テラーノベル

テラーノベル

テレビCM放送中!!
テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

例えば魔法が使えたら

一覧ページ

「例えば魔法が使えたら」のメインビジュアル

例えば魔法が使えたら

3 - 君を支えられるように

♥

2,041

2023年01月06日

シェアするシェアする
報告する

注意!! ・青黒大前提!(ココ重要) ・他のメンバーさん達には特にカプ要素を考えていませんが、書いてる人が赤桃・白水脳なのでそう見えるところもあるかもしれません💭 ・nmmn ・地雷さんはUターン⚠️

初兎と喧嘩したぁ?

目の前に座るあにきが、目を丸くしてそう声にした。

・・・うん

小さく頷けば、何故かあにきは感心した様に「は〜」と声を漏らす。

お前らが喧嘩なぁ・・・。考えられんわ

僕らだって、偶にはするよ

しょんぼりした顔でそう言われてもな

わしゃわしゃと僕の頭を撫でる大きな手。そんな些細な行動で、沈んでいた心が水面から顔を出す。

原因とか、聞いてええの?

・・・

原因は何かと率直に聞くのではなく、こうやって機会を伺ってくるその言葉に、彼の性格が滲んでいた。

迷惑をかけ過ぎたくないし、早く答えなければ。そう思うのに、僕の唇はまるで接着剤でつけられたかのようにくっついて、動くことはなかった。

重たい口をどうしようかと考えていると、あにきが「りょーかい」と何を察したのか呟く。

んじゃ、言いたい時に言え。いつでもええから

ぽん、と再び頭に置かれた彼の手。微かに伝わってくる温もりに、いつの間にか強張っていた体から力が抜けていくようだった。

休日に突然押しかけてきた僕を、あにきは嫌な顔一つ見せず迎え入れて。

結果だけ伝えて原因を教えない僕に、文句の一つもない。

その優しさに、なんだか泣きそうになった。

じゃ、俺部屋に居るから

・・・えっ?

立ち上がったあにきを、思わず間抜けな声を出して見上げた。

ん?邪魔やろ?ここに居っても。部屋行って編集でもしとるから、なんかあったら言ってや。リビング好きに使ってええし、腹減ったら適当に冷蔵庫漁ってええよ

・・・

僕が唖然としている間に、あにきはじゃあなとひらひら手を振って部屋へと入って行ってしまった。

求められた訳じゃないのなら下手に干渉し過ぎず、より多くの選択肢をこっちに受け渡す。

そんな行動を選んだあにきにはやっぱり長年の経験があるのだろう。僕には出来ない、考えられないような行動を、彼は簡単に選ぶことが出来る。

優しい彼には、正直頭が上がらない。

彼はいつだって僕の相談に乗ってくれる。それは歌の技術から音楽のこと、そしてこんなプライベートのことまで。

初兎ちゃんとの些細な言い合いにせよ、ちょっと重たい喧嘩にせよ。僕が何かあった時に頼るのはあにきだった。

そんな僕に、あにきはいつだって確実な助言をくれる。

優しい彼が持つそんな力を、僕は心から尊敬して、感謝していた。

だから、いつもこっちから頼っておいて勝手かもしれないけど、思うことがある。

・・・僕だって、あにきの支えになりたい。

そんな希望を抱くようになったのは、果たしていつからだったか。

いつだって大きくて頼もしいと思っていた彼の背中が、目を離したら消えてしまいそうなくらいに儚く見えた時?

芯のある歌声を響かせる彼が、聞き取れるか取れないかギリギリくらいの掠れた声を放つことがあると知った時?

前を向いて僕達の背中を押してくれる彼が、実は人一倍後ろを気にしてしまっていることに気付いた時?

彼の音楽への熱に比例して、その不安も高まっていると知った時?

いつからかなんて、もう分からないけど。

完全なんて、完璧なんてないことを知った。寧ろあにきはその逆で、頼もしい彼は実は一等脆いのだと知った。

それでも長い間それに気付けなかったのは、僕が彼を支え切れていなかったからだ。

大人組は知っているんだろうか。知ってるよなぁ。リーダーのないちゃんは勿論、気付けばいつもあにきのそばにいる青い彼も。

持ちつ持たれつの関係って、彼らみたいなことを言うんだろうな。

・・・それに比べて、僕は。

あの頼もしい背中に寄りかかってばかりで、こっちが支えてやったことなんてきっと無い。

・・・魔法の一つでも使えたらなぁ

なんそれ?

