ピュヴル
ルカからの助言で異世界に行くことになった。スライブ王国に貯蔵してあるマナバッテリーを数個使えば簡単に異世界に行けるらしい。
ここに来た目的は強い奴を見つけて殺すこと、そして突然消えたザフィーアを探すこと。
ザフィーアは良いライバルであり、良い遊び相手だった。いつかはザフィーアを我が物とするのが俺の夢になっていた。
ベタ
ピュヴル
ベタ
ピュヴル
こいつはベタ。ベタベタとどこまでもくっついてくるストーカーだ。
興味の無いことにはとことん興味が無いし、めんどくさがり屋だ。だが認めたくはないが俺よりも強い。
気づいたら後ろにいることが多い。
ベタ
ピュヴル
西の魔王、ルカに刻印を刻まれると、正式に西の魔王の仲間となれる。潜在能力を引き出し、眠っていた特殊能力を発現することが出来る。
俺だったらこの触手の能力。体の一部を触手に変えることが出来たり、最近では好きなところに触手を生やして捕まえることも出来る。
そして強い人間や魔物を倒す度に強くなる。
だが、もちろんデメリットもある。ルカにいきなり呼び出されたり、平日は魔物や人間を絶対に殺さないといけない。
ベタ
ピュヴル
ピュヴル
ベタ
ベタ
魔物
ピュヴル
ベタ
右腕を触手に変え、魔物を絞め殺した。
ピュヴル
ベタ
ベタ
そう言い残すとベタはローラースケートですいすいと離れていった。
ピュヴル
その後もそこら辺に蔓延る弱い魔物達を倒していった。退屈すぎてあくびが出る。
周りにベタが居ないことを確認して、そこから去った。
魔力が少ない世界というのはこんなにも静かで、平和な世界なのか。
ルカに申し訳なくなるな。
……もうあいつを置いて帰ろうか…
ふと、マナバッテリーを見てみると帰る分のバッテリー残量がなくなっていた。
ピュヴル
様々な不安が俺を襲った。
ベタ
ピュヴル
全てはベタのせいだった…俺が元の世界に戻れなくなったのも。
ピュヴル
ベタ
ベタ
ピュヴル
ピュヴル
まずいことになってしまった。
俺は元の世界に戻れないのか…?
ピュヴル
ベタ
当たり前のように後ろから話しかけてきたベタにはもう慣れてしまった。
ピュヴル
ベタ
ピュヴル
ベタ
ベタ
ベタは空のマナバッテリーに魔力を注ぎ始めた。底にエネルギーが少し溜まったようだ。
ピュヴル
ベタ
ピュヴル
ベタ
ベタ
ピュヴル
ベタ
ベタ
ピュヴル
ベタ
ベタ
ピュヴル
ベタ
スライブ王国…数ある王国の中でも異質な王国だ。1番普通な王国だと思われがちだが…技術がずば抜けている。
スライブ王国がいつ船に攻め込んで来るかも分からない。
そんな愚かな人間共に負けないよう、強くなるためにここへやってきたっていうのに。
ベタ
ベタは何も考えず生きている…というよりかは他人に全てを任せている。そのせいで俺は今こんなに苦労しているんだがな。
こいつは退屈が嫌いだ。だが、興味が無いことも嫌いだ。なんてめんどくさい生き物なんだ。
先のことも考えず、ただ今を生きている。計画性のかけらもない寄生虫のようだ。
ピュヴル
ベタ
ラーメンというのを啜ると意外に美味しいものだった。異世界の食べ物もまあ悪くはない。
ピュヴル
ベタ
魔物
ピュヴル
俺の触手の粘液は10分経つと人をも溶かす粘液になれる。どれだけ離れていてもそれは発動する。もちろん溶かす粘液にしないこともできる。
もう絞め殺すのも面倒になった時に便利だ。
魔物
10分後、粘液を付けた魔物達が次々と溶けていった。
ベタ
ピュヴル
ピュヴル
餅の魔物
ベタ
ピュヴル
ピュヴル
ベタ
ベタ
そのつまらない考察を流して、俺は餅の魔物に突っ込んで行った。
右腕を触手にし、鞭のように振るったが…全く効いていない。
相性が悪すぎる…
気がつくと腕が餅に取り込まれていた。
ピュヴル
ベタ
ピュヴル
ベタ
ピュヴル
ベタ
ベタが息を吐くと周りには泡のようなカッターが現れ、それは器用に俺を避けて餅の魔物を貫通していく。
餅の魔物
ベタ
ピュヴル
ベタは飛んできた餅の魔物の一欠片を食べた。
ベタ
くい込んでいた腕は簡単に抜けるほど餅の魔物は細切れになっていた。
餅の魔物
ベタ
ピュヴル
ベタ
餅はもう塵となっていた。
ピュヴル
ベタ
ベタは眼鏡を投げ捨ててベッドに沈んだ。
ピュヴル
床に落ちた眼鏡を広い、適当な所に置いた。
ベタ
ピュヴル
なんだかんだ言って、俺はこいつに頼りきりだ。そうとは言え計画外のことをするのは許容範囲を超えている。
ベタを見た奴は全員こう言う。髪が綺麗だとか、可愛いだとか。こいつの性格はその真逆だ。めんどくさがり屋で気分屋でストーカーで…自己中野郎だ。
マナバッテリーに今日の余った魔力を注ぎ、蓋を閉めた。
ベタ
ピュヴル
ベタ
ベタ
ベタはルカのお気に入りだ。ベタもまたルカに助けられたからか、シンプルに尊敬しているそうだ。
ベタ
ピュヴル
朝。
何故かは知らないが、いつもベタの方が先に起きている。
俺は重い体を起こしてベッドの端に座り、散らばった服を集めた。
ピュヴル
ベランダには煙草を吸うベタの姿がある。
ベタ
ピュヴル
はだけたシャツから見える項には目立ったルカの刻印が見える。
その綺麗で長い髪は朝の微風に揺れて、普段は隠れている片目が髪の間から見える。
ベタ
ピュヴル
ベタ
こいつのことをほぼ全て知ったつもりでいたが、今更全然聞いた事ない情報が出るとは思っていなかった。
ベタ
ピュヴル
ベタはまた気だるげに煙草を吸いだした。
ベタ
ピュヴル
ベタが差し出したライターの火に咥えた煙草を近づけた。
そんなどこか憂鬱で、冷めきった静かな朝。異世界でもそれは同じだったようだ。