いつもの通学路。後ろから足音が聞こえてくる。
雨宮 透
はよっ!
橘 六花
わっ…!?
橘 六花
んだよ。
雨宮 透
相変わらずだなァ…
橘 六花
急に驚かすお前が悪い。
雨宮 透
はぁ!?…それよりお前、今日はやけに早く来てんな〜。
橘 六花
今日は大事な共同作業だからな。早く来なきゃいけないんだ。
雨宮 透
それにしても、バスケ部と同じ時間ってヤバくね?
橘 六花
うるせぇな。いいんだよ、美術部だって立派な運動だ。体も使うし、頭も使う。ただ動いてるだけのスポーツとは違うんだよ。
雨宮 透
お前なぁ…俺らだって頭使うんだぜ?どこにパスすればいいとか、どこに動けばいいとか。一つ一つの行動で、勝つか負けるかが決まる。仲間の足引っ張る引っ張らないもこれで決まるんだぜ?
橘 六花
こっちだって。どこに線を描いて、どこに影を描くかで光の当たり方も、見え方も全然違う。どこに色置くのかで雰囲気も変わる。線が描けないとまず話にならない。
雨宮 透
いーや、こっちの方が頭使うね。
橘 六花
美術部の方だ!
雨宮 透
バスケ!
橘 六花
美術!
橘、雨宮
ぐぬぬぬぬぬ…
雨宮 透
もうどっちも頭使うって事で…
橘 六花
あぁ。
こうして朝のしょうもない言い合いが終わった。
おかしい…授業が終わったのに、アイツが来ない!
橘 六花
松山。
松山 薫
お、何?
橘 六花
アイツはどこいった?
松山 薫
あぁ、ほら、あそこ。
目を向けると、品川さんと話している雨宮が見えた。
松山 薫
ずっりぃよなぁ、付き合えるなんてよォ!?
橘 六花
そうだな、羨ましいよ…
雨宮 透
六花〜!
満面の笑みで、こっちに走ってくる。
橘 六花
んだよ。
雨宮 透
聞いて!品川さんとデートする事になった!
橘 六花
へー、おめっと。
松山 薫
あのさ、お前ら話すのはいいけどよ?その夫婦漫才みたいなのやめろ。
橘 六花
うるせぇこっちはそんなのしてる気はねぇんだよ。黙って聞いとれ。
松山 薫
つめてぇ。
雨宮 透
ごめんなぁ、いっつもこんなんなんだよコイツ。
橘 六花
雨宮五月蝿い。
雨宮 透
つかさぁ、いつになったら透呼びしてくれんの?
橘 六花
はぁ?
雨宮 透
いっつも雨宮じゃんよぉ!
うるさい、こっちは心の中で呼ぶだけで精一杯なんだよ。雨宮で我慢しろや。
橘 六花
俺を満足させたらいくらでも呼んでやる。
雨宮 透
お前のその「満足」の基準がわかんないなぁ透さんは。
松山 薫
はぁ…そういう会話は違うところでしてくれよな。イチャコラ漫才は俺が虚しいから。
橘 六花
なるほど、童貞の僻みか。
松山 薫
俺だって好きで童貞貫いてるんじゃねぇんだよ。
雨宮 透
そういう六花は女性経験あんのかよ?
橘 六花
あるに決まってんだろ。この俺だぞ?
雨宮 透
あーはいはい聞いて悪かったよイケメン君。
松山 薫
うるせぇイケメンツートップ。
橘 六花
3位の叫びがこちら。
雨宮 透
ドドン!
松山 薫
やめて、ツートップで俺を殺しにかからないで。
橘 六花
大丈夫俺らがイケメンなの当たり前だから。
雨宮 透
ちゃっかり 俺ら にしてくれる所六花の優しさを感じる。
松山 薫
それな。
松山 薫
なーなー、六花ー…もうお前でいいから嫁に来いよ〜…
橘 六花
お前等々頭イカれたのか。
松山 薫
男と付き合うとか考えられねえけど男でいいんだよ…お前となら上手く行けそうだし。
橘 六花
うわぁ…
雨宮 透
俺の六花だぞ!
橘 六花
は?
松山 薫
うわ、何言ってんのコイツ。
え、俺のって…
無理ッ…!
雨宮 透
六花は俺の…
俺は学校のドアから飛び出した。
雨宮 透
親友…え?
松山 薫
あーあ、お前責任取れよな。
雨宮 透
は?俺はただ、六花は親友だって…
松山 薫
お前の言い方だと、「俺の好きなやつ取らないでくれよ!!」って感じだけどな。
雨宮 透
ぉ、俺!
松山 薫
とんでもねーことになったな…
橘 六花
はぁ、はぁ、はぁ…
なんっなんだよアイツ!
俺の、ってどういう事だよ!?
勘違いしてしまうだろうが!お前にゃ品川さんが居るだろうが!
俺なんかに掛けていい言葉じゃないんだよ!それは!
橘 六花
もう、なんなんだよ…