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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

太一

ひゃー、今日の授業終わり〜

帰りハンバーガーでも食べようぜ

太一

いいね〜いこいこ!

太一

哲学の授業ってなに言ってるかわかんねーよなー

現存在は「死」を自覚することで「生」を充実させることができる

太一

ハイデガー...だっけ?

そうそう

太一

「生」とか「死」とか言われてもわかんねーよなー

俺たちまだ17だもんな

太一

毎日楽しけりゃそれでいい

太一

よし、次はカラオケだ!

じゃ

太一

また明日〜

太一

もうこんなに暗くなったのか

太一

早く帰ろ

太一

ん?

太一

こんな店あったっけ?

太一

しかいかん...?

???

いらっしゃいませ

太一

え?

???

私はこの店、「死会館」の店長の神楽坂と申します

神楽坂

立ち話もなんですので、どうぞ中に

太一

あ、いや、別にそういうつもりじゃ...

太一

(この人どこかで見たことあるような...)

神楽坂

まあまあ、そんなこと言わずに

太一

このお店はいったい...

神楽坂

ここは死んだ人に会える館です

太一

死んだ人に?

太一

んなばかな

神楽坂

やはりそう思いますよね

太一

でもここは違うと?

神楽坂

えぇ

神楽坂

ここでは人生でたった一度だけ、もうこの世にはいない人と会うことができるのです

太一

人生で一度だけ?

神楽坂

えぇ、一度だけ

神楽坂

おそらくあなたはもう二度とここを訪れることはないでしょう

太一

ぼったくられてもう二度と来ないってことか

神楽坂

いえいえ、お代は要りません

太一

えっ

神楽坂

まあまあ、試しにやってみましょう

神楽坂

もし死んだ人に会えるとしたら誰に会いたいですか?

太一

太一

っていきなり言われてもなぁ

神楽坂

ここ30年で亡くなった方でしたらどなたでも

太一

身近な人で死んだ人って言ったらおじいちゃんくらいだけど

太一

俺が生まれてすぐくらいに死んじゃったから全然よくわかんないんだよなぁ

神楽坂

なるほど、ではまずはそのおじいさまに会ってみませんか?

太一

うーん、まあよくわからないですけど、それでいってみましょう

神楽坂

かしこまりました

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

太一

わっ

太一

びっくりした

おじいちゃん

おぉ、驚かせてすまんのぉ

太一

だって急に現れるから

太一

えっ、もしかして...

神楽坂

はい、あなたのおじいさまでございます

太一

この人が...

太一

ってか死んだ人に会えるってまじ...?

おじいちゃん

なんだか不思議な感覚じゃのぉ

おじいちゃん

わしはおまえが生まれてすぐに死んでしもたから

太一

おじいちゃんはなんで死んじゃったの?

おじいちゃん

寿命じゃよ

太一

死ぬとき後悔した?

おじいちゃん

まあ孫のお前ともっと遊びたかったが、大きな病気もせんかったから

おじいちゃん

今思うといい人生じゃったよ

太一

そっか、「生」を全うしたんだね

おじいちゃん

あぁ、そうじゃな

おじいちゃん

わしがお前さんの歳くらいの時は、友達と喧嘩したり、先生からは殴られたり、好きな人にフラれたり、色々嫌なこともあったが

おじいちゃん

振り返ると楽しいことの方が何倍も多かった気がするのぉ

おじいちゃん

そのことに気づいたのは死んでからじゃったが

太一

へぇ〜

太一

実は俺もこの前好きな子に告ったらフラれたんだ

おじいちゃん

ほほほ

おじいちゃん

そうかそうか草加煎餅

太一

草加せんべいって

太一

ダジャレかよ...

おじいちゃん

やはりフラれる血筋なんじゃな

太一

そんな血筋あんの

おじいちゃん

おっと、もう時間のようじゃ

太一

えっ

太一

早いな

おじいちゃん

またあの世に帰らねば

おじいちゃん

あっちの世界も楽しいぞ

おじいちゃん

歳はとらんし、思うように体も動かせるし

太一

また会える?

おじいちゃん

さぁな

おじいちゃん

ただわしは、さいごまでお前の側におるから

おじいちゃん

そのことは覚えておいてくれ

太一

うん、わかった!

太一

じゃあまたね!

おじいちゃん

あぁ、楽しい時間をありがとな

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

太一

あっ消えた...

神楽坂

会える時間もそんなに長くはありませんので...

神楽坂

いかがでしたか?

