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それは、何の変哲もない、夏の日のこと───
悠希
サッカーのユニフォームをパタパタとあおぎ、嘆く
蒼真
悠希
悠希
蒼真
朝礼台に腰掛け、気だるそうに話す2人のイケメンに、 女子たちの視線が集中していたのは言うまでもない
休憩終了だぞー! コーチの声に、2人は慌ててグラウンドに戻った
悠希
蒼真
夏休み練習の最後にいつも行うミニゲーム 悠希たちは、このメニューが一番好きだった
悠希
蒼真
悠希
悠希
軽口を言い合う2人 この光景は、サッカー部でもはや恒例行事となっていた
コーチ
コーチ
悠希
蒼真
弱音を吐く蒼真を、チームメイトが小突く
悠希
蒼真
ピピーッ、マネージャーのホイッスルで試合が始まる
悠希
開始早々、蒼真に渡ったボールを奪おうとした悠希
蒼真
2人の足が絡まり、もつれ込む
蒼真はすぐに立ち上がり 足をひねったのか、顔をしかめる悠希に手を差し出した
悠希
試合で敵同士とはいえ、相手は気遣うべき 強豪校であるこのチームでよく言われている事だ
蒼真
悠希
蒼真
そう言うやいなや、スピードアップして ボールを奪いに行く蒼真を、悠希は眺めた
悠希
捻った足、そして頭から伝わる痛みに顔を歪める
悠希
悠希は右足を庇いつつ、パスを受け取るために走り出した時
悠希
少しふらついた悠希がバランスを崩し、 足をもつれさせて転んだ
蒼真
猛烈な頭の痛みをこらえる悠希が最後に見たのは、 心配そうにこちらを覗き込む蒼真だった
試合中に、悠希が倒れた
コーチが言うには、熱中症らしい
蒼真
今更そんなことを思った
コーチがすぐに応急処置をとって救急車を呼び、悠希は運ばれて行った
マネージャー
マネージャー
コーチからの電話を受けたマネージャーが言う
蒼真
なにがまだいける、だよ、全然だめじゃねえか 悪態をつく
蒼真
マネージャー
蒼真
当たり前だが、試合に身は入らず 終了のホイッスルが鳴る
マネージャー
相手のチームにマネージャーが言う
蒼真
マネージャー
蒼真
急いで服を着替え、バスに乗り込んだ
蒼真
看護婦さんに言われ、病室に入る
悠希
ベッドに横たわっている悠希が頭を起こす
蒼真
悠希
悠希
ふざけたように笑う悠希にふつふつと怒りが込み上げる
蒼真
蒼真
蒼真
蒼真
強めに言うと、悠希は困ったように笑った
悠希
蒼真
蒼真
悠希
薄情者め、と呟く悠希に苦笑する
蒼真
悠希
蒼真
悠希
蒼真
蒼真
悠希
イスあるし、寝れるよお前なら 悠希が言う
蒼真
蒼真
信じられないほどの眠気に誘われ、 蒼真は寝息を立て始めた
悠希
蒼真を見ているうちに寝てしまっていたようだ
イスの横に、部活用のバッグと、飲みかけのコーラを見つける
悠希
練習終わりにコーラを飲むのが蒼真の習慣だった
悠希
ふと病室の時計を見ると、針は2時をさしている
おかしい、練習が終わったのは3時なはずなのに…
悠希
スマホを確認すると、8月19日の午後2時だった
悠希
見間違いかと思い、何度も目をこするが、表示は変わらない
時間が、戻っていた。
悠希
混乱しつつ、とりあえず蒼真を起こす
蒼真
悠希
蒼真
寝惚けてるんじゃね?という蒼真
悠希
蒼真
蒼真
俺が行くよ、そう言った悠希を制し、蒼真が立ち上がる
蒼真
ガチャガチャ
…カチッ
蒼真
ドアを開けるなり蒼真が絶句する
悠希
悠希
ドアを開けた先にあったのは、目が眩むほど長い階段
蒼真
悠希
受け入れんのはやいな、と蒼真が笑う
悠希
蒼真
悠希
蒼真
階段を指さす蒼真に お前も大概じゃねえか、と苦笑いを零す
蒼真
悠希
如何にも病院、いった、白く無機質な階段を上る
蒼真
悠希
蒼真
ぼやきつつ、コーラを受け取る プシュ、っと小気味よい音を立ててキャップを開けた
サッカー部で脚力に自信があるとはいえ、 この階段はあまりにも長すぎた 2人の息が上がる
悠希
神社にあるような石の階段
確かに先程までとは違う
蒼真
不思議な現象に困惑する
蒼真
10分程、いや、1時間だろうか、あるいはそれ以上か 遂に長い階段の終わりが見えてきた
悠希
蒼真
蒼真
悠希
学校の近くにある、名前すら分からない神社
確かに、面影があった
蒼真
蒼真の視線の先にいたのは、真っ白な小狐
悠希
じっ…とこちらを見ていた狐は、背中を向けて歩き出した
蒼真
悠希
トコトコと歩く狐を追う
蒼真
その先にあったのは白い祭壇
悠希
悠希
蒼真
狐はもう一度こちらを向き、短く鳴いてから、 どこかへ走り去っていった
悠希
祭壇の上にあったのは、白い勾玉
蒼真
蒼真に同意して、勾玉を手に取った
悠希
すると、世界が反転する
???
???
不思議な声がした
8月19日午後5時47分
廃れた神社に、炭酸の抜けたコーラだけが残っていた
2人は、この日の記憶を失い 勾玉は、その神社の地面に置かれていたという