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目を開けると、この世のものとは 思えない景色が私たちを出迎えた。
遠くへと続く一本道。
その脇に並ぶ数々の屋台。
乱れ咲く花々。
幻想的な明かり。
そして―
空に浮かぶ大きな月。
しかも、普段と違うのはそれだけでは なかった。
咲蓮
咲蓮
私は白の着物に桃色の羽織、
兄は黒の袴に紫色の羽織という 格好になっていた。
小萩
小萩
そういって兄は空に浮かぶ巨大な月を 指差す。
それは澄んだ水色をしていて、 その表面からは肉眼でもわかるほど はっきりと、
粉が出ては下へとこぼれ落ちていた。
咲蓮
思わずそう呟く。
すると、
小萩
そう言って兄が足元の花たちを見ていた。
咲蓮
咲蓮
そう言うと、兄が静かに頷いた。
小萩
咲蓮
咲蓮
咲蓮
小萩
咲蓮
咲蓮
小萩
迎え犬の少女
兄と言い合っていると、ふと後ろから 声がした。
そこに立っていたのは。
咲蓮
迎え犬の少女
昨日会ったあの少女だった。
その横には、彼女よりもやや年上と 思われる青年が立っている。
小萩
横で首を傾げている兄に、私は昨日の 出来事を全て話した。
迎え犬の少女
迎え犬の少女
彼女は頭を深々と下げ、隣の青年も 静かに頷く。
迎え犬の少年
すると、何故か照れくさくなって、 自然とこんな言葉が口をついて出た。
咲蓮
咲蓮
すると、その様子を横で見ていた兄が 私たち三人に向かってこう言い放った。
小萩
咲蓮
小萩
迎え犬の少年
迎え犬の少女
迎え犬の少年
迎え犬の少女
少し喧嘩口調で言い合う二人。
でも、仲睦まじさが漂う雰囲気は 変わらない。
兄も口の端に柔らかい笑みを 浮かべていた。
すると、肩の上に水色の粉が落ちてきた。
見上げると、風露月は私たちのほぼ真上に 昇ってきていた。
咲蓮
迎え犬の少年
小萩
咲蓮
迎え犬の少女
彼女が指さした方へ目を向けると、
そこには銀色の大きな木が そびえ立っていた。
迎え犬の少年
咲蓮
小萩
迎え犬の少女
彼女はそう言って葉を一枚ちぎる。
迎え犬の少年
迎え犬の少女
小萩
咲蓮
咲蓮
小萩
迷わずにそばにあった筆を取った。
彼に伝えたいことはたくさんある。
けれど、私が今一番伝えたいものは。
【霞へ】
【また会いたい】
【咲蓮 小萩】
すると、風が私たちの前を通り抜け、
葉を空へと連れていってしまった。
小萩
咲蓮
迎え犬の二人に別れを告げ、 祭りの喧騒が遠くなったころ。
小萩
咲蓮
小萩
咲蓮
眠い目をこすりながら、足を前へと 運んでいく。
小萩
咲蓮
そう言って、出口の鳥居を くぐり抜けようとしたときだった。
ビュウゥゥ!
咲蓮
小萩
さきほどよりも威力を増した強風が、 渦巻くように私たちの周りを舞いあげた。
思わず腕で目元を押さえる。
目を開けると、白い世界にいた。
周りは少し霧がかっているのがわかる。
隣にはもちろん兄もいた。
シャン……
今朝、夢の中で聞いたあの音が背後から 聞こえた。
体をそちらへと向ける。
霧の向こうから、何かの影が 近づいてきた。
だんだんと輪郭がはっきりしてゆく。
心臓が高鳴るのを感じながら、 目を見張る。
その影の正体は―
𝓉ℴ 𝒷ℯ 𝒸ℴ𝓃𝓉𝒾𝓃𝓊ℯ𝒹