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ピュヴル

…ん、着いたか。

ルカからの助言で異世界に行くことになった。スライブ王国に貯蔵してあるマナバッテリーを数個使えば簡単に異世界に行けるらしい。

ここに来た目的は強い奴を見つけて殺すこと、そして突然消えたザフィーアを探すこと。

ザフィーアは良いライバルであり、良い遊び相手だった。いつかはザフィーアを我が物とするのが俺の夢になっていた。

ベタ

おーここが異世界か。

ピュヴル

はあ、またお前か…ストーカー野郎。

ベタ

ピュヴルが面白そうなことしてそうだったから、着いてきた。

ピュヴル

は?勝手に着いてくるなよ…

こいつはベタ。ベタベタとどこまでもくっついてくるストーカーだ。

興味の無いことにはとことん興味が無いし、めんどくさがり屋だ。だが認めたくはないが俺よりも強い。

気づいたら後ろにいることが多い。

ベタ

またザフィーア探してんのか?それともただ強い奴を探しに来ただけか?

ピュヴル

どっちもだ。お前は関わるな。

西の魔王、ルカに刻印を刻まれると、正式に西の魔王の仲間となれる。潜在能力を引き出し、眠っていた特殊能力を発現することが出来る。

俺だったらこの触手の能力。体の一部を触手に変えることが出来たり、最近では好きなところに触手を生やして捕まえることも出来る。

そして強い人間や魔物を倒す度に強くなる。

だが、もちろんデメリットもある。ルカにいきなり呼び出されたり、平日は魔物や人間を絶対に殺さないといけない。

ベタ

とりあえずさー今日の仕事終わらせようぜ。

ピュヴル

…そうだな。

ピュヴル

…おい、全く魔物がいないぞ。

ベタ

てか、魔力の濃度が0.00001%ぐらいしかないね。変な世界だな。

ベタ

…あ、でもこの先に魔力が集まってる区域がある。

魔物

ンボォオオオ

ピュヴル

ようやくか…

ベタ

お先にどーぞ。

右腕を触手に変え、魔物を絞め殺した。

ピュヴル

お前も魔物を探してこい。

ベタ

あ、絶対その隙に逃げる気だ…

ベタ

まあピュヴルが逃げたとしても、どっかから現れるから…覚悟しとけよー

そう言い残すとベタはローラースケートですいすいと離れていった。

ピュヴル

はあ、やっとか。

その後もそこら辺に蔓延る弱い魔物達を倒していった。退屈すぎてあくびが出る。

周りにベタが居ないことを確認して、そこから去った。

魔力が少ない世界というのはこんなにも静かで、平和な世界なのか。

ルカに申し訳なくなるな。

……もうあいつを置いて帰ろうか…

ふと、マナバッテリーを見てみると帰る分のバッテリー残量がなくなっていた。

ピュヴル

………は?

様々な不安が俺を襲った。

ベタ

あ、それ俺がこっちに来た分だ。

ピュヴル

……………あ???

全てはベタのせいだった…俺が元の世界に戻れなくなったのも。

ピュヴル

……ベタ、お前絞め殺されたいか?

ベタ

あはは、ごめんごめーん。

ベタ

とりあえず俺お腹すいたんだけどー

ピュヴル

…お前はもう黙ってろ、無能なストーカー野郎が…

ピュヴル

一人で野垂れ死んでおけ!

まずいことになってしまった。

俺は元の世界に戻れないのか…?

ピュヴル

…はああ、こんな平和な世界に居たら、頭がおかしくなりそうだ。

ベタ

元の世界に戻れる方法があると言ったら?

当たり前のように後ろから話しかけてきたベタにはもう慣れてしまった。

ピュヴル

…そんなものないだろ。

ベタ

そのマナバッテリーの仕組みって知ってる?

ピュヴル

…あまり知らないが。

ベタ

そのバッテリーに魔力を込めるんだよ。

ベタ

こうやって…

ベタは空のマナバッテリーに魔力を注ぎ始めた。底にエネルギーが少し溜まったようだ。

ピュヴル

…つまりこれは魔力を注ぐことでまた使えるようになるんだな。

ベタ

そーそー。

ピュヴル

いい情報だな、ありがとう。じゃあな。

ベタ

ちょ、ちょちょ…行かないでよー

ベタ

それが溜まるまで何年かかると思ってんのー?しかも一人で溜めるとか言わないよね。

ピュヴル

はあ…いつまでもお前に頼る訳にはいかないだろ。

ベタ

別に俺は頼ってもらう為にここにいる訳じゃないんだけど。

ベタ

ピュヴルの周りは楽しいことが多いからさ。だから着いてってんのー

ピュヴル

とんだ暇人だな。勝手にしろ。ただ、俺の邪魔はするなよ。

ベタ

へいへい。

ベタ

ん〜異世界のごはん美味しいな〜

ピュヴル

ルカから貰ったカードがあって良かったな。

ベタ

まさか異世界でも使えるなんてな。これもスライブ王国製なんだろ?

スライブ王国…数ある王国の中でも異質な王国だ。1番普通な王国だと思われがちだが…技術がずば抜けている。

スライブ王国がいつ船に攻め込んで来るかも分からない。

そんな愚かな人間共に負けないよう、強くなるためにここへやってきたっていうのに。

ベタ

なーに難しい顔してんだよ。らーめんってのが冷めちまうぜー?

