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――小学生が、大好きだ。
あどけない笑顔。
生意気そうな目。
純粋な心。
未発達な体。
瑞々しい太股。
――小学生が、大好きだ
木崎姫歌(きさき ひめうた)
いや、すまない。誤解を招く言い方をしてしまった。
これでは春先に現れるデンジャラス生命体だ。
わたしは違う。わたしに犯罪的要素は、一つもない
「小学生」というと、最近は妙な邪推をする輩が増えて困っているが、何て事はない。
わたしにとって彼らはアイドルのようなものなのだ。
「嵐」と聞けば何であれときめく、そこらへんの女子達と大差ない。
中年のおっさんが「女子高生」と聞いてときめくのとは、訳が違うのだ。
――ということで、
学校を出て十分後。わたしは小学生をストーキングしている。
いやいやいや、違うよ? 前言撤回とかしないよ?
だってこれは犯罪ではないから。
ストーカーというのは性的嫌がらせであることから犯罪なのであって、未だストーキングを発見されていないわたしの存在は、性的嫌がらせになっていない。
つまり、わたしは犯罪者ではないのだ!
そんなわけあるか!
と天から声が降ってきた気がしたが、わたしは気にせずストーキングを続行した。
ストーキングの対象は小学五年生男子、相羽尊(あいばたかし)君。
去年引っ越してきた、近隣に住む運動神経抜群の活発な少年だ。
成績は中の上。
整った鼻梁にツンツンした黒髪が特徴的。
その将来イケメンになる確率一〇〇%のご尊顔により、近所の奥様方からの人気も高い。
同年代に至っては言うまでもなく、異性からの人気は爆発的。同性からは嫉妬と羨望の眼差しを一身に受けている。
しかしそんな彼だが、放課後は異性と遊ぶ時間も同性と遊ぶ時間もない。
何故なら、彼は地元の少年ソフトボールチームでエースを張り、チームを全国大会に導くため日夜野球道(ソフト道?)を邁進しているからだ。
時間的に見て、今はその練習に向かうところであろう。
ふふ、いい……!
あの幼い顔が汗を流しながら、練習の苦痛に耐える様、実にいい!
わたしははあはあと肩を上下させながら、尊君の背をうっとりと眺めていた。
後ろから強烈な視線を投げかけるストーカーに気付かない鈍感なところも、非常にポイントが高い。
などと彼について言及している内に、いつの間にかグラウンドに辿り着いていた。
そう、彼が所属する少年ソフトボールクラブが練習に使っているグラウンドだ。
尊君はグラウンドに入るなり、練習の準備を始めた。
それを認めてわたしは、呟くように言った。いつものように、決め台詞を。
さあ、苦痛に歪む顔を、わたしに見せてみろ
わたしは興奮していた。非常に興奮していた。
これから尊君が練習を始め、そのハードさに顔が歪む瞬間を思い描いて。
だからだろう、背後の気配に気付かなかったのは。
気配は、わたしの肩をつついた。
天樹奈琴(あまぎ なこと)