ゴポンッ
ゴポゴポッ
…お…しますっ…
どうかっ…
悪いのは…だけです。
ゴポッ
………は何も…
…お願いしますっ、
…私がどうなっても 構いません…
だから…
第62話
『追憶』
娘の命だけはっ…
視界は低く、 草むらから様子を 覗いているようだ。
視界には 親子と思われる 男性と女の子。
そして、 その二人に迫るように 3人の男性が立っている。
彼らは浴衣のような服を 着ている。
お許しをっ!
いずれ村への復讐心を
抱くだろう。
俺らが殺される。
お前が悪いんだ。
損ねるから…
ガサガサッ!
草の間から視界が 一人の男性の 腕に急接近する。
すると、彼は苦痛の 表情になり、 視界が全身を捉えた時 腕から血が流れていた。
噛みつきやがったっ…
視界は後方に映り、 親子が立っていたが しばらくするとお互いに 手を繋ぎ走り出した。
男性が親子を追いかけようと した瞬間、視界は 彼の目の前になる。
そして、 彼に再び急接近する。
邪魔だ!
ブン!
視界に何かが当たり、 地面に横向きとなる。
ブンッ!
怪我した男性が こちらに向かって 木の棒で殴り続ける。
何度も何度も…
何やってるんだ!!
化け物じゃない!
持つ特有の…
手を出すなと…
罰が下されると…
こいつって
………の……じゃ
なかったか?
かなりやばい…
すぐに手当てを…
俺らのやった事が
全て知られる。
もし………の……が
なくなってしまえば、
村共々、お終いだ。
すれば、
見つからないだろ…
滅多に近づかない…
バレはしねぇよ。
さっき逃げた
奴らの後を追い
始末しろ。
二人の男性が 親子の走って行った方向へと 走り去った。
なった。
ドボンッ!
ゴポッ
ゴポッゴポッ
…たすけて…あがれない…
ゴポッ
…さむい…いたい…
だして…だして…
だれか…
青影
暗闇の中、 青影はゆっくりと 目を開けた。
青影
青影
かなりリアルだったな。)
青影
青影
…ゴポンッ
ゴポゴポ…
青影
斬られたよな?)
青影
おそらく意識が
なくなって…)
青影
青影
水の中みたいだが、
息は苦しくない。)
青影
すごい寒いな。)
青影
普通の人は
凍死レベルだろうな。)
どうしてこんな目に…
青影
ゴポッゴポッ
…クルシイ…
ナニモミエナイ…
青影
暗闇の中、老若男女の声が 空間の中に響き渡る。
…コワイ…
…サムイヨ
カエシテ、ワタシノ…
ドウシテ、ワタシガ
青影
悲しみの声が
聞こえるな。)
ズキッ!
青影
青影は右腕を動かした 瞬間、痛みを感じ、 右腕を確認する。
青影
折られたんだったな。)
青影
ここは夢じゃないのか?)
青影
なってきた。)
青影
声を出してみるか?)
青影
返事してくれかも
しれないしな…)
ピタッ
青影
青影
青影の手に何かが当たり、 彼はそちらにむく。
青影
そこに落ちていたのは、 何かの入った麻袋。
麻袋に赤いものが 所々に滲んでおり、 さらに複数の石が 紐につけられている。
青影
青影
青影
そんな訳…)
青影は辺りを見渡す。
すると、周りにも 同じものが複数置かれている。
青影
青影
もっとある…)
青影
何なんだ?)
青影
左の方向から うなり声が聞こえ、 青影は驚きそちらへ向く。
青影
青影
青影の10m前に 犬のような生き物がいる。
体高がだいたい90cmで 毛の色は黒色であるが、 毛先に向かって青色に 変色している。
そして、 尻尾が太く先端は魚の 尾びれのような形で 分かれていた。
青影
威嚇してないか?)
青影
青影
できるように…)
ズキッ!
青影
青影
青影
青影
変わった?)
青影
ここってさっきの…)
ブンッ!
青影
青影は突如、 頭を殴られた。
青影
青影
青影
青影
さっきの夢の…)
ブンッ!
青影
男性は無表情のまま 木の棒で青影を殴る。
青影
青影
青影
青影は魔法陣を 展開させようとするが、 一向に魔法陣が出ない。
青影
ブンッ!
青影
ブンッ!
青影が避け、 左拳で殴ろうとするが、 男性は透け当たらない。
青影
攻撃が効かないのか?)
ゴッ!
青影
後方から頭を殴られ、 青影はその場に倒れる。
青影
ブンッ!
青影
ブンッ
ブンッブンッ!
