番人
どうしてここにしたの?

悠斗
ここ、俺の好きな場所なんだ

番人
そーなんだ

番人
綺麗な夕焼けだね

悠斗
だろ?

番人
うん

番人
……じゃあさっそく

番人
あなたの名前は?

悠斗
……浅葱悠斗

番人
ゆうと、くん…

番人
きっと……とても、優しい人なんだね

悠斗
……さぁな

悠斗
そんなふうに言われたの、初めてだ

番人
そうなんだ…お仕事は何を?

悠斗
彫り師をやってる

番人
彫り師……

番人
それは、刺青を?

悠斗
そうだな

悠斗
タトゥー……まだ若い頃からずっと、やってる

番人
……手を見せてもらってもいい?

悠斗
あぁ?

悠斗
別に、いいけど

番人
……綺麗な手

番人
繊細で、でも芯がある

番人
ずっと、誰かの肌に触れてきた手だね

悠斗
前までは、誇り……持ってたよ

悠斗
俺の手で、人の“想い”とか、“生き方”とか……

悠斗
そういうのを体に残してやれる

悠斗
それが、この仕事の価値だって、ずっと思ってた

悠斗
でも……違ったんだ

悠斗
今の俺の手は、人を──傷つけるためにあるんだって…

悠斗
そうやって肯定しなきゃやっていけない時がある……

悠斗
そうでもしないと、壊れる……

悠斗
後悔で、胸の奥が焼けるように痛むから

番人
…

悠斗
……ごめん、暗い話になったな

番人
泣いてもいいよ?

悠斗
ふっ…

悠斗
別に、泣いたりしねぇよ

番人
そう……

悠斗
話を変えるか……

悠斗
俺には弟がいるんだ

番人
弟さん……?

悠斗
颯汰つーんだけど、

悠斗
あいつ、見た目は能天気でチャラいけど、

悠斗
まあ…根は悪くないんだ

番人
ふふ……仲、良いんだね

悠斗
どうだろうな……

悠斗
うるさいし、余計なことばっか言うし……

悠斗
兄貴の俺のことだって呼び捨てだし…

悠斗
でもまあ、アイツが家にいるってだけで、少しはマシになる

悠斗
多分、俺が“何か”抱えてんのも、気づいてる

悠斗
中身までは理解してないと思うけど……

悠斗
でも、聞いてこないんだよ……ずっと

番人
優しいんだね、颯汰くん

悠斗
……そうかもな

悠斗
そういや、常連に一人だけ変わったやつがいてさ

悠斗
七瀬黎翔って知らねぇ?

番人
涼くんのお兄さん?

悠斗
そう

悠斗
そいつ、教師やってんだけど、、

悠斗
俺がこの仕事始めたばっかの時、

悠斗
背中一面のやつ頼んできたの、あいつなんだよ……

番人
えっ、先生なのに?

悠斗
そう思うよな?

悠斗
俺も最初思ったよ

悠斗
“教師ってタトゥー入れていいのかよ”って

番人
ふふっ、気になる人だね

悠斗
そうだよな

悠斗
でも、変に気取らなくて、余計なこと聞かなくて、

悠斗
そばにいても疲れねぇ

悠斗
……そいつも多分わかってるんだ

悠斗
俺が変わったことも、あのときからずっとなにかを背負ってんのも

悠斗
でも、聞いてこない

悠斗
——ありがたいよな、そういうの

番人
そうだね、

番人
そういう存在がいるって大切…

悠斗
ま、そういうわけで……

悠斗
……そういうヤツらが、そばにいてくれてんだ

悠斗
だから、俺はまだギリギリで生きてる

悠斗
たぶん、それだけ

悠翔は笑った。
けれど、その声はどこか遠く、乾いていた。
けれど今、悠翔はその手を見つめながら、
何も語らずに、ただ小さく目を伏せた。
──to be continued…
次に会ってほしい子はね、
不器用で、でもどこまでも誠実な人