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激しい雨が降る夜だった

細い道に酔っ払いが歩いていた

酔っ払い

はぁー

酔っ払い

飲んだ、飲んだ

僕は後ろから距離を詰めていく

『あと少し…あと少し…』

タイミングを待つ

今だ!

あの…すみません

酔っ払い

あぁ?

ザクッ

一撃で仕留める

真っ赤な血が

僕を見つめていた

ハッ!

またあの夢か…

最近、よく人を殺す夢をみる

友里恵

えー人殺しの夢?

友里恵

ストレス溜まってんじゃない?

そう…かも

にしては生々しい夢だった

友里恵

まぁ、私はいつでも泉の相談に乗るからさ!

ありがとう

友里恵とは幼なじみで高校も一緒

だからたまに一緒に登校している

友里恵

あ!殺人で思い出したんだけどさ…

友里恵

***区連続殺人事件の犯人またTwitterに犯行写真あげてるらしいよ

***区連続殺人事件?

友里恵

はぁこれだからガリ勉は…

友里恵

ちょっとはニュースみなよ

友里恵

あのね***区連続殺人事件てのはね!

友里恵

犯行写真をネット上にあげる趣味の悪い殺人事件!

友里恵

私のお父さんが1番嫌いなタイプの
自己顕示欲強めの犯罪

友里恵の父さんは人が良くて評判な医者だ

***区ってすぐ近くじゃん

友里恵

そうよ!

けど、ネットに写真あげてたらすぐに発信源特定されない?

友里恵

それが犯人がハッカーらしくてなかなか特定できないみたい

へぇ

友里恵

で、これがその写真

見た瞬間、驚きで言葉が出なかった

(この人…)

(夢で殺した人だ…)

結局、その日は授業も集中できないまま家路に着いた

(あのこと、兄さんに相談しよ…)

ただいま

おかえりなさい

僕は母と兄さんの3人暮らしだ

母によると父親は僕が幼いときに出て行ったらしい

晩御飯できたから

つむぎ呼んできてくれる?

うん

僕には10個年の離れた社会人の兄がいる

兄は大手IT企業に勤めていて、誰にでも優しい自慢の存在

そして、俺が唯一心を開ける人物だ

兄さん、入るよ

晩御飯できたって…

そう、じゃあ行くわ

あと、ちょっと相談したいことがある…

わかった、そこ座れば

うん

で、相談って?

兄さんって***区連続殺人事件知ってる?

うん、ニュースで見た

その犯人…自分かもしれない…

え?大丈夫泉、疲れてんじゃない?

自分でもそう思う…

けど夢を見るんだ、事件が起こる前日に

へぇー

じゃあ泉はもうひとつの人格があって

その人格が殺人を犯してるってこと?

そう…かもしれない

うーん、急にそんなこと言われてもなぁ

しばらく考えてみるけど

あんまり気にしない方がいいんじゃない?

わかった

ありがと、兄さん

兄さんの話をきいても、 やはり自分が犯人なのではないかという不安は残っていた。

泉、顔色よくないみたいだけど

そう?

泉も疲れてるんだよ

そうね

母はあまり話さない人だ

昔は明るかったが、 父が出て行ってから話さなくなった

友里恵

あれ?泉体調悪い?

それ、昨日母さんにも言われた

友里恵

大丈夫?泉、昔病気してたでしょ

友里恵

ちゃんと体調に気を付けないとダメだよ

そう…だっけ

友里恵

お父さんが言ってたよ

あー確かに、友里恵の父さんの病院行ったかも

けど、それ病気だったっけ?

友里恵

さぁ?お父さんに聞いてみれば

友里恵

今日家にいるよ

いや、友里恵聞いといて

友里恵

なによもう

学校でも考えてみたが、やはり入院したときの記憶は曖昧だった

ねぇ、母さん

どうしたの?

俺、小さいとき病気で入院してた?

ど…どうして…

急に母さんが動揺し出した

いや、別に気になっただけ…

母さんはいきなり周囲を確認した

今日は紡は残業よね…

泉、よく聞いて!

今から言うことは紡には言わないで

どうしたの?急に…

泉は確かに6歳のとき入院した!

けど病気なんかじゃないの!

あのとき…

ガチャ

ただいま

リビングは兄さんの登場と共に 静まり返った

ん?どうかした?

『今から言うことは紡には言わないで』

なんでもない

ふーん

母さんもすごい汗だけど…

なんでもないの…

なんでもない空気じゃねーだろ

兄さんの低い声が響いた

ごめん、ごめんね紡

いや、こっちこそごめん

兄さんは笑っていた

初めて兄さんが怖いと思った

(もう母さん、何も話してくれないだろうな…)

トゥルルルルル…

スマホの着信がなった

友里恵からだ

どうしたの?

