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逢魔伽 ひろな
49
かりんとう。
30
事件当日――夕方。
夕方の引き継ぎも終わり、当直の3人にてミーティング。
稲垣
稲垣由美 斑目の母方の祖母
金谷
金谷
金谷智子 ベテラン看護師
稲垣
金谷
藤巻
藤巻
藤巻敦 医師 医院長の一人息子
稲垣
稲垣
稲垣は新人であり、立場的に物事を強くは言えない。
いいや、彼が医院長の息子である以上、誰も文句は言えないのだが。
金谷
藤巻
藤巻
藤巻が部屋に戻ろうとする背中を眺めつつ、先輩の金谷が小声で呟く。
金谷
金谷
まだ院内のことさえ良く分からないが、一人息子の藤巻が良く思われていないことくらいは、さすがの稲垣にだって分かる。
確かに、横柄な部分はすでに何度か見てきたし、偉ぶっている様子もあったりする。
金谷
2人になった宿直室。
金谷の問いに頷く。
稲垣
稲垣
金谷
稲垣
自然と壁にかけられているナースコールの元へと向かう。
金谷
金谷
金谷
金谷
稲垣
ナースコールには対応している部屋の患者名が書かれている。
これを確認して、どの病室に向かえばいいのか判断するわけだ。
しかし、上から順に並んでいるネームプレートの内、ひとつだけ名前の書かれていない部屋がある。
その部屋は【開かずの病室】と呼ばれ、鍵がかかっているらしい。
金谷
稲垣
金谷
金谷
金谷
金谷
金谷
金谷
4は【死】を連想し9は【苦】を連想させることから、病室に4と9の番号を割り当てない病院は珍しくない。
研修で少し世話になった都会の大病院では、4階部分を5階と呼ぶ始末だ。
入院する側からすれば決して気持ちのいい数字ではないから、仕方がないのかもしれないが、4階をないことにしてしまうのは、力業が過ぎると稲垣は思っていた。
医院長
ナースステーション……とは名ばかりの詰め所で待機することしばらく。
夕食の配膳も終わり、そろそろ見回りをする時間になって、医院長が顔を覗かせた。
息子とは違い、気さくな性格で、スタッフにも優しく接してくれる。
もう歳はそれなりにいってはいるが、一人息子が心配なのか、まだまだバリバリの現役だ。
金谷
金谷
医院長
医院長
医院長
稲垣
金谷
金谷
2人が言うと、医院長は少しばかり寂しそうな笑みを浮かべる。
医院長
医院長
医院長
医院長
医院長はその言葉を残すと、手を挙げて病棟のほうへと姿を消した。
金谷
金谷
稲垣
稲垣
金谷
金谷
ドクターの部屋の扉を見つつ、両手で手を合わせる金谷の姿に思わず笑ってしまう稲垣。
しかしこの時の2人はまだ知らない。
つい先ほど見送った後ろ姿が、医院長の最期の姿であったことを――。