太一

おじいちゃんとはほぼ初対面だったけど、今も生きてたら楽しい話ももっとできたのかなって

神楽坂

そうですね

神楽坂

きっとあの世で待っておられますよ

神楽坂

もう一人、会うことができますがどうされますか?

太一

まだ死んだ人に会えるんですか?

神楽坂

えぇ

太一

って言われてもなぁ

神楽坂

身内でなくても、こういう人に会いたいという希望があればおっしゃってください

太一

そうかぁ

太一

じゃあ俺と同じような境遇にある人で

神楽坂

かしこまりました

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

太一

わっ

太一

また急に現れた

???

こんばんは

太一

こ、こんばんは

浩平

俺は浩平

太一

初めまして

太一

俺は太一です

太一

(初めましてとは言ったけど、なぜか会うのは初めてじゃない気がする...)

太一

高校生?

浩平

うん、君と同じ高2だよ

太一

君はどうして死んじゃったの?

浩平

病気だね

浩平

君もよく知ってる白血病だよ

太一

俺と同い年なのに...なんかかわいそう...

浩平

うん、よく言われる

太一

やっぱり後悔はあった?

浩平

そりゃまあね

浩平

まだ17なのに、これからの人生の方が圧倒的に長いのに、って後悔の気持ちもあったね

太一

やっぱそうだよね

浩平

でもね、入院してるとき色んな人から励まされて

浩平

太一も含めてみんなの愛情はすっごい感じた

浩平

闘病中はかなり辛かったけど、死ぬ瞬間はなんかみんなの愛情に包まれてた気がする

浩平

たった17年間でこれだけの人に愛されてたんだって思うと、これはこれでいい人生だなって思えてきた

太一

太一

君、俺とどこかで会ったことある?

浩平

段々思い出してきた?

浩平

おっと、そろそろ時間か

浩平

まあ、確かに死ぬ前は死ぬのがすっごい怖かったけど

浩平

案外あの世も面白いよ

浩平

空飛び回ってみんなのこと見られるし、壁だってスーって通り抜けられるし

太一

そりゃ楽しそうだな

浩平

そして、時期が来ればまたどこかで生まれる

浩平

そうやって命は循環していくんだよ

太一

命の循環か...

浩平

じゃあそろそろ俺は帰るよ

太一

えっ

浩平

太一もこっちにきたら、また本の読み聞かせでもしてよね

太一

やっぱり、君は2ヶ月前俺と出会った浩平...だよな

浩平

またな

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

太一

あっ消えた...

太一

太一

でもなんとなく思い出した

太一

そうだ、2ヶ月前、俺は入院したんだ

太一

そして同じ病室にいたのが浩平だった

太一

隣のベッドだったし、お互い同じ白血病ってこともあってすぐに親近感がわいた

太一

でも、浩平はかなり苦しそうで、まともに会話したのも数回だった

太一

だから俺は隣でよく本を読み聞かせてた

太一

ほとんど会話できるような状態じゃなかったけど、浩平は嬉しそうに聞いてくれてた

太一

そして俺が入院して1ヶ月後、浩平は死んだんだ

神楽坂

そうでしたか

太一

でも、おじいちゃんや浩平のおかげでなんか死ぬのが怖くなくなってきた

太一

きっとなんとなく俺が「死」というものを怖がってたから、二人は俺にあんな話をしてくれたんだろうな

神楽坂

そろそろあなたにも時間が来てしまったようです

神楽坂

心の準備はできましたか?

太一

全く後悔してないって言ったら嘘になるけど

太一

でも、この17年、楽しかったよ

太一

学校帰りに友達とハンバーガー食べたり、カラオケ行ったり

太一

もっと遊びたかったけど、また時期が来てどこかで生まれるのを気長に待ちます

太一

命は循環しますもんね

神楽坂

えぇ、きっと

神楽坂

いい来世が待ってますよ

医師

21時15分、死亡を確認しました

太一の母

うっ...うっ...太一...

太一の妹

お兄ちゃん...

太一の父

神楽坂先生、最期までどうもありがとうございました

神楽坂

彼は最期までよく頑張っていました

医師

同じ病気で苦しんでる子にもずっと声をかけてましたし

太一の母

あの子、優しい子だから...

太一の妹

お兄ちゃん、ちょっと笑ってるように見える

太一の父

そうだな

太一の母

こんなに幸せそうだなんて、この子、いい夢でも見てたのかしらね

太一の父

俺たちの子どもに生まれてくれて、ありがとな

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