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サイコメトリーと不思議な骨董屋

第2話 - 夢じゃない

321

2023年12月09日

#司類

#ミステリー

#ホラー

#ファンタジー

#冬彰

あかまる🍓🐾໊

咲希

お兄ちゃん、私ね、お外に遊びに行きたい。

咲希

学校行きたいな…

咲希

大きくなったらお仕事して、恋して、結婚して子供も欲しい。

咲希

それでね、お婆ちゃんになるまで笑顔で生きるんだ！

咲希

…お兄ちゃん？

ああ、生きられるさ

必ず、お兄ちゃんが助けてやるから

だからもう少し、耐えてくれ

チュンチュン

司

…ふぁ、

司

夢…

司

今日は土曜だし、家でゆっくりするか。

司

母さん達は…仕事か。

司

咲希の容態も悪くないみたいだな。良かった。

「あと4年」

司

…あ

司

そういえば、昨日のあれはなんだったんだ…？

司

えっと…あの男の人、明日も来てねって言ってたっけ…

司

まぁ暇だし…夢かどうか確かめに行くか。

司

確かこの辺りだったよな…

司

あっ、これだ

司

…開けるか

カランカラン

司

こんにちはー

…

司

えっ、あ、えっと…

司

(昨日とは違う人だ…)

…いらっしゃいませ

司

あっ、あの！

司

紫色の髪色をした男の人っていますか？

…いますよ

司

その人に会いたいんですけど…！

…少々お待ち下さい

司

は、はい！

司

(大人しい人だな)

司

(どこに行くんだ？…店の裏か？)

「痛ｯ！ちょ、痛いって！」

司

？！

「もうちょっと寝かせ…あ、やめてｯ！」

司

な、なんだ？！

「分かった！行く、行くから！！」

司

…

…お待たせしました

痛たたたた…

全く、僕に用なんて誰だい？折角寝てたのに…

司

あ、えっと、俺です

おや、君は昨日の！

…知り合いですか？

そうそう。昨日話しただろう？サイコメトリーの。

…なるほど、

…俺は店番してるので、どうぞごゆっくり。

司

あ、ありがとうございます

さて、物語を聞かせに来てくれたのかい？

司

あ、まぁそれもありますけど…夢かどうか確かめようと思って。

フフ、夢じゃないよ。幸にも不幸にもね。

今日はどの商品にしようかなぁ〜

ふと、呼ばれた気がして振り返った

司

(…？)

振り向くと、そこには綺麗な赤い着物を着た市松人形が座っていた。

司

…

ん〜

司

あの、自分で決めてもいいですか？

おや、構わないよ

俺は市松人形を手に取った。

その人形が気になるのかい？

司

はい。この人形でいいですか？

市松人形に、自分の物語を語ってくれと訴えられているような気がした。

うんうん。いいよ。

司

…

司

女の子の7歳のお祝いには市松人形を贈る、という風習のある村で生まれた私は、可愛い赤い着物の市松人形をもらった。

司

その子は私にそっくりで、いつも一緒に遊んだ。

司

おままごとしたり、隠れんぼだって一緒にした。鬼ごっこもしたよ。

司

今日は私の14歳の誕生日。プレゼントはくまのぬいぐるみだった。

司

私は、お友達が増えたと喜んで、毎日3人で遊んだ。

司

ある日、いつも通り遊んでいると、お母さんに「いつまでもお人形遊びなんかしてないで勉強しなさい」と言われた。

司

私はお勉強が嫌いだった。だって楽しくないもん。

司

すると数日後、とうとうお母さんに人形を取り上げられた。

司

酷い、酷いよお母さん！

司

私はただ、お人形さんと遊びたいだけなのに…

司

取り上げられたお人形をなんとか取り返すと、お母さんにそれがバレて、怒られた。

司

私が反論したら、お母さんはくまの人形を破って捨てちゃったの！

司

私は泣きながら市松人形だけを手にして、家を飛び出した。

司

行くあてなんてらなかったけど、とにかく私は走った。走って、走って、気がつくと私はこたつの中にいた。

司

動こうとするけど、動けない。

司

見ると、私が机に向かって座っている。

司

お母さんがやってきた。「偉いわね、ちゃんとお勉強して」

司

お母さん、私はここだよ、なんでしゃべれないの？

司

相変わらず、私は勉強している。私じゃない私が勉強してるのに、誰も気づかない。

司

嫌だ、人形なんかに戻りたくない

司

もうあんな動けない人形なんかに…

司

私はただ、遊んでほしかっただけなのに…

司

なんで、振り向いてもくれないの？

司

あんなに一緒に遊んだじゃない…

司

こっちを見て、見てよ、もう一度、隠れんぼしましょうよ

司

お願い、私を見て

面白い。人形にそんな力があったのか。

司

ねぇ、私はどこ？遊んでくれた、私の大切なお友達はどこにいるの？

おや、これはもう一回引っ叩くべきかな？

…え？

あれ、聞いてたのかい？

…まぁ、暇だったので。

…それより、お客様を叩いてもいいんですか？

うーん、ま、これは特例でしょ

ペシンッ

司

い"った！！？！？

おかえり

司

また叩きましたね？！

君のためさ

司

もうちょっと他にないんですか…

…その人形は、持ち主を恨んでいるんですか？

司

え？

…

司

…いえ、恨んでなんかいません。ただ、寂しいだけです。

司

この人形は、持ち主のことが大好きですよ。

…そうですか、

嬉しそうだね。

…そんなことないです。

またまた〜

司

お二人は…この店の店員さん…ですよね？

ああ。私が店主で、彼は店員だ。

…店員です。

司

あの、ここは一体…

「なんなんですか？」

喉まで出かかった言葉を、俺は飲み込んだ。

ん？

司

なんでもないです

そうかい。あ、妹さんの寿命の件だけど

司

！！

60年分の物語、払ってもらうまで渡すことは出来ないからね。

司

え？！

当然だろう。持ち逃げされたら堪ったもんじゃないし…

司

(それもそうか…)

司

(なら、早くしないと…！！)

司

そういえば、一つの物語に対して何年分くらいなんですか？

物語の質によるね。

今の物語だと、まぁ1年分かな。

司

1年分…

君はまだ、憑依型を理解しきれてない。だから質が下がってしまう。

いずれは、景色や風景までも生み出す力を持てるはずさ

そうなると、一気に10年分くらいはいくかもね。

司

！！！

ま、その分体力も消費するし、1日に１つになるだろうけど。

司

(憑依型を理解する…？)

今日はもう帰った方が良い

司

え？まだ昼ですけど…

夜までいる気かい？ここには、色んなお客さんが来るんだ。君なんか食べられちゃうかもよ？

司

食べ…？！

…こら

痛っ

…子供だからと言って、あまり揶揄わないであげて下さい。

ちぇっ

司

え、嘘なんですか？

…事実だが、食べられる事はないです

そうそう。お客様は命に変えてでも生きてここから出さなきゃ駄目なんだよ。

司

へ、へぇ…

司

(なんか怖いな…)

司

あ…じゃあ俺、そろそろ帰ります

うん、またね〜

司

わっ！！

ドテッ

司

痛たたた…

あの、大丈夫すか？

司

ああ、すみません、大丈夫です

そっすか。気をつけて下さいね

司

はい、ありがとうございます。

(さっきの人、ここら辺でこけてたけど…)

あれ？こんな所に店なんかあったっけ

…

カランカラン

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