わたしのアール
わたし 屋上で靴を脱ぎかけた時に
三つ編みの先客に
声をかけてしまった
ねえ、やめなよ
口をついて出ただけ
ホントはどうでもよかった
先を越されるのが
何となく癪だった
三つ編みの子は語る
どっかで聞いたような事
運命の人だった
どうしても愛されたかった
ふざけんな!
そんな事くらいで
私の先を 越そうだなんて!!!
欲しいものが手に入らないなんて
奪われたことすら ないくせに!!
話したら楽になった
って三つ編みの子は
消えてった...
さあ今日こそはと靴を
脱ぎかけたらそこに
背の低い女の子
また声をかけてしまった
背の低い子は語る
クラスでの孤独を
無視されて奪われて
居場所がないんだって
ふざけんな!
そんな事くらいで 私の先を越そうだなんて!!
それでもうちでは愛されて
温かいご飯もあるんでしょ?
お腹がすいた
と泣いて背の低い子は
消えてった...
そうやって
何人かに声をかけて
追い返して
私自身の痛みは誰にも
言えないまま
初めて見つけたんだ
似たような悩みの子
何人目かに会ったんだ
黄色いカーディガンの子
家に帰るたびに増え続ける痣を
消し去ってしまうため
ここに来たの
と言った
口をついて出ただけ
ホントはどうでもよかった
思ってもいないこと
でも
声をかけてしまった...
ねぇ、やめてよ
ああ、どうしよう
この子は止められない...
私には止める資格がない
それでも ここからは消えてよ...
君を見ていると
苦しいんだ...
じゃあ今日はやめておくよ
って目を伏せたまま
消えてった
今日こそは誰もいない
わたしひとりだけ
誰にも邪魔されない
邪魔してはくれない
カーディガンは脱いで
三つ編みをほどいて
背の低い私は
今から飛びます。