友里恵

あのさ、お父さんに聞いてみたんだけど

僕も気になってた

友里恵

泉、大ケガして病院運ばれたらしいよ

大ケガ?

友里恵

そう、相当危なかったらしくて

友里恵

輸血もしたみたい

友里恵

覚えてないの?

うーん

それだけのことがあったのに、 どうして思い出せないんだろう

とにかく、聞いてくれてありがとう

友里恵

あと、これは私の勝手な考えなんだけど…

友里恵

輸血とか臓器移植とかあるでしょ

友里恵

それってたまに提供者と記憶が共有できたりするらしいよ

共有…

友里恵

泉、この前人を殺す夢を見たって言ってたじゃん

友里恵

それって、泉に血を提供した人が人殺しだったりして…

じゃあ、俺に血を提供した人って誰なの?

友里恵

そこまでは知らないよ

友里恵

お父さんも覚えてないだろうし

やっぱり母さんと兄さんにはっきり聞こう

ねぇ、母さん、兄さん

どうした泉?

母は俯いて黙っていた

俺、大ケガで入院してたんでしょ

なんで大ケガしたの?

紡が泉を山道から突き落としたからよ!

おい!お前は黙れって

もう隠しておくなんて無理よ!

警察にいつバレるかも分かな…

ザクッ

母さん!!

兄さんはポケットから取り出したナイフで母さんを刺した

どうして…兄さん

あーもうダメだ

こんなに血が広がったら証拠も隠滅できないな

兄さん!

教えてあげる…10年前のこと

~10年前~

おい紡!どうゆうことだ!

父が持っていたのは俺の部屋にあった血のついたナイフと上着だった

どうして血なんて付いてるんだ!

紡…あなた何か殺したの…

だったら何?

人間じゃないから大丈夫だよ

ふざけるな!

命を奪うのは人間として最低だ!

父は俺を散々罵った

働きもしないダメ人間のくせに

だから殺した

何やってんの紡!

どうしよう…

あ、そうだ

山に埋めようよ

警察に通報しないとダメでしょ!

は?

いいけど、これが世間に知られたら

母さんは一生、人殺しの息子を産んだって言われるよ

そ、それは…

逆らったら殺す…無言で圧をかけた

わ、わかったわ…

夜遅くだったので寝ている弟も車に乗せて連れてきた

ここで大丈夫よね?

うん、ここに埋めよ

お兄ちゃん、お母さん…

弟が目を覚ましてしまった

来ちゃダメよ!

ん?おとうさん?

なんで、おとうさん泥だらけなの?

なんで、うごかないの?

弟が騒ぎ出した

泉、あまり騒がないで…

そうだよちょっと黙って

トンッ

軽く弟を押すとそのまま溝に落ちた

泉!泉、大丈夫?

打ちどころが悪く出血が酷かったが息はしていた

私、病院に連れて行く!

行ってもなんて説明するの?

山で遊んでたらうっかり足を滑らせたって…

ならいいけど、一応俺もついて行く

病院に行くと弟は輸血が必要な状態だったらしく

同じ血液型の俺が血を提供した

そして弟はあのときの記憶は失っていた

そうゆうことだから

じゃあ俺が共有した記憶って…

共有?

なんでもない

まあいいけど

一つ言えるのは

泉は俺の血からできてるってこと

俺がこのまま捕まっても、いつか泉が人を殺すかもね

そんなわけない!

どうだろう

お前は俺のすべてだから

兄は不気味に笑っていた

それから兄さんは自首した

そして、父さんのことや連続殺人事件のことも明らかになった

母さんは一命は取り留めたものの、今も目を覚まさない

あんなに信じていた兄さんが殺人鬼だったのは相当ショックだった

しかし、それよりも

(あの言葉が…忘れられない…)

『お前は俺のすべてだから』

僕も人を殺すのだろうか…

この作品はいかがでしたか?

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コメント

8

ユーザー

コンテスト参加ありがとうございます。 物語の構成が密で素晴らしかったです。兄がIT系のお仕事って所でうっすらと疑いが出始めていましたが、弟の不祥事を兄が片付けてるのだと思っていたので、驚きでした...!母親が口数少なくなったのもとても自然で、父親が死んでしまったからなのだと思っておりました。

ユーザー

ストーリー性が面白かったです! 最後に謎を残すっていうのも(´ω` )

ユーザー

こういうの好き

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