白河
よぉ、中山
中山
お、白河じゃねえか。
白河
こう、2人で仕事から帰るのは珍しいな
中山
残業が結構キツかったから、終電逃すかもしれないな。
白河
それはごめんだね。
白河
ま、蘭奈市の駅にはある怖い話があるらしいんだがな。
中山
なんだそれ。興味あるな。
白河
終電が来る前に「拝啓、あの雪景色。」と書かれた手紙を見つけると、ゆきちゃんという女の子が出てきて……
中山
出てきて?
白河
願いを叶えてくれるらしい。
白河
しかし、その代償として死ぬ可能性もあるらしいぞ。
白河
どうだ?なんかロマンがないか?
中山
なんか胡散臭いな。
白河
その手紙だが、ゆきちゃんが「あるところ」に住んでいる好きな人に宛てた手紙らしいが
白河
電車が途中で脱線してしまったらしい。
中山
んじゃ、その好きな人って誰だよ。
白河
雪景色って表現してるという所から予想すると、遠くにいる好きな人に宛てたのかと。
中山
たしかにな。ここ、あんまり雪は降らないがな。
中山
今日は降ってるけど
白河
ま、本当かどうかは定かじゃあないけど
駅にて。
中山
ん、これは……
白河
ゆきちゃんの……手紙?
中山
あの都市伝説、マジだったのか。
白河
俺産まれてからずっとここにいるけど、ゆきちゃんの話だけは全然聞かなかったからな……本当だったとは。
白河
マンホール犬なら遭遇した事あるけど
中山
残念ながら俺は隣町の志知浜市出身だ。
中山
だからこの街の都市伝説はあまり知らん。
白河
とりあえず……これ持ってくか。
タタン……タタン……
ゆきちゃん
それ、わたしの手紙!
中山
え?
ゆきちゃん
わたし、ゆき!
中山
よくこんなに難しい字を書けたね?
ゆきちゃん
違うの!お母さんが書いてくれた!
中山
ほう。
白河
随分子供上手く扱ってんな……
ゆきちゃん
だけど、脱線しちゃった。
ゆきちゃん
せっかく手紙のかっこいい書き方もわかったのに……
電車の揺れる音と彼女の声が谺響する。
まるで耳に直接語りかけているように。
ゆきちゃん
はなしをきいてくれて、ありがとう!
ゆきちゃん
きみたちのねがいを一つだけ、かなえてあげる!
白河
ど、どうするんだ?
中山
……
中山
中山
願いなんて、いらないよ。
ゆきちゃん
へ?
中山
俺たちは、今生きているだけで幸せだ。
中山
金持ちになったって、使いまくって結局無くなる。
中山
だから、一般庶民のままでいいんだ。
中山
不死身になっても、周りの友達が死んでいくのに、俺は死なないなんて耐えられない。
中山
だから、このままでいいんだ。ゆきちゃん。
ゆきちゃん
お兄ちゃん?ほんとにいいの?
中山
ああ。それと、この手紙誰宛てだ?
ゆきちゃん
新潟に住んでる、遥斗くん。入院してるんだ。
ゆきちゃん
特徴的なのは、自分の身の回りにクマのぬいぐるみを置いている子。
ゆきちゃん
ありがとう。お兄ちゃん……
ゆきちゃんは、透けて、消えていった。
あの二人の後日談。
白河
ほんとに見つかんのかよ……
中山
ああ。写真も貰ったからな。
白河
そりゃまあそうだけど……
中山
ん、多分この病院だ。
受付
えっと、華森遥斗くんにこの手紙を渡すのですね?
中山
はい。
白河
お願いします!
その後、ゆきちゃんの話を聞くことが無くなった。