っわ!?

聞こえる筈の無い彼の声が背後から飛んで来て、ビクッと肩を揺らした。

あにき!?なんでここに!?

いやここ俺の家

そういうことじゃなくて!!

悪い悪い、とあにきが面白そうに笑った。絶対わざとだ。

スマホ使おうと思ったんやけど置きっぱやったんよ

そう言ってあにきが指差したテーブルの上には、確かに彼のスマホがぽつんと置き去りにされていた。

そういや、魔法ってなんのことなん?

えっと・・・

ゲームかなんかの話?

首を傾げる彼に、まさかあにきの為の魔法だよなんて言える訳もなくて。

・・・魔法、使えたら良いのになーって

我ながら答えになってない解答をしたと思う。けどそんな僕の言葉をあにきは深く言及することはせず、魔法かぁ。と呟いた。

そういやこの前りうらもそんなこと言ってたな。魔法がどうのって

えっ

最近流行ってるん?

まさか、りうちゃんも?驚きの事実に、僕は推しとの以心伝心を喜ぶよりも、みんなきっと思うことは同じなんだろうなぁと笑みを溢した。

彼の為なら、魔法だって使いたくなってしまうのだ。

今日3回目の、頭に置かれた手。

そっとあにきを見上げると、彼は優しく目元を和らげていた。

ま、さっきよりも元気そうで良かったわ

・・・!

彼の笑顔は何処か安心したようで、嬉しそうで。

注がれる視線は酷く優しくて、僕には貰い切れないくらいの。

っ、あにき!ありがとう!

・・・おー。なんか解決したっぽいな

立ち上がった僕に、また察してくれたらしいあにきが頷いた。

うん、押しかけたのに原因も深く話さずごめんね

ええよ別に、暇してたしな。気にならないっつったら嘘になるけど、そんなん話してるより早く仲直りする方がええやろ

ほら、行ってこい。なんて、眩しい笑顔が僕の背中を押す。

・・・うん、ありがとう。初兎ちゃんのところ行ってくる!

おー、気を付けてな

僕の後を追いかけて、あにきは玄関まで見送りに来てくれる。

・・・あ。あにき!

今まさに出て行こうとしていた僕に片手を上げていたあにきが、突然振り返った僕にきょとんとした表情を浮かべた。

あにきに何かあったら、僕頑張るから!いつでも頼ってね!頼ってくれなかったら、えーっと・・・きのこ食べさせるから!!

覚えといて!じゃあねー!と彼の返事も待たず、僕はその場を後にした。

魔法でもなんでもいい。どうか、いつか君を支えられるように。

そんなささやかな願いを胸に、僕は走り出した。

颯爽と去って行ったその背中を、唖然としたまま見送った。

・・・ふは、小学生かよ

静かになった玄関で、悠佑はそっと口元を緩める。

・・・もう充分やって、気付いてないんやろなぁ

そんな独り言は、これでもかというほどに幸せそうな声色だった。

黒さん生誕祭まで後4日

例えば魔法が使えたら

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

2,041

コメント

4

ユーザー

わあああ最高。 最後の黒さんの幸せそうな感じとか、水くんの悩みに深く干渉しすぎずに寄り添うところとか好き。 あと水くん、よく気づいてくれました。我らが旦那はいっちばん強くていっちばん弱いんだよ!!(性癖ですあと表現素敵すぎました) 投稿お疲れ様です(*^^*)

ユーザー

最高すぎます!!お疲れ様です! 頼ってくれなかったらきのこ食べさせる、っていうのが水くんらしいですね…😊 白くんと水くんの喧嘩を見守る、保護者的な存在の黒くんが不安になりがち、ってことを水くん達が分かってるの素敵すぎる…✨

ユーザー

「例えば魔法が使えたら」ってそういうことだったんですね!!もしかしてなんですけど、明日って白くんと黒くんのお話ですかね!!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