先輩から声が消えた
詳しいことはわからない
私が先輩の家を訪れた時にはもう、先輩は喋れなくなっていた
でも問題はそこじゃない
筆談すればいいから意志疎通はいくらでもできる
ただ
1つ私が困ってることは___
私が先輩を好きになってしまったこと
石田真央
石田真央
石田真央
石田真央
先輩は私が作った栞を受け取ると傍にあった紙に綺麗な字を綴(つづ)る
「ありがとう」
石田真央
石田真央
石田真央
石田真央
「ありがとう」
「いつもごめんね」 「俺が行けたらいいんだけど」
石田真央
石田真央
石田真央
石田真央
石田真央
石田真央
石田真央
先輩がじっと見つめてくる
石田真央
先輩はゆっくりと目をそらし
首を横に振った
石田真央
石田真央
ガタンッ
石田真央
先輩の部屋のドアが開けられた
髪の長い女が入り口に立っている
恐ろしい形相で私を睨み付けている
石田真央
石田真央
石田真央
先輩は一瞬、紙に何かを書こうとしていたが途中でペンを置いた
朝美さんが無言で「早く帰れ」と促してくる
私はそそくさと先輩の部屋をあとにした
武瑠
武瑠
武瑠
山瀬弘人
山瀬弘人
武瑠
武瑠
山瀬弘人
武瑠
武瑠
山瀬弘人
武瑠
山瀬弘人
武瑠
山瀬弘人
山瀬弘人
武瑠
武瑠
山瀬弘人
平凡で平和だった過去の日常
は、俺の世界から跡形もなく消えた
石田真央
石田真央
石田真央
「ありがとう」
……………
石田真央
先輩は真剣な顔で私を見つめる
やがて意を決したように、ペンを取り紙に何か書いた
「石田は前、俺のこと好きだって言ってくれたよね?」
「あれ、本当?今でも変わらない?」
石田真央
石田真央
石田真央
「本当に俺を好きになれる?」
石田真央
声が震えた。顔が熱い。
先輩の顔を直視出来なくて、俯いた私の視界に
一冊の本がうつった
石田真央
「俺の答えがある。ページめくって」
私は震える指でページをめくっていく
何ページか、端が折られていた
だから本は折ったら駄目ですよって言おうとした言葉は寸前で消えた
石田真央
「俺の答え」
「よく考えてみて欲しい」
武瑠が「本屋に行く」と言ったっきり戻ってこないと言う
武瑠の姉の朝美さんからそう聞いた時から嫌な予感はしていた
人気(ひとけ)のない裏路地 武瑠が本屋に行く度に利用している本屋への近道
そしてそこは不良のたまり場でもあった
俺がそこに駆けつけた時には
武瑠は煙草を吹かしている不良5人にボコボコにされていた
山瀬弘人
不良
目の前にいる不良が見ず知らずの誰かだったら俺はすぐに助けに行っていた
だけど相手は、教師さえも病院送りにした同級生なんだ 相手の手口は知っているからこそ動けない
不良
不良
不良
不良
山瀬弘人
不良
不良
不良
山瀬弘人
不良
不良
不良
山瀬弘人
気がつけばライターを握らせされていた
口にガムテープを貼られた状態で必死に助けを求める武瑠
頭の中で木霊する不良の言葉 「個人情報」「サンドバック」「個人情報」「サンドバック」
不良どもの手拍子
不良
不良
支配されていく
山瀬弘人
無言で懇願する武瑠の顔が霞んで見えない
あの時の俺にあったのは__
保身保身保身保身保身保身保身保身保身保身保身保身保身保身保身保身保身保身保身保身保身保身保身保身保身保身保身保身保身保身保身保身保身保身保身保身保身保身保身保身
山瀬弘人
山瀬弘人
ジュッと音がした
無音の絶叫
思ってもみなかったんだ
不良どもが飲んでいた酒が武瑠の身体にかかっていたなんて
藤野朝美
藤野朝美
藤野朝美
俺が真央に手渡した、ページが折られた本
朝美さんは折られたページをもとに戻していく
朝美さんが客を追い出すのはもうすっかり恒例になった
藤野朝美
藤野朝美
藤野朝美
藤野朝美
藤野朝美
藤野朝美
声が消えた世界?
俺が今生きてる世界はそんな生ぬるい物じゃない
朝美さんの世界からは弟が消えた
俺の世界で消えた物は___
コメント
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黒腹みかげさん ごめんなさい💦やってみたかったんですサムネ詐欺。 火炙りまではいきませんが(いかないよね…?)自分の大切な物(人)と自分の身が秤にかけられることは誰にでも起こりうると思うんです…
普通の恋愛モノかと思っていたのに、めちゃめちゃ怖いじゃないですか( o̴̶̷᷄﹏o̴̶̷̥᷅ ) 最初は、自分の保身のために友達を火炙りにするなんて私には絶対無理だと思っていましたが、「個人情報」 「サンドバッグ」 なんて言われたら私もあまりの恐怖にしてしまうかもと、違う意味で怖くなりました(><)
【非リア弟先生へ】 Σ( Д )ﻌﻌﻌﻌ⊙ ⊙←今更返信に気がついて焦ってる僕 いやいやいやいや!流石ですよ… ありがとうございます!頑張ります!