その後、静(じん)さんは警察署に連行され
直ぐに取り調べを受けたが
静さんは話をすることができず
安田巡査部長
井川静(じん)
無言のまま時が流れ
二回目の取り調べ終了直前に
井川静(じん)
安田巡査部長
井川静(じん)
井川静(じん)
静さんはやっと言葉を発した
その言葉を聞いた安田巡査部長は
直ぐに私のことを調べ
私が静さん逮捕の現場にいたことを突き止めた
一応、事件の関係者でもあるため迷いもあったが
取調室で面会ができるように掛け合ってくれて
安田巡査部長立ち会いの下
面会をする許可が降りた
私と面会をするようになってから
警察での取り調べにも少しずつ答えられるようになり
きちんと罪を認めた上で
井川静(じん)
そんな思いを口にしていた
この警察署に勾留されてからずっと
静さんはあすみさんの無事だけを祈っていた
これまでたくさん傷つけてしまったことを悔やみながらも
無事でいてほしいと願い続けていた
自分がどんな罪に問われようとも
心の底から愛してしまった彼女のことだけを
今もずっと想い続けている
沢田マリカ
井川静(じん)
井川静(じん)
静さんはそう言いながら大粒の涙を流した
どれ程、辛かったことだろう
大切な妹を自らの手で傷つけなければならなかった
その過程で彼女に対する自身の想いに気づいてしまい
報われない想いを胸に
少しでも彼女のそばにいたくて
母親から守りたくて
何度も彼女の身体を傷付けた
三ヶ月経って戻ってきた彼女の変化に気づいてからは
優真さんへの憎しみと悔しさを彼女にぶつけ
激しい猛攻に彼女が涙を流す度に
静さんの心は抉られていった
その苦しみから解放されたからなのか
今まで内にあった感情が爆発するように涙が溢れ
面会を過ぎても泣き止まず
井川静(じん)
井川静(じん)
何度も同じ言葉を繰り返した
安田巡査部長
安田巡査部長
安田巡査部長
安田巡査部長
静さんはそれだけのことをしてしまった
これからしっかりと罪を償い
真っ当な人生を歩んでほしいと私は思う
沢田マリカ
沢田マリカ
沢田マリカ
沢田マリカ
井川静(じん)
涙ながらに深々と頭を下げ
取調室を出ていく静さんの後ろ姿
まだ弱々しく見える彼の背中を
私はじっと見つめていた
警察署を出て事務所に向かって歩き出す
最初は単なる誘拐事件だと思っていた
あすみさんが警察によって保護されて
家族の元に戻って事件は解決したと思っていた
だが勾留中の優真さんの証言により
あすみさんが虐待を受けていることを知った
あすみさんを救出し静さんとの面会を重ね
長い間、井川家で起きていたことを知ることになった
あすみさんと優真さんと静さん
これから三人はどうなっていくのか
三人が本当の意味で幸せになれる日は来るのだろうか?
そんな思いが頭のなかを駆け巡っていた
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