主
主
主
数分歩いて、1時間フリードリンク280円のカラオケに入った。
案内された部屋は少し狭くて、8人が中に入ると、いっぱいいっぱいだ。
1番最後に入って、隅っこでおとなしくしてようと思ったのに、遠井さんに促されて、逃げ場のない真ん中に座る羽目になった。
しかも、なぜかさとみ君の隣で、色々ついていなさ過ぎて頭の中が大混乱だ。
いいなぁという視線を送ってくる友達と変わってあげたい。今すぐ。
遠井さん
ジェル
ジェル
遠井さんが仕切ると、目の前にいた男の子がさっそく名前を告げた。
遠井さんの中学時代の友達とは彼の事だったようだ。
さとみ君の側にいつもいる男子なので、すごく仲がいいのだろう。
高身長で、オレンジの襟足の長い髪の毛。
明るくて話しやすそうな雰囲気がある。
ジェル
そういってなぜか胸を張った。
何はともあれジェル君の簡単な自己紹介を終えると、時計回りで順番にみんなは名前を告げて挨拶した。
ころん
男子1
僕の順番になって名前を言うと、端に居た男の子が驚いた顔をした。
ちょっとインテリ風の男子だ。
知り合いだっけ?と思ったけど見覚えはない。
でも、相手は僕のことを知っているようだ。
男子2
男子1
男子1
男子2
遠井さんのも一度そんなことを言われたけど、本当に音楽で僕の名前が人の記憶に残るだなんて。
しかも、機械音って。それがいいんじゃん。
男子1
ころん
遠井さん
遠井さん
遠井さんが僕の代わりに返事して、話を盛り上げていく。
話しかけてきた男子はてっきりボカロが好きなのかと思ったけど、彼らも印象に残っているだけだったらしく、僕の流した曲についてけらけら笑ってる。
慣れてるけど、好きな曲を笑われるのは結構堪えるなあ
さとみ
隣からの声に「へっ?」と返すと、さとみ君が「友達からのリクエストだろ?」と再確認してきた。
ころん
遠井さん
遠井さん
遠井さん
口ごもる僕に変わって遠井さんが説明し始めたのを
ころん
とモゴモゴ言い訳じみたことを呟いてみる。
みんなにそう説明したのは僕なんだけど、さとみ君とも交換日記での会話を思い出して、ここではどう振舞えばいいのか必死に考えを巡らせた。
彼の中では莉犬は病み曲が大好きな子で、放送委員の友達に頼んで曲を流してもらってる。という話になってたはずだ。
ということは、遠井さんたちが言う“リクエストしている誰か”は莉犬だとさとみ君は思うはずだ。
そんな彼からすれば、今の状況はどう見えるだろう。
きっと、あんまり僕の印象は、良く、ない、よね?それ。
そう思って、恐る恐る隣を見ると、さとみ君は眉間にしわを寄せてじっと睨むように僕を見つめていた。
鋭い視線に脂汗がぶわりと噴き出してくる。
ころん
慌てて側にあった軽食のメニューを手にしてみんなに問いかけると
ジェル
と、目の前のジェル君が明るく答えてくれた。
明るい性格なだけにみんなのムードメーカーなのかもしれない。
おかげでみんなの話題も逸れて、今は最近の流行りの映画の感想を言い合っている。
ただ、隣のさとみ君はその会話に混ざる様子はなく、僕もずっと見られてるような気がして話に混ざることはできなかった。
とりあえず今日を何とかやり過ごさなくちゃいけない。
次々に歌うみんなに笑顔を向けて、タッチパネルを手渡されたら、歌える最近の曲を入れて無難な感じで歌う。
笑っていれば、場が盛り下がることもない。
みんなが楽しんでるのがわかるからこそ、余計に笑った。
思ってた以上にみんなは打ち解けたようで、狭い部屋の中は笑い声が絶えなかった。
ドリンクバーに行ったりお手洗いに立ったりとみんなが出入りを繰り返すうちにさとみ君とは席が離れた。
今は別の女の子が彼の隣に座ってずいぶん楽しそうに話し込んでいる。
ジェルくんは頻繁に冗談を言ったり、モノマネをしていた。
そんな彼にさとみ君は笑いながら突っ込みを入れる。
たまにジェル君に合わせて冗談を言ったりすると、みんなはどっと盛り上がる。
ジェル君に多少キツイ言葉を言っても、それがみんなの笑顔になる。
さとみ君に友達が多いのが分かった気がする。
誰に対しても態度が変わらないし自然体に見えた。
そして、本当に楽しそうに笑う。
裏表がないっていうのは、さとみ君みたいな人のことを言うんだろう。
彼を見ていると、へらへらと笑っているだけの自分がバカみたいだ。
なんだか、いてもいなくてもどっちだもいい存在みたいに思えてしまう。
卑屈な考えを振り払うように頭を振ると、目の前にタッチパネルが差し出された。
遠井さん
ころん
ころん
ジェル
ころん
ほとんど話してない僕にもジェルくんが気さくに話しかけてきた。
ちょっと、その会話は勘弁してほしい。
せっかく一度そらした話題なのに。
曖昧に笑いながらちらっとさとみ君の方に視線を向けると、何やら不機嫌そうな顔をしていた。
やっぱり、なんか怒ってる。
好きな人の趣味を否定するような発言は気分がよくないのだろう。
早くこの流れを断ち切らなくては。
ころん
遠井さん
ころん
突然先輩の名前を出されて、言葉がつっかえてしまった。
そういえば、確かにそういうこともあった。
先輩が好きだと言っていたから、色々調べていたことを思い出す。
本当はあまり好きになれなかったんだけど。
何度も聞いていたので、今でも歌詞はすべて覚えている。
ジェル
すかさずジェルくんが目を輝かせた。
そこはスルーしてほしかった。
ころん
ためらいがちに答えると、ほかのみんなも会話に入ってきて決まりが悪くなる。
けど、そんな顔はできないから適当に笑って話が終わるのを待つ。
なんでもいいから、すぐに曲を選べばよかった。
いつの間にか、先輩の話から、彼氏彼女の話になり、恋愛観みたいな話になっていく。
どんなに苦手な話でも、しばらくすればすぐに終わる。
しばらくと待っていた歌も再開し、遠井さんがアイドルグループの可愛い歌を歌うと、みんなが一緒に踊りだした。
主
主
主
主
主
主
主
コメント
3件
続き待ってます。
フォロー、連載ブクマ失礼します!