顔をする君
自分だって死んでしまうのに
初対面の俺なんかを心配しているの?
紫
紫
赤
紫
紫
赤
赤
紫
紫
紫
赤
赤
紫
赤
それから1週間
俺たちは仲を深めた
赤くんは学校へ行っても授業を受けることはほとんど叶わなかったこと
どこへ行っても薬が手放せなかったこと
俺の部活の話
勉強を教えたりもした
ある意味世間知らずな赤くんは俺の話に目を輝かせて熱心に聞いてくれたし
俺は赤くんを絶対に海に連れていくべく計画を立てていた
紫
赤
今、俺たちは全財産と数着の服、大量の薬だけを持って病院から出た
赤
赤
そう言って笑う赤くんの顔はその言葉とは裏腹に清々しい表情だった
紫
赤
紫
赤
赤
紫
赤
赤
夜行バスに乗ってすぐに眠ってしまった赤くんはまだ眠そうだ
赤
紫
紫
赤
赤
紫
紫
紫
紫
赤
不服そうだ
病人だということを知られるのがあまり好きではないのだろう
赤
紫
スマートフォンは病室に置いてきた
GPSですぐにバレるだろうし
何より連絡を気にするのが嫌だったから
紫
紫
紫
赤
結局電車の中で体調を崩して途中下車したり
休み休みで進んだりして
ホテルに着く頃にはもう暗くなってしまった
少し元気がなかったように見えた赤くんは広い部屋にはしゃいでいる
赤
紫
紫
赤
赤
紫
赤
赤
紫
紫
紫
赤
この様子だとはしゃぎすぎてなかなか眠れないだろうな
赤
こんなに楽しい日は初めてだ
赤
調子はいいけど眠らないと明日に響くよなぁ、
紫
赤
紫
赤
赤
紫
赤
泣いてる
赤
赤
紫
紫
紫
自分だって苦しいのに俺の心配なんかして
寝ぼけてるしきっと明日には忘れているんだろうな
赤
紫
赤
赤
紫
赤
まだ眠そうに目を擦る赤くん
紫
赤
紫
赤
バスに乗って海に向かう
水着はホテルの近くの店で買った
紫
赤
紫
赤
良かった、体調が良さそうだ
バスを降りると目の前には海が広がっている
赤
紫
すぐに駆け出す赤くんをなだめつつも内心数年ぶりの海に少しテンションが上がる
赤
紫
赤
紫
体力が無くなっている俺たちは泳ぐことができなかったけど
俺たちは最後の海を存分に楽しんだ
紫
赤
紫
紫
赤
紫
赤
紫
赤
赤
紫
遊園地で乗れるアトラクションは少ないし
何度も発作を起こしたりして大変だったけど
赤くんも俺も最後まで笑顔だった
それから3日間、俺たちは色んな所へ行った
紫
赤
紫
赤
赤
赤
紫
紫
赤
何回も発作を起こしたし苦しかったけど
俺たちは後悔しないためにやりたいことをした
でも、"ずっと"なんてなくて
赤
紫
赤
俺たちのお金が尽きてきた頃
警察官
紫
赤
赤くんに手を引かれて走り出す
警察官
紫
赤
どんなに逃げても結局は病人の体力
警察官
ガッ
紫
逢えなく取り押さえられてしまう
赤
赤
警察官
紫
警察官
赤
紫
警察官
紫
警察官
警察官
紫
赤
言ってしまったら帰される
まだ、まだやりたいことがあるのに
警察官
紫
警察官
赤
紫
警察官
お前に分かるものか
俺たちがどんな気持ちで病院を出たかなんて
分かられてたまるものか
赤
紫
結局、俺たちは病院へ帰されて
それまでの元気が嘘のように赤くんの容態は悪化していった
1日のほとんどを寝て過ごし
起きていても吐き気と目眩に苦しむ日々
赤
紫
俺は一切の治療を拒否した
赤くんと最後の旅に出て
もう後悔などないと思っているから
そこまで叱られることがなかったのは、俺たちが余命僅かの末期がん患者だからだろう
ただ、母さんにはもう辞めて、と泣き付かれたけど
静かな部屋に響くすすり泣く声
看護師や担当医も涙を流している
人生のほとんどを病院で過ごした赤くんのたくさんの"家族"
こんな時に俺は涙を流すこともできない
だって、もうすぐ会えるから
紫
嗚呼、声が聞こえる
母さん、父さん、心配かけてごめんね
ちゃんと遺書は書いたし
みんなにお礼言ったし
うん、未練はない
赤
君の声が聞こえる
待っててくれたんだね
赤
紫
赤
また、君に出会えるのであれば
次はもっと新しい世界を見せてあげる
君のしたいこと、全部叶えてあげる
次は、幸せになろう
俺と君で幸せに