この作品はいかがでしたか?
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LUCID DREAM DOLLS
👁 👁
夢の中で、夢だと思うコトがある
人はソレを、明晰夢と呼んでいる
明晰夢は夢をコントロールできる
自分の見たい夢を見る事ができる
けれど僕はそんな夢に興味はない
だって僕はよく明晰夢を見るから
寧ろ明晰夢には飽き飽きしている
空を飛び回る夢は何十回も見たし
テストで満点を取る夢も沢山見た
そう、夢では何だって出来るんだ
犯罪だって、殺人だって、できる
逆にリアルでは、上手くいかない
空を飛ぶなんてあり得ない話だし
満点なんて一回も取った事がない
明晰夢は所詮、夢の末にお終いで
現実に成り、ただ虚しくなるだけ
だけど、僕はずっと明晰夢を見る
見たくないけれど、見れてしまう
誰かの手によって操られてしまう
『お人形さん』みたいな僕なのだ
👁 👁
いつしか僕は奇妙な明晰夢を見た
メルヘンに満ちた部屋の中に居た
椅子や机はフワフワのコットンに
テレビや電気はキラキラの電飾に
壁紙はカラフルな蛍光色タイルに
サイケデリックな子供部屋である
目がくらくらくらと落ち着かない
なんだか不思議な夢、夢夢夢夢夢
その部屋には小さな女の子が二人
部屋の片隅で、うずくまっている
僕は女の子たちに声を掛けてみた
「ねぇ、僕の夢に何か用かな?」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
声を掛けても、喋ってはくれない
「君たちの名前は何ていうの?」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
声を掛けても、応えてはくれない
お人形さんのような二人の女の子
僕と同じ、操り人形なのだろうか
不気味な雰囲気がふわふわと漂う
僕は夢の内容を変えようと思った
明晰夢は自分の意思で好きな様に
夢の内容を変える事ができるのだ
けれど、一人の女の子が泣き始め
ちょっと可哀想だなと思ったので
僕はもう少し一緒に居てあげよう
無意識の中で、そんな事を思った
「お兄ちゃんは、怖くないの?」
一人の女の子が、僕に尋ねてきた
無機質な声に、少しドキッとした
「ううん、怖くないよ、大丈夫」
実際、見た事のない夢だったので
奇妙とは思ったけれど怖くはない
異空間に漂う、撓み、捩れ、歪み
女の子はこの奇妙過ぎる世界観に
恐怖を感じてしまうかもしれない
「私は怖いよ、助けて、お願い」
「私も、こんな場所居たくない」
二人の女の子が同時に泣き出した
👁 👁
僕がここに居ると、安心する様だ
この空間を忘れさせてあげようと
僕たちは二時間くらい遊び続けた
今では、二人とも疲れたみたいで
スヤスヤ寝息を立てて眠っている
「よし、二人とも夢を見始めた」
「僕もそろそろ、目を覚まそう」
明晰夢から現実に戻ろうと思った
でも、辞めた
女の子に思入れが出来てしまった
夢の中の子に情を抱いてしまった
現実に面白いことなんて何もない
僕の居場所なんて、何処にもない
この夢には僕を慕う女の子が居る
女の子たちは僕を必要としている
現実に戻るくらいなら僕はここで
女の子たちと一緒に過ごしたいと
そう、思った
👁 👁
一人の女の子が目を覚ましたから
「僕はずっとここに居てあげる」
と、僕は優しい笑みでそう言った
「ほんとうに?ずっと居るの?」
女の子は目を輝かせてそう言った
「ああ、もちろん、嘘じゃない」
と、僕は胸に手を当てそう言った
「私たちと同じお人形さんだね」
女の子は両手を叩いてそう言った
「お人形さん?どういうこと?」
と、僕は少し訝しげにそう言った
「夢に囚われたお人形さんだよ」
「ルシードドリーム・ドールズ」
「ずっとずっと一緒に暮らそう」
「夢に繋がれた操り人形として」
僕は突然、奇妙な恐怖に身悶えた
早く目を覚まさないと、と思って
頬を抓った
顔を叩いた
耳を捻った
腹を殴った
髪を毟った
爪を剥いだ
鼻を捥いだ
口を裂いた
目を潰した
けど、夢から醒める事はなかった
「この夢は、永遠に醒めないよ」
「だから私たちと旅をしようよ」
「そして新しいお人形を探そう」
「私たちと永遠に、永久に、ね」
女の子の顔は、僕と同じ顔だった
👁 *
「うわ、気持ち悪い部屋だなぁ」
「あれ、誰かいるな。ねぇねぇ」
「君たちは、何をしているの?」
「三人のお名前は何ていうの?」
ルシードドリームドールズ
fin
コメント
2件
武藤径さん コメントご感想ありがとうございます!✨ こういう作風のものも新作で書いていきたいと思っています(*´︶`*) コメント機能があると読者の方がどんな作品を求めているのか、というのが明確になって良いですね!
演出がすごくうまい!だから余計に怖くドキドキする。言葉に無断なくとても美しい。 恐くそして美しい作品。