いつの間にか分かれ道のある 公園まで帰ってきていた
彼方
僕らの家がある方とは違う道に 進んでいった彼方先輩
棗
彼方
たしか先輩って、空手だか 柔道だかの経験者だったっけ
真冬
年下の、しかも女の子に 向かって容赦ないなぁ……
彼方
まるで先生が課題を 出すかのように言われてしまった
彼方
こちらに背を向けて、ヒラヒラと 手を振りながら去って行った先輩
棗
翔太
真冬
後輩歌い手3人が、本人が去った後で 好き勝手言い始める
真夏
4人で歩いて、家の前まで帰ってくる
翔太
棗
真夏
真冬
真夏
真冬
相川母
家に帰ってきてリビングまで来ると、 母さんがソファに座って テレビを見ていた
いつも見ているニュース番組で、 今はどこかにいるリポーターと 生中継を繋いでるみたい
テレビ
桜の木が映った後、その下でお花見を している人達が映し出される
真冬
洗面所で手を洗ってから、 自分の部屋に戻ってくる
私服に着替えて、作業机の 椅子に座って、ヘッドホンをして パソコンを起動する
それから、昨日徹夜で完成させた、 歌詞のない曲のデータを開いた
サビのところまで一気に飛ばして、 その部分を聞く
♪〜
真冬
“桜花 キミに──”
ふと思いついた歌詞を、 メロディに乗せて歌ってみる
真冬
キミって、誰だろう
それに、“キミ”を見ている誰かには、 “キミ”がどんな風に見えてるんだろう
真冬
「たしかに俺、 桜も好きかもなって思ってさ」
何故か、今日聞いたばかりの 彼方先輩の言葉を思い出す
先輩は、桜が好きだって言っていた
真冬
同じように、先輩のことを 好きなのか、それとも……
真冬
桜が人を、人が桜を好きになった ところで、その恋は実るはずはない
……あれ?
真冬
真冬
“──恋したようだ”
歌詞の続きが思い浮かんで、 声に出してみる
彼方先輩は、そういう意味で好きって 言ったわけじゃないのに
「一ノ瀬会長のこと、 好きになっちゃった?」
昨日姉さんに言われたことを、 また思い出した
真冬
ピタリと、マウスを動かす手が止まる
姉さんの言う通り、僕がもし、本当に 彼方先輩のことを好きなのだとしたら
きっとそれは、叶わないまま、 実らないままで終わるだろう
……否、終わると言い切れる
それならいっそ、この気持ちを 曲にしてしまおうか
人間の女の子の“キミ”に、 叶わない恋をしてしまった、 桜の木の話
つまり、彼方先輩に恋した、 僕の想いの曲
真冬
“桜の咲く春の──”
入学式の日、桜を見上げて 泣いていた彼方先輩を見たこと
“どうしたってさ 人目を惹く──”
今日学校で見た、あんなに沢山の人を 惹く程の、彼方先輩の魅力
“その声を聞いて──”
歌い手の活動で悩んでいた時に、 そらるさんがボクに声をかけて、 手を差し伸べてくれたこと
“桜花 キミに恋したようだ”
そして、僕の想いを歌詞に綴っていく
これからボクらはユニットを組んで、 ボクはあの人の“相方”になる
「オレは、お前が相方じゃないと、 誰とも組まないつもり」
あの時そう言ってくれたのが、 何故だか無性に嬉しくて
もしかして、あの人の“特別”に…… “相方”になれたから、なのかな
僕が思う、“恋心”って“特別”とは、 全く違うものだけれど
ねぇ、先輩
ボクは、キミの隣にいるだけで 十分幸せだから
だから、僕の好きな音楽の中では、 少しだけ……ほんの少しだけ、 欲張っても良いかな
想いが届けって、願っても良い?
「好きだ」って言葉を、 言っても良いかな──?
“キミに届け”
“月夜ニ袖シグレ”──
コメント
4件
ぬぉあああぁぁぁぁぁぁぁあ!!…… 最高すぎ最高すぎ最高すぎ最高すぎ!! ほんとに桜花ニ月夜ト袖シグレ最高!! そしてそれを曲パロにして小説かける そよよさんも最高すぎ!!つまり神です! 続き楽しみにしてます!!!!!