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事件当日――夕方。
夕方の引き継ぎも終わり、当直の3人にてミーティング。
稲垣
稲垣由美 斑目の母方の祖母
金谷
金谷
金谷智子 ベテラン看護師
稲垣
金谷
藤巻
藤巻
藤巻敦 医師 医院長の一人息子
稲垣
稲垣
稲垣は新人であり、立場的に物事を強くは言えない。
いいや、彼が医院長の息子である以上、誰も文句は言えないのだが。
金谷
藤巻
藤巻
藤巻が部屋に戻ろうとする背中を眺めつつ、先輩の金谷が小声で呟く。
金谷
金谷
まだ院内のことさえ良く分からないが、一人息子の藤巻が良く思われていないことくらいは、さすがの稲垣にだって分かる。
確かに、横柄な部分はすでに何度か見てきたし、偉ぶっている様子もあったりする。
金谷
2人になった宿直室。
金谷の問いに頷く。
稲垣
稲垣
金谷
稲垣
自然と壁にかけられているナースコールの元へと向かう。
金谷
金谷
金谷
金谷
稲垣
ナースコールには対応している部屋の患者名が書かれている。
これを確認して、どの病室に向かえばいいのか判断するわけだ。
しかし、上から順に並んでいるネームプレートの内、ひとつだけ名前の書かれていない部屋がある。
その部屋は【開かずの病室】と呼ばれ、鍵がかかっているらしい。
金谷
稲垣
金谷
金谷
金谷
金谷
金谷
金谷
4は【死】を連想し9は【苦】を連想させることから、病室に4と9の番号を割り当てない病院は珍しくない。
研修で少し世話になった都会の大病院では、4階部分を5階と呼ぶ始末だ。
入院する側からすれば決して気持ちのいい数字ではないから、仕方がないのかもしれないが、4階をないことにしてしまうのは、力業が過ぎると稲垣は思っていた。
医院長
ナースステーション……とは名ばかりの詰め所で待機することしばらく。
夕食の配膳も終わり、そろそろ見回りをする時間になって、医院長が顔を覗かせた。
息子とは違い、気さくな性格で、スタッフにも優しく接してくれる。
もう歳はそれなりにいってはいるが、一人息子が心配なのか、まだまだバリバリの現役だ。
金谷
金谷
医院長
医院長
医院長
稲垣
金谷
金谷
2人が言うと、医院長は少しばかり寂しそうな笑みを浮かべる。
医院長
医院長
医院長
医院長
医院長はその言葉を残すと、手を挙げて病棟のほうへと姿を消した。
金谷
金谷
稲垣
稲垣
金谷
金谷
ドクターの部屋の扉を見つつ、両手で手を合わせる金谷の姿に思わず笑ってしまう稲垣。
しかしこの時の2人はまだ知らない。
つい先ほど見送った後ろ姿が、医院長の最期の姿であったことを――。