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夜のリビングは、 少し静かすぎた。
時計の針の音だけが、 やけに響いている。
ジェル
ななもり。
ぷちぷち
ひなこは、 ソファの端で静かに紅茶を飲んでいた。
あまり喋らない。
でも、 時々じっと、 部屋の奥を見る。
……誰かを探してるみたいに。
莉犬
空気を変えたくて、 少し大きめに言った。
返事を待たず、 廊下へ向かう。
……なんか今日、 変だった。
写真見た時の空気。
さとみくんの顔。
るぅちゃんの沈黙。
そして。
“見えてる人”が、 増えてる気がする。
脱衣所の前で、 ふと足を止めた。
……声。
小さい。
誰かが、 喋ってる。
さとみ
ころん
さとみ
ころん
莉犬の背中に、 ぞわりと鳥肌が立つ。
……いる。
そこに。
廊下の先、 キッチンの前。
さとみくんが、 誰かに向かって笑っていた。
その隣。
一瞬だけ。
水色のパーカーが、 見えた気がした。
莉犬
目を見開く。
でも、 瞬きした瞬間、 もう何もいない。
さとみくんだけが、 そこに立っていた。
さとみ
莉犬
さとみ
莉犬
喉が、 うまく動かない。
さとみくんは、 少し不思議そうな顔をしたあと、 また隣へ視線を向けた。
さとみ
ころん
——聞こえた。
今、 確かに。
莉犬の呼吸が止まる。
声。
ころちゃんの声。
でも、 そこには誰もいない。
莉犬
その瞬間。
空気が、 ぴたりと止まった。
さとみくんが、 ゆっくり振り返る。
さとみ
莉犬
しまった。
言っちゃった。
さとみくんの目が、 揺れる。
期待みたいに。
壊れそうなほど、 弱い光みたいに。
さとみ
莉犬
答えられない。
答えた瞬間、 何かが変わる気がした。
沈黙。
その時。
ひなこ
後ろから、 静かな声がした。
振り返る。
いつの間にか、 ひなこが立っていた。
莉犬
ひなこは、 まっすぐ廊下の奥を見ていた。
誰もいない場所を。
ひなこ
その言葉に、 空気が冷える。
さとみくんが、 ゆっくり目を見開いた。
さとみ
ひなこ
静かな返事。
そして。
ひなこは、 小さく呟いた。
ひなこ
莉犬
ひなこ
そこで、 言葉が止まる。
奥の暗闇から、 ふわりと風が吹いた。
その瞬間。
確かに、 笑う声がした。
ころん
莉犬は、 その場から動けなかった。