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扉が閉まる音が、狭い脱衣所に重く響いた
彼のしなやかで大きな手が、俺の腕を強く掴んで離さない
痛くはない。ただ熱く、力強かった
rt
掴む彼の手を見つめ、そう呟いた声は思ったよりか細く、少し上ずっていた
その瞬間、バッと腕が離された
掴まれていた腕が急速に冷えていく
あまりの速さに顔を上げると、相手は「やってしまった」という表情をし、パッと目線を外す
ky
歯切れの悪いしどろもどろな声に尚更困惑する
先程の「隠すのはやめにする」と豪語していた彼はどこへやら
今目の前には、自身の言動にまるで戸惑いを隠せていない男が1人いるだけ
彼がこうなる時は、本音を隠そうとする前触れなのだろうか
もしそうだとしたら、これは彼の悪い癖なのかもしれない
rt
悔しいな
ky
rt
気づけばそう口走っていた
ky
返ってきたのは、彼らしくないあまりにも弱々しい返事だった
rt
話してほしい
rt
聞きたい
彼の本心を
rt
知りたい
彼のことを
rt
もっと、もっと
rt
ずっとそばにいたのに、まだ届かない
そんなの、もう御免だ
rt
それは彼に向けた言葉であり、また自身を落ち着かせるための言葉でもあった
扉越しに話したあの瞬間、彼の気持ちに、自身の気持ちに向き合うと決めたのだから
rt
少し冷えた彼の手を取り、優しく包み込む
冷たく凍った氷をゆっくり溶かすように
rt
真っ直ぐに彼を見つめた
教えて、キヨくんのこと。
ky
顔を上げた彼の、僅かに見開かれた瞳がかすかに揺らいだ
その真っ直ぐな言葉は、まるで彼の心までも揺さぶるかのように、彼に強い衝撃を与えた
少しの沈黙の末、彼は目を瞑り深呼吸をひとつした
彼のなかで覚悟が決まったのだろう
ゆっくりと開けた彼の瞳からは、もう迷いの色は感じられなかった
ky
To be continued...