凛花
凛花
道端で読んでいた本を閉じようとすると
さっきまであったはずのしおりが無い。
おかしいなぁ…
さっきまで人差し指と中指で挟んでいたのに
どこ行ったんだろう
凛花
後ろを振り返る
そこにはコンクリートの地面が広がる
無い…
プラスチックで造られたしおりが飛ぶはずないのに。
凛花
ふと見た腕時計を見て
あわてて走り出した
凛花
静香
親友の静香に相談すると
わかったような、わからないような
ため息交じりの返事が返ってきた
凛花
静香
静香
凛花
ド正論を言われ
思わず視線を泳がせた
静香
静香
静香
静香
静香
さすが静香だ
困った人を放っておけない性格は
小さい頃から変わっていない
凛花
精一杯目を瞑り
パンっと手を合わせた
静香
わぁ…!
めったに笑わないクールな静香の笑顔だ…!
笑った顔はいつもの数百倍美しい
静香
凛花
静香がスッといつものクールな顔に戻った
授業の鐘が鳴ったのだ
静香はトットットと小走りで自分の席に向かう
私は開きたくもない教科書を
ゆっくりと開いた
凛花
昼休み
うっかり寝そうになったところを
静香がトンと肩を叩いてくれた
静香
静香
凛花
あながち間違いではない
ノートと目は開いたまま
頭はどこかに飛んでいってしまっていた
静香
静香
理由をズバリ当てられて
思わず静香を凝視する
静香
静香
静香がニコッと微笑むと
頭をポンポンと撫でた
行動がイケメンだ
静香が男だったら
間違いなく告白しているだろう
静香
静香
凛花
凛花
静香
静香
お弁当のプチトマトをつまみ
こっちに突きだしている
凛花
凛花
ひと噛みすると溢れ出る果汁(?)
種のようなものがプチプチ出てくる
これが嫌いな人も多いらしいが
私は大好物だ
静香
静香
あぁ…確か前に静香が言っていた気がする
“ピンチをチャンスに”
“悩みを可能性に”
“諦めを努力に”
なかなか染みた
私が辛いときに、誰よりも速く気づき
誰よりも速く駆けつけてくれた
そんな静香の言葉が
私の心をほどいてくれた
凛花
凛花
静香
静香
凛花
凛花
静香
凛花
お弁当のご飯を勢いよくかきこんだ
…大丈夫見つかる
そう心の中で呟いた
静香
静香
静香
凛花
お茶で一気に流し込んだ
あぁ…悩みも流し込みたい
そう思いながら
のっそりと教科書を机に出した
静香
凛花
待ちに待った放課後
あの落としたと思われる道を
静香と二人で歩いた
静香
静香
凛花
凛花
凛花
静香
静香は冗談っぽく言ったが
無くしたしおりは意外と高そうなので
誰かが届けてくれてるかも
と 思い、最寄りの交番に行くことにした
本人も驚いているが
提案した静香も驚いている。
そう、
しおりは交番にあったのだ
凛花
静香
静香
静香
凛花
凛花
凛花
静香
静香
静香って本当律儀だよなぁ
ちょっとお嬢様なご家庭で育ったからか
肩につくくらいの髪は
いわゆるユルフワだし、
それに髪がすごくツヤツヤなのだ
それに律儀で勉強もできる
これを見逃さない男子はいないだろう
一方私はというと
一般庶民の家庭で育ち
肩まで伸ばした髪を耳より下で縛った
一般的な髪型だし
何より私は体が強い
トラックに10メートル吹っ飛ばされても
かすり傷
階段を30段ほど転げ落ちても、
いくら頭を打ち付けようが
無傷なのだ
そのたび病院に搬送されても異常無しの神童で
近くの市民病院ではちょっとした有名人だ
おっといけない、そんなことどうでもよくて
静香にお礼を言って帰らなければ
凛花
静香
凛花
静香
静香
凛花
凛花
静香
静香
そう優しく言う静香の顔は
あのときの父によく似ている
凛花
凛花
グサッ
一瞬の出来事だった
何が起こったかわからない
目の前で静香が血を流して倒れている
あの時の記憶が蘇る
あの時は父が優しく笑ってしおりを渡してくれた時だった
くろずくめの男に刺されたのは…
私はいつからか知っていた
自分が怪我した分
私には影響がなく、それがためられ
身近な人の命を奪うことを
いつからか、知っていた
私は一生幸せになれない
こうして目の前で死を見るのは2回目
血を見るたびに思い出した恐怖
私は一生忘れられない
パタン―
夏蓮は、道で歩きながら読んでいた本
『海の深さと、星の輝き』という本を閉じた
この本は一つのしおりをきっかけに
ある少女の周りの人が殺されてゆくミステリーな本で
タイトルは、海の深さと星の輝きという
近くも遠い幸せと不幸を表した意味だそう
そんなお気に入りな本を閉じたとき、気がついた
夏蓮
夏蓮
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