甲斐田さんに連れてこられた店は、前を通ったことはあっても入ろうっていう選択肢に上がらないような、高級そうな喫茶店だった。
kid
遠慮せずに頼んでくださいね。デザートとかも。ここのパフェとかケーキも、美味しいんですよ。

甲斐田さんがメニュー表を差し出してくれる。開いて見てみるが、コーヒーだけで4桁するって…何?
knmc
あー…じゃあ。季節のモンブランのケーキセットをカフェラテで。

kid
あ、それも美味しそうだね。んー。すみませーん。注文お願いしまーす。

甲斐田さんは店員さんを呼ぶと、僕のケーキセットと、自分の分のさつまいもタルトとポットティーを注文してくれた。
kid
さて。わざわざ足を運ばせてしまって本当にすみませんでした。こちらが剣持さんのお財布だとおもいます。お確かめください。

甲斐田さんが鞄から取り出したのはアイロンの効いたハンカチに包まれた僕の財布だった。
僕も慌ててポケットから甲斐田さんの財布を取り出す。
knmc
すみません、むき出しで。こちらお返しいたします。

kid
確かに。ありがとうございます。お財布なくて困ることなかったですか? ほんとにすみませんでした。

knmc
いえ、とくに使うこともなく家まで帰ってしまったので。甲斐田さんこそ、大丈夫でしたか? ていうかあの、僕の方が年下ですし、敬語とか…

そういうと甲斐田さんは、そう? まあ、堅苦しいのもあれだよね、と笑った。
kid
僕の方は見ての通り、ゲーセン専用のお財布だったからね。むしろあの書き込みを見るまで気づいてなかったんだよ。

knmc
そんなにすぐあの書き込み回ってきてたんですか? 検索したとかじゃなくて。

kid
まあ、あのタグはよく使うタグだしね。ゲームカード見て気が付いたの? ほんとファインプレイ。でなきゃたぶん、次にゲーセン行ったときに慌ててたんだと思うよ。

knmc
そうなんですね。僕は音ゲーとかぜんぜんやらないけど、友達が結構やっててカードも持ってたから、そうなのかなって思って。

そうこうしているうちに、テーブルに注文のケーキとドリンクが運ばれてきた。
kid
じゃあ、いただきましょうか。ほんと美味しいんだよ、ここの。