男性達は無表情で 容赦なく青影を木の棒で 殴り続ける。
何度も何度も…
青影
青影
しばらくすると、 男性三人は青影を殴るのを やめた。
そして、何かを持ち上げ、 何かを青影の前に投げる。
青影
それは大きいサイズと 小さいサイズの血のついた麻袋。
大きい方からは腕、 小さい方から髪の毛、 それぞれ少し空いた袋の口から 漏れ出ていた。
青影
青影
やったのか…
青影
青影
…バキッ
青影
青影
青影
お前らの方だろが?)
バキバキッ!
青影
ポワッ
青影は男性三人に向けて 手をかざし、 黒色の魔法陣を展開する。
青影
殺してやる。)
青影
味わえ…)
カランッ
青影
その時だった。
青影の近くに何かが 落ちた音がし、自然と そちらに振り向く。
青影
そこには赤い花が 複数ついた髪飾りが 落ちていた。
青影
青影
青影は出していた 魔法陣を消した。
そして、それを拾い上げ、 見つめる。
青影
青影
青影
つけてた髪飾りだ。)
青影
こんなところに?)
ピカッ
青影
あははっ!
おとう、おかあ みてみて!
…綺麗やね。
青影
青影は気づくと 花畑の中に立っていた。
周りには浴衣を着た 知らない人達が沢山いる。
彼らは花を眺めたり 花の上を走ったりなど それぞれ違うことをしているが、
皆、どこか楽しそうな 雰囲気である。
青影
青影
悪い場所じゃないな。)
青影
花のいい匂いがする。)
青影
知らない場所だな。)
青影
青影はレジャーシートを 引いて座っている 家族に注目をする。
すごいおいしい!
いっぱい食べるのよ。
少し食べるか?
駄目よ?
食べてないから…
食べられない。
頑張って
食べましょうね♪
おくちあーんだよ!
青影
青影
ピクニックして
たんだよな。)
青影
近くだったけど、
楽しかったな。)
…凄い綺麗でしょ?
香りも良いし、 癒されるんじゃない?
青影
後方から女性の声が聞こえ、 青影はゆっくり振り返る。
そこには先程の黒い犬が 座っており、 何かをじっと眺めている。
青影
何見てるんだ?)
青影は黒い犬に近づき、 隣に座って同じ方向を見た。
気に入った?
それなら、毎日 ここに連れてきてあげる。
視線の先には 小さな白い犬と女性。
小さな白い犬は 黒い犬と色違いの姿を しており女性の方を見て 隣で静かに座っている。
女性は黒色の髪で、 白いワンピースのような ものを着ており、 何か作業をしているようだ。
出来た。
はい、これ 友好の印にあげるね。
だから、 ずっと友達でいて ほしい。
女性は綺麗な花で出来た 花冠を白い犬の頭に乗せる。
すると、白い犬は 嬉しそうに尻尾を振った。
青影
懐かしい気がする。)
青影
どこかであった事が
あるな…)
…地のいい匂い…
…もどりたい…
…かえして
あの頃に…かえして…
青影
青影
夢じゃなくて、)
青影
記憶なんだな。)
青影
今、ここは複数の
記憶が混じってる。)
青影
声の奴らの記憶、)
青影
こいつの…)
青影は黒い犬の方を向く。
黒い犬は変わりなく 座って彼女達を眺めているが、
目には涙が溢れ、 下へと流れている。
青影
青影
辛いな…)
青影
青影
青影
暗闇の中、 頭上のかなり遠くの方に 光が見える。
青影
ポワッ
青影が手の平を出すと、 青色の魔法陣が展開し、 グルグルと回る。
青影
青影
水を勢いよく出せば
届くはずだ…)
青影
分からないけど、)
青影
マシな気がする。)
青影
青影は横向き、 黒い犬と視線を合わせる。
青影
嫌だろ?
青影
青影
いずれ凍死する。
青影は黒い犬の方へ 手を伸ばす。
すると、 黒い犬は一歩後ずさりする。
青影
青影
敵意はない。
青影
青影
帰りたい場所が
あるんだろ。
青影
ここから出して
連れてってやるよ。
青影
スッ
ボフッ
青影
黒い犬は立ち上がると、 青影の太ももの上に乗り、 顔を肩に乗せくっつくいた。
青影
青影
と思った。)
青影
してたからな。)
青影
あれはきっと
怖かったから
なんだよな…)
青影
青影は黒い犬の頭を 優しく撫でる。
青影
お前って俺の髪と
似た毛の色してるな…。
青影
青影
ではないよな…)
青影
尾びれみたいだし…)
青影
よくよくみたら、
こいつ犬と少し
違う気がする…)
青影
スッ
青影
突然、黒い犬が 青色に光り出す。
そして、青影の身体と 被さるようにして姿が消えた。
青影
青影
青影
溜まる感覚は…)
青影
ポワッ
ゴポゴポッ!