それから約十分後。
わたしと吾蓮は、ついに体育館にやってきた。
木崎姫歌(きさき ひめうた)
相羽吾蓮(あいば あれん)
先にフロアに足を踏み入れた吾蓮が、振り向いてこちらに声をかけた。
木崎姫歌(きさき ひめうた)
尻込みしていたのを誤魔化すように、早足で体育館へと踏み込んだ。
瞬間、
九手いくる
木崎姫歌(きさき ひめうた)
九手いくる
目の前の女は、ニヤリと嫌らしい笑みを浮かべた。
彼女の名は九手(くで)いくる。
数少ない中学時代からの友人で、椿奈高校女子バスケ部部員だ。
九手いくる
ぎゅっ。
木崎姫歌(きさき ひめうた)
いくるは、唐突にわたしを抱き寄せた。
九手いくる
木崎姫歌(きさき ひめうた)
九手いくる
木崎姫歌(きさき ひめうた)
今日はよくセクハラをされる日である。
夜城・甲尾・いくるでセクハラトリオと名付けてやろう。
相羽吾蓮(あいば あれん)
流石に見兼ねたのか、こちらに声をかける吾蓮。
しかし、
九手いくる
相羽吾蓮(あいば あれん)
突然の童貞呼ばわりに困惑する吾蓮。
表情的に、図星だな。
九手いくる
相羽吾蓮(あいば あれん)
突然の毒舌、というより致死毒舌を食らい、呆然とする吾蓮。
しばらくして我に返ると、
相羽吾蓮(あいば あれん)
木崎姫歌(きさき ひめうた)
こんな時でも変な突っ込みを披露するのであった。
流石と言うか、憐れと言うか……。
九手いくる
相羽吾蓮(あいば あれん)
更に食ってかかる吾蓮。
て言うか自分のムスコに「タカシ」って名前付けるなよ。ドン引きだわ。
そしてエレファントカ○マシは象の種類ではない。宮○さんごめんなさい。
九手いくる
木崎姫歌(きさき ひめうた)
無理矢理に抱擁から脱出し、言葉を返す。
九手いくる
木崎姫歌(きさき ひめうた)
わたしは目を合わせずに言った。
既に気付いているかもしれないが、わたしが体育館に来たくなかった理由は、こいつである。
セクハラがどうこうとかではなく、過去に色々あって、会うのが少し気まずかったのだ。
いくるの方は、そんなことなど気にも留めていないようだが。
九手いくる
木崎姫歌(きさき ひめうた)
言って、いくるから距離を取る。
すると、
九手いくる
人を勝手に新体操の星にするな
て言うか、今時そんな女子はいないだろう。もはや化石人類ではなかろうか。
いたら連れ帰ってホルマリン漬けにして、毎日観賞したい。
と、そんなことを考えていた時だった。
ガタァン!
大きな音を立て、体育館の戸が開いた。
その先には、白いタキシードを着て、真っ赤なバラをくわえた男が一人。
甲尾莱亜(こうび らいあ)
キラーン。
男の歯が白く光る。
男の名は甲尾莱亜。
それを認め、わたしは甲尾の元へ近付き、
ガタァン!
戸を閉めた。
木崎姫歌(きさき ひめうた)
相羽吾蓮(あいば あれん)
わたしは吾蓮の顔を見、結論を出した。
すなわち、「これ以上変態は要らない」と。
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