ベタは何も考えず生きている…というよりかは他人に全てを任せている。そのせいで俺は今こんなに苦労しているんだがな。

こいつは退屈が嫌いだ。だが、興味が無いことも嫌いだ。なんてめんどくさい生き物なんだ。

先のことも考えず、ただ今を生きている。計画性のかけらもない寄生虫のようだ。

ピュヴル

半年以内にこのマナバッテリーを埋めきる。なるべく魔法の使用は控えろ。

ベタ

うわ、急だな。てか俺の分までやるなんて、意外と優しいんだな。

ラーメンというのを啜ると意外に美味しいものだった。異世界の食べ物もまあ悪くはない。

ピュヴル

はぁ、ここら辺にも弱い魔物しかいないな。

ベタ

でも一応ここら辺は魔力が結構集まってるから、油断はしない方がいいよー

魔物

ボエエェエ

ピュヴル

こいつは粘液で殺しておくか。

俺の触手の粘液は10分経つと人をも溶かす粘液になれる。どれだけ離れていてもそれは発動する。もちろん溶かす粘液にしないこともできる。

もう絞め殺すのも面倒になった時に便利だ。

魔物

ブ、ブアアァアアァアア!

10分後、粘液を付けた魔物達が次々と溶けていった。

ベタ

うわぁ、俺にはやんないでね。スライムにはなりたくないから。

ピュヴル

ふん、それはお前の行動次第だな。

ピュヴル

もう既に最悪だが。

餅の魔物

ムッヂィィィィイww

ベタ

…ん?なんかめっちゃ粘度高い餅が歩いてる。

ピュヴル

異世界だとこういうイレギュラーは稀にしか見ないが…

ピュヴル

この世界だとよくある事なのだろうか。

ベタ

どうしてこんな魔物なのか…当ててみようか。

ベタ

きっと餅を詰まらせて死んだ人が生み出したんだ…うん、そうに決まってる。

そのつまらない考察を流して、俺は餅の魔物に突っ込んで行った。

右腕を触手にし、鞭のように振るったが…全く効いていない。

相性が悪すぎる…

気がつくと腕が餅に取り込まれていた。

ピュヴル

おい、ベタ!お前のカッターならこいつを切れるだろ!

ベタ

そーだよ。

ピュヴル

じゃあ早くやれ!

ベタ

えー無様なピュヴルは見てて面白いからさー

ピュヴル

おい、溶かすぞ。

ベタ

あっまじですみませんでした…

ベタが息を吐くと周りには泡のようなカッターが現れ、それは器用に俺を避けて餅の魔物を貫通していく。

餅の魔物

ムッヂィィィイィイ?!!?

ベタ

細切れにした方が食べやすいよね。

ピュヴル

食べるなよ。絶対お腹壊すぞ。

ベタは飛んできた餅の魔物の一欠片を食べた。

ベタ

あ、これ意外とおいしい。消える前に食べれて良かったー

くい込んでいた腕は簡単に抜けるほど餅の魔物は細切れになっていた。

餅の魔物

ム…ムッヂ……………ィ…

ベタ

…あっ、やばい…なんかお腹いたい…あっ、気持ち悪くなってきた…

ピュヴル

だから言っただろ。この馬鹿。

ベタ

うーーでも美味しかったから…それでいいんだ…

餅はもう塵となっていた。

ピュヴル

今日は一段と疲れた気がするな。

ベタ

…はあ、あんなの食べなきゃよかっだ…

ベタは眼鏡を投げ捨ててベッドに沈んだ。

ピュヴル

また眼鏡を見失ったらどうするんだ…

床に落ちた眼鏡を広い、適当な所に置いた。

ベタ

zzZ……

ピュヴル

もう寝てるな…こいつ。

なんだかんだ言って、俺はこいつに頼りきりだ。そうとは言え計画外のことをするのは許容範囲を超えている。

ベタを見た奴は全員こう言う。髪が綺麗だとか、可愛いだとか。こいつの性格はその真逆だ。めんどくさがり屋で気分屋でストーカーで…自己中野郎だ。

マナバッテリーに今日の余った魔力を注ぎ、蓋を閉めた。

ベタ

あ、それやるの忘れてた…貸せ貸せ。

ピュヴル

こういう時は協力的なんだな?

ベタ

早く帰れた方がいいって言ってただろ?

ベタ

まあ俺もルカには会いたいし。

ベタはルカのお気に入りだ。ベタもまたルカに助けられたからか、シンプルに尊敬しているそうだ。

ベタ

あー魔力使ったらなんか眠気覚めちゃったじゃーん。

ピュヴル

は?知らねーよ。早く寝ろ。

朝。

何故かは知らないが、いつもベタの方が先に起きている。

俺は重い体を起こしてベッドの端に座り、散らばった服を集めた。

ピュヴル

はあ…ったく、あの馬鹿…

ベランダには煙草を吸うベタの姿がある。

ベタ

ん、起きたか。

ピュヴル

お前の気まぐれさにはうんざりする。これだから困るんだ。

はだけたシャツから見える項には目立ったルカの刻印が見える。

その綺麗で長い髪は朝の微風に揺れて、普段は隠れている片目が髪の間から見える。

ベタ

なーにみてんだよ。

ピュヴル

なぜ髪を伸ばしてるんだ?

ベタ

んー地味に痛覚があるからな。

こいつのことをほぼ全て知ったつもりでいたが、今更全然聞いた事ない情報が出るとは思っていなかった。

ベタ

皮膚切るみたいなもんだよ。誰だって皮膚切られるのは痛いし嫌だろ?

ピュヴル

…そうだな。

ベタはまた気だるげに煙草を吸いだした。

ベタ

お前も吸うか?

ピュヴル

…1本だけな。

ベタが差し出したライターの火に咥えた煙草を近づけた。

そんなどこか憂鬱で、冷めきった静かな朝。異世界でもそれは同じだったようだ